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第2話(2)

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「数は、6か。……何一つ、問題はないな」

 颯爽と降り立ち、凛々しく剣を抜いた男性。私は彼を、よく知っている。
 この人は伯爵家の嫡男、ダニエル・イーラ様。私も昔から親しくしていただいている、アレクの母方の従兄だ。

「「「「「「な、なんだお前は……っ! 邪魔をする気か……!?」」」」」」
「この姿を見ても、分からないのか? そうさ、邪魔をするのさ。お前達が狙っている馬車には、見覚えがあるのでな」

 ダニエル様は、こっちを――窓から覗いていた私を一瞥し、左手を小さくあげてから向き直った。

「彼女は我が従弟の婚約者で、殊更無視できない。そしてなにより、その従弟は昏睡状態となっているそうだ。…………その苛立ちもこの剣に載せ、貴様らを両断してやろうじゃないか」
「「「「「「ひっ! ひぃぃっ……っ」」」」」」

 この場の空気が冷たくて重いものになって、おもわず6人は後ずさる。
 イーラ家は剣技を重んじる家系で、ダニエル様自身も剣の熟練者。そんな人が放つ本気の殺気は強烈で、噂では騎士でも圧倒されてしまうそう。

「お前達のような下衆が平然と生き、真面目なアイツが苦しむ。そんなおかしな状況は、俺が壊してやる」
「「「「「「ぁ、ぁぁ……。ぁぁぁ……」」」」」」
「覚悟はいいな? 全員、この場で死ね」
「「「「「「っ!! うあああああああああああああああああああ! あああああああああああああああああっっ!!」

 更に大きな殺気にあてられた6人は、涎と涙を流して反転。剣や短剣を放り投げ、悲鳴を上げてそのまま逃げてしまった。

「…………フェリックが言ってた通り、全員消え去ったね。このあとは、どうするのが正解なのかな?」
「馬車を降りて、ダニエル様にお礼を伝えましょう。ただ、コレを仕込んだ犯人は、近くで様子を見ています。ですので母さんには、お願いしたい事があります」

 フェリックの整った顔が近づき、右耳の傍でコソコソコソ。私は手短にいくつかの指示を受け、フェリックと共に馬車を降りたのでした。

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