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第4話 忍び寄る魔の手 マルスリーヌ視点(2)
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「僕が、行ってほしくない……?」
「自分でも分かりません……。この場から離れないで欲しい、のではなくて……。今日出かけてはいけない、と……。思うようになったんです」
突然、パッと。心の中にそんな感情が生まれ、さっきの声が出ました。
「なにか、悪いことが起きる……? 第六感が、反応しているのかもしれません……」
「そっか。でも量りがないと、色々な面で困っちゃうからなぁ……。………………そうだ」
しばらく腕組みをしていたジェルヴェさんは、ポンと手のひらを打ちました。
「じゃあ、約束をしよう。絶対に元気で帰ってくる、っていう約束をね」
「ジェルヴェさん……」
「僕は今まで、一度も約束を破ったことがないよね? その理由は?」
「約束を破るのが、大嫌いだから」
孤児院時代に酷い裏切りに遭った経験がある――口外できない程に大変な目に遭った経験があるそうで、これまで『大嫌い』は何度も聞いています。
「約束したのであれば、どんなことがあっても僕は守り抜くよ。それにもし僕に何かがあったら、マルスリーヌとランベールが――大切な家族を悲しませてしまうからね。必ず、元気に帰ってくるよ」
「…………はい。そうですね。待っています」
まだ不安は、心の中にあります。むしろ、更に大きくなっていっています。
けど。
ジェルヴェさんの目と声を見て聞いていたら、大丈夫、だと思えるようになってきたんです。なのでわたしは頷きを返し、見送ることにしました。
「ありがとう。今からだと、そうだなぁ。午後の9時頃までには戻れると思う。なにかお土産も買ってるから、楽しみにしていてね」
「お土産っ? やったぁっ! は~いっ」
「楽しみに、してますね。お気をつけて」
「うん。いってきます」
今は、営業中ですからね。ランベールと一緒に手を振ってこの場でお見送りを行い、
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ~!」
ちょうどお客様がいらっしゃったので、わたし達は笑顔で接客を始めたのでした。
○○
「…………よし、と。心配かけないように、急いで買って帰ろう」
出発から、およそ2時間後。目的地である街に到着したジェルヴェは馬車から降り、量りを取り扱っているお店を目指し始めました。
「申し訳ございません。こちらの道にお進みください」
「あ、はい。こっちですね」
普段使用している道は何かしらの工事をしているらしく、急遽左折。警備員の誘導に従い、小道へと入っていきます。
「そうそう、お土産も忘れちゃいけないな。何にしようかな?」
人気(ひとけ)のない道をトコトコと歩きながら、呟く。そうしている時、でした。
「簡単な仕事だな」
「え――」
背後に、突然見知らぬ男が現れて――
「自分でも分かりません……。この場から離れないで欲しい、のではなくて……。今日出かけてはいけない、と……。思うようになったんです」
突然、パッと。心の中にそんな感情が生まれ、さっきの声が出ました。
「なにか、悪いことが起きる……? 第六感が、反応しているのかもしれません……」
「そっか。でも量りがないと、色々な面で困っちゃうからなぁ……。………………そうだ」
しばらく腕組みをしていたジェルヴェさんは、ポンと手のひらを打ちました。
「じゃあ、約束をしよう。絶対に元気で帰ってくる、っていう約束をね」
「ジェルヴェさん……」
「僕は今まで、一度も約束を破ったことがないよね? その理由は?」
「約束を破るのが、大嫌いだから」
孤児院時代に酷い裏切りに遭った経験がある――口外できない程に大変な目に遭った経験があるそうで、これまで『大嫌い』は何度も聞いています。
「約束したのであれば、どんなことがあっても僕は守り抜くよ。それにもし僕に何かがあったら、マルスリーヌとランベールが――大切な家族を悲しませてしまうからね。必ず、元気に帰ってくるよ」
「…………はい。そうですね。待っています」
まだ不安は、心の中にあります。むしろ、更に大きくなっていっています。
けど。
ジェルヴェさんの目と声を見て聞いていたら、大丈夫、だと思えるようになってきたんです。なのでわたしは頷きを返し、見送ることにしました。
「ありがとう。今からだと、そうだなぁ。午後の9時頃までには戻れると思う。なにかお土産も買ってるから、楽しみにしていてね」
「お土産っ? やったぁっ! は~いっ」
「楽しみに、してますね。お気をつけて」
「うん。いってきます」
今は、営業中ですからね。ランベールと一緒に手を振ってこの場でお見送りを行い、
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ~!」
ちょうどお客様がいらっしゃったので、わたし達は笑顔で接客を始めたのでした。
○○
「…………よし、と。心配かけないように、急いで買って帰ろう」
出発から、およそ2時間後。目的地である街に到着したジェルヴェは馬車から降り、量りを取り扱っているお店を目指し始めました。
「申し訳ございません。こちらの道にお進みください」
「あ、はい。こっちですね」
普段使用している道は何かしらの工事をしているらしく、急遽左折。警備員の誘導に従い、小道へと入っていきます。
「そうそう、お土産も忘れちゃいけないな。何にしようかな?」
人気(ひとけ)のない道をトコトコと歩きながら、呟く。そうしている時、でした。
「簡単な仕事だな」
「え――」
背後に、突然見知らぬ男が現れて――
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