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第12話 その結果は リュシエンヌ視点
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「…………………………」
背中から地面に叩きつけられたナワトイス様は、目を見開いたまま動かない。
咄嗟に受け身は取ったものの、柔道のソレとは取り方が違っていた――少なくとも投げられている最中は、蓮司の記憶は蘇っていなかった。
投げられたあとの衝撃で、蘇った……? どう、なの……?
「…………………………ああ」
固唾を飲んで見守っていると、ナワトイス様はぽつりと呟いた。
「…………………………。小さい頃は、いつも投げられたな。この感覚、久しぶりだ」
「っっ!」
小さい頃。いつも。久し振り。
これって!
「れん、じ……? れんじ、なのよね……?」
「……ああ、ここに居るのは俺だ。滝川蓮司だ。久し振りだな、香澄」
片目を瞑って、親指を立てる。
姿も声も違ってるけど、おんなじ。当時の彼の姿と重なって……。蓮司がそこにいるって、分かる……!!
「背中を打った瞬間頭の中に色んな光景が浮かんで来て、なにもかも思い出したよ。思い出させてくれて、ありがとうな」
「こちらこそ、ありがとう。思い出してくれて、ありがとう……! ゆめみたい……!」
こうしてまた蓮司と会えるなんて……。香澄と蓮司として言葉を交わせるだなんて……。
信じられない。
信じられなくて、涙が溢れてくる。
「俺もだよ。……こんなこと……かつては当たり前だったことは、もう二度と叶わないんだと思ってた。夢のようだ、幸せだ」
ゆっくりと上体を起こしたナワトイス――蓮司はそのまま立ち上がり、同じように笑みを浮かべる。
そう。あの時までは当たり前だったのに、できなくなったこと。
それがまだできてることが、幸せ。すごくしあわせ……!
「ずっと――何十年も願い続けたいた。だからどっさり話したいことがあるんだけど、その前にさ。いいかな?」
「うん。あたしも沢山話したいことがあるけど、その前にやりたいことがある」
あたし達の考えていることは、一緒。あたし達は同じように涙を浮かべながら頷きあい――
「蓮司っ!」「香澄っ!」
――力いっぱい、抱き締め合ったのでした。
背中から地面に叩きつけられたナワトイス様は、目を見開いたまま動かない。
咄嗟に受け身は取ったものの、柔道のソレとは取り方が違っていた――少なくとも投げられている最中は、蓮司の記憶は蘇っていなかった。
投げられたあとの衝撃で、蘇った……? どう、なの……?
「…………………………ああ」
固唾を飲んで見守っていると、ナワトイス様はぽつりと呟いた。
「…………………………。小さい頃は、いつも投げられたな。この感覚、久しぶりだ」
「っっ!」
小さい頃。いつも。久し振り。
これって!
「れん、じ……? れんじ、なのよね……?」
「……ああ、ここに居るのは俺だ。滝川蓮司だ。久し振りだな、香澄」
片目を瞑って、親指を立てる。
姿も声も違ってるけど、おんなじ。当時の彼の姿と重なって……。蓮司がそこにいるって、分かる……!!
「背中を打った瞬間頭の中に色んな光景が浮かんで来て、なにもかも思い出したよ。思い出させてくれて、ありがとうな」
「こちらこそ、ありがとう。思い出してくれて、ありがとう……! ゆめみたい……!」
こうしてまた蓮司と会えるなんて……。香澄と蓮司として言葉を交わせるだなんて……。
信じられない。
信じられなくて、涙が溢れてくる。
「俺もだよ。……こんなこと……かつては当たり前だったことは、もう二度と叶わないんだと思ってた。夢のようだ、幸せだ」
ゆっくりと上体を起こしたナワトイス――蓮司はそのまま立ち上がり、同じように笑みを浮かべる。
そう。あの時までは当たり前だったのに、できなくなったこと。
それがまだできてることが、幸せ。すごくしあわせ……!
「ずっと――何十年も願い続けたいた。だからどっさり話したいことがあるんだけど、その前にさ。いいかな?」
「うん。あたしも沢山話したいことがあるけど、その前にやりたいことがある」
あたし達の考えていることは、一緒。あたし達は同じように涙を浮かべながら頷きあい――
「蓮司っ!」「香澄っ!」
――力いっぱい、抱き締め合ったのでした。
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