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第11話 箱の送り主 リュシエンヌ視点(4)

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「……となると、僕は時を超えて最愛の人と再会できているのだから……。前世の記憶を取り戻さないといけませんね」

 もう一度。神妙な面持ちで頷いたナワトイス様は、やや下に向けていた視線をあたしへと戻した。

「貴方と同じ行動を取れば、記憶が蘇る可能性が高い。当時の状況を改めて教えてもらえますか?」
「はい。あの時は――」

 形見のペンダントを壊されて絶望していたこと。その際に神様に助けてと願ったこと。その後急に身体の自由が利かなくなって倒れ、頭を打って記憶が蘇ったこと。
 あの時の出来事を事細かに伝えた。

「ありがとうございます。……それは……。完全再現は難しいですね……」

 ナワトイス様に、形見となるものはないそう。だったら再現完全は、無理よね。

「だったら絶望しながらの神への懇願も、できない……。絶望なしの懇願ならできますが……………………やはり、なにも起きませんね。……それらの前提なしで故意に頭を打ってみても、意味はない、か……?」
「それは不明ですが、前提がない状態では実行すべきではないと思います。あまりに危険ですから」

 立った状態で真後ろに倒れて後頭部を打つ。頭部は想像以上に脆くて、そのまま死んでしまう危険性が充分にある。

「……そう、ですよね……。…………他に覚醒の切っ掛けとなりそうなものは、ありませんよね……?」
「先ほど、お伝えしたもの以外にはありません。でも……何かあるかもしれませんので、探してみます」

 目の前にいるのは、ほぼ間違いなく蓮司。あたし自身も強く再会を望んでいて、だからその場に正座をして腕組みをした。

「???」
「この姿勢が一番頭が働くんです。…………………………」

 あたしの再現は不可能。別の方法であたしと同じように蘇らすためには、どうすればいい?
 そう考えた時真っ先に浮かぶのは、『例に倣え』。違う角度からアプローチを行う――あたし以外の記憶が蘇った人の真似をすれば、蘇る可能性がある。

((他の、記憶が蘇った人……))

 あたしの周りにそんな人はいなかったし、そんな噂を聞いたことはない。
 ただ――。現実でなくていいのなら、何度も見たことがある。

『………………そっか。転生、だっけ? 友人響子が読んでいた本と同じことになっていたのね』

 響子は特に異世界転生ジャンルの漫画や小説が大好きで、その影響であたしも結構な数の作品に触れてきた。
 その中に今のあたしとナワトイス様とまったく同じ状況はなかったけど、前世の記憶が蘇った人はいた。その方法、状況を真似れば、よい結果が出るかもしれない。

((あの作品は魔法を使ったから除外で…………真似るのは、あっちの作品がいいわね。あのお話のヒーローは、あの時――))
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