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第11話 箱の送り主 リュシエンヌ視点(1)

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「貴方様が、あの箱を送り主様なのでございますか?」
「うん、そうだよ。来てくれてありがとう、感謝します」

 ヴァランティーヌとマチルドとパトリシアが学院を去った、次の日の放課後。同封されていた手紙に書かれていた『会える時が来たら右から3つめの花壇に、日時と待ち合わせ場所を書いた紙を差し込んで欲しい』に従い連絡を行い、あたしは中庭の最奥で男性と会っていた。
 穏やかな雰囲気を放つ、細身の銀髪の男性。この方は確か3つ隣のクラスに所属している、ナワトイス伯爵令息グレゴワール様だ。

「贈らせてもらったものは、ほんの少しだけ役に立ったみたいだね。嬉しいよ」
「おかげさまで、処理をする時間を短縮できました。感謝いたします」

 あたしも同じように頭を下げて謝意を伝え、顔をあげるとすぐそんな『ふわふわした雰囲気』は消し、ナワトイス様に真剣な眼差しを注ぐ。
 当然だけど、ウチとナワトイス家には一切の関わりがない。行動理由は謎が多く、警戒せずにはいられない。

「早速ですが、便箋にありました内容を確認させていただきたく思います。あれはどういう意味なのでしょうか?」

《リュシエンヌ・ミラレイティア様。貴方に会って、教えていただきたいことがあります。
 そのためには信頼が必要だと感じ、こちらを信じていただけるものを同封いたしました。
 まずはこちらを使って問題を解決していただき、落ち着きましたら会っていただきたいと考えております》

 あたしに、教えて欲しいこと。
 思い当たる節が、まったくない。なんなのかしら……?

「……これから少々、いや、かなりおかしいことを口にします。けれどそれはすべてが事実で、嘘はない。貴方を利用して何かしらを企んでいる――といったこともないと、信じてもらえると助かります」
「ええ、そう思うことはありませんよ。絶対に」

 この人は、信用するに値する行動を取って見せた。どんな内容が出てきたとしても、その言葉には信憑性を付随する。

「ありがとう。……実はですね……。11日前から、僕は不思議な感情を抱くようになったのですよ」
「不思議な感情……。そちらはどのようなものなのですか……?」

 自然と眉根を寄せながら反芻し、改めて相手の瞳を見つめる。そうすると――

「……そちらは2つあります。まず1つめは、貴方への感情。『リュシエンヌ・ミラレイティアを助けろ』と、突然心が訴えてくるようになったのですよ」

 ――ナワトイス様の口からは、予想外の言葉が出てきたのだった。


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