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第9話 隠されていたお礼 リュシエンヌ視点(4)

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「はい、ご覧の通り頼もしい仲間はいなくなりました。どうする? アンタ達も向かってくる?」
「…………ご、ごめん、なさい……」
「こちらの負けです……」
「もう、何もしません……」

 3人は顔を見合わせ頷き合い、揃って両手をあげた。

「……素直に、負けを認めます……」
「どうぞ、拘束してください……」
「わたくし達を縛って、先生方のもとに連れて行ってください……。このも件も含めて、償います……」

 パトリシア達は俯きがちになり、両手を揃えて前に出した状態でトボトボと近づいてくる。
 力が抜けた顔の中にある両目に、狡猾な色を含ませながら。

「…………少し昔話をしましょうか。あたしは職業上、所謂『悪い人間』を沢山見てきたのよ」
「「「……え?」」」
「だから、簡単に分かっちゃうのよね。アンタ達がやろうとしていることが!」

 3人の中で一番早く動き出そうとしていた手――パトリシアの手、その下にある腕を掴み、そのまま投げる。

「かはっ!?」
「「な――」」
「次はアンタよ!」

 その勢いを利用して身体を捩じり、驚いている片割れヴァランティーヌの胴体へと後ろ回し蹴りを打ち込む。

「ぎゃあ!?」
「ひぃ――」
「最後!」

 やられる仲間を見て悲鳴をあげていた、マチルド。彼女へは顎へ掌底を打ち込み、こうして3人は地面に倒れたのだった。

「「「ぁが……。ぁが……」」」
「降参したフリをして近づき、3人がかりで倒そうとしたんでしょ? 残念。あたしには通用しないわ」

 さっきのあたしと逆で、敵意と殺意を出しすぎ。こんなにも『やる気』を放ってたら、何度やっても結果は同じね。

「この書類がアンタ達のもとに返る時はやってこなくて、ずっとあたしの手元にある。つまり『余計な真似』をしたら大変なことになるから、ゆめゆめ忘れないようにね」
「「「いたい……。いたぃ……。いたい……! たす、けてぇ……!」」」
「気絶して楽にならない程度に威力を押さえているから、当分は苦しみ続けることになるわ。そうなるようにしたのだから助けるはずがなくて、地獄をたっぷり苦しみなさい」
「「「うぅぅ……。ぅぅぅぅぅ……」」」
「そして。今襲ってきている激しい痛みが消えても、アンタ達に平穏は訪れない」

 むしろ、それからが本番でしょうね。

「これからどんな報いが待っているのかしらね? お楽しみに」

 あたしがこの場で行いたいことは、すべて終わった。なのであとのことは『大衆』に任せ、苦しむ3人と気絶した3人がいる校舎裏を去って――
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