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第4話 目覚めた後に待っているものは リュシエンヌ視点(3)

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「……ひろ、った……? こわさ、ない……?」
「気が変わった。壊すのはやめてあげるわ」

 ここで破壊してしまったら、こちらが優位に立てる武器がなくなってしまうもの。反撃の芽を摘める最高の道具を、手放すなんて愚かな真似はしない。
 それに――。
 故人のものを壊すなんて、気分が悪い。いくら腹が立っているとはいえ、コイツらと同レベルに堕ちはしないわ。

「ほ、ほんとう、に……? やめて、くれる……の……? かえして、くれる、の……?」
「本当に止めてあげるし、返してあげるわよ。ちゃんと命令に従ったらね」
「もちろんしたがいますっ! なにをっ、すればいいんですかっ!? なんでもさせていただきますっ!」
「じゃあまずは……。この書類にサインをしなさい」

 作戦決行が決まってから急いで作成した、A4サイズの紙2枚で構成された特製の書類。コレはあたしが書いたものだけどちゃんと正式な手順を踏んでいて、公の場にも出せるきちんとしたものとなっている。

「こちらは、は……?」
「今回の件に関すること――。『今後この件の復讐をすることはありません』『間接的なもの含め、ミラレイティア男爵家に一切危害を加えません』『万が一この約束を反故したら死んで償います』といった内容が書かれているものよ」
「そ、そうなの、ですね……。内容を詳しく拝見しても、構いませんか……?」
「あたしは今、『サインしろ』と言った。『見ろ』とは言っていないわよ?」

 この書類には『お礼その2』に関することが含まれていて、それを知らない方がよりお礼が盛り上がる。よりショック衝撃を与えられるようになるから、彼我の立場を利用して確認させなかった。

「っ! もっ、申し訳ございませんっ。かっ、書かせていただきますっ! 申し訳ございませんでした!」
「心配しなくても、アンタ達が考えそうなものは記されてない。書いてあるのは、今回の件に関すること・・・・・・・・・だけよ」
「は、はいっ。貴方様は、お優しき方でございますっ。そうでございますよねっ。失礼致しましたっ」

 ここに来た時とは、言動が180度違う。ヴァランティーヌは愛想笑いを浮かべながらサインをして拇印を捺し、これによってこの書類が『保険』になった。
 これで、ヴァランティーヌに関するお礼の第1段階は完了。お礼第2段階は少し後回しで、ここからは――。ラヴァランティーヌを使って、マチルドへのお礼その1に関する下準備を行っておきましょう。



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