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第2話 記憶が蘇って リュシエンヌ視点(2)

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「…………いいわね。コレでいきましょう」

 念のため5回シミュレーションを行って、5回ともに成功。失敗する可能性が見えなかった。
 これなら、実行しても構わない。

「内容は、これで決まり。あと決めないといけないのは、仕掛ける順番ね」

 あの3人には、主従関係はまったくない――全員立場は対等で、どの家も同じくらいの力を持っている。
 とはいえ『攻めやすさ』にはちゃんと差があって、もちろん、攻めやすい人間から仕留めていった方が円滑に進む。

「性質上、最後がパトリシアなのは確定なのよね。1番目にするのは…………マチルド……でもいいけど、そっちを攻めるには少し準備がいるわね。念のため作ったあと『完成品』のチェックもしておきたいし、決まりね。1番目はヴァランティーヌにしましょう」

 1人目がヴァランティーヌ。2人目がマチルド。ラスト3人目が、パトリシアとなった。

「うん、この順番がベストね。じゃあ、決行のタイミングは…………。はぁ。こればっかりは決められないわね」

 この計画はこちらの動きを敵側に悟られないように、1対1の状況を作って行わないといけない。その状況を作るには相手の行動も関わってくるから、こちらの主導で決められはしない。

「決行までの日が開けば開くほど、リュシエンヌとして大人しく攻撃を受けないといけなくなっちゃう。なんとか明日、隙ができてくれないかしらね?」

 そんなことをひとりごちながらベッドに入り、前世の記憶が蘇った激動の一日が終わりを告げて――すぐに新しい朝が来る。
 次の日になるとあたしはいつもと同じように起きて、いつものように食堂の隅でひっそり朝食を摂って、いつものように支度を整えてこそこそと登校する。ただし『いつもと』は異なる点もあって、

((……ヴァランティーヌがいた))

 1人目のターゲットの動向を、密かに探る。
 残る2人に気付かれずに、うまく接触できる機会ないか? あたしは常にチャンスを探り――探り始めておよそ6時間近くが過ぎた、5時限目の休み時間のことだった。予想外な形で、決行の舞台が整うこととなるのだった。

「次の6時間目、適当な理由をつけて休みなさい。……必ず中庭に来なさいよ」

 目が吊り上がって苛立ちのオーラが漂っているから、相当に面白くないことがあったんでしょうね。今回は『愉しむおもちゃ』ではなくて、時々発生する『ストレスを発散させるサンドバッグ』となる回。
 その怒りを反撃してこない相手にすぐぶつけたくて、人気(ひとけ)がない場所に呼び出されたのだった。

「いいわね? 必ず来なさい。反故にしたら、少しでも遅れたら、もっと大変なことになるわよ」
「しょ、承知いたしました。……あ、あの。パトリシア様やマチルド様は、本当にいらっしゃらないのですか……?」
「授業中なのに来ると思う? そもそも、そうだと言っているでしょう? さっき聞いたことも忘れてしまう程バカだったのね」
「す、すみません。必ず移動いたします」

 間違いなく、残りの2人は来ない。絶好のチャンス
 そんな好機をあたしが逃すはずはなく、適当に理由をつけて抜け出し――。指定された時間にぴったりに、指定された中庭に行ったのだった。


「良い子、ちゃんと来たわね。……さぁて。とりあえず何をしましょうか」

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