3 / 18
2話 クロードside
しおりを挟む
「まさか我が先祖が、そんな非道を行っていたとは……。エリス・ワルツ殿の為にも、この問題は解決しなければなりませんね」
ミラが、眠りに落ちたあとのこと。彼女の父であるベルバが、別室で待機していたクロードと彼の母・ナズリに報告した直後のこと。
クロードはすぐさま『二人』を慮り、腕組みをしました。
「ワルツ殿の苦しみ怒りを鑑みれば、当主として責任を取る――目の前で自害をするなり、彼女の手で殺害されるなりするべきでしょう。俺の先祖は、それだけの事をしているのですからね」
「……し、しかし、ですな……」
「クロード、貴方が命を落とせば…………。………………ミラさんは……」
「悲しみ、絶望してくれるでしょう。どちらもが納得できる地点を見つけるのは、至難ですね」
立ったまま思案していた彼は壁に背中からもたれ掛かり、天井へと視線を動かします。
これはクロードが、考え事をする際によくする行動。彼にとってはこの体勢が、最も頭が働くのです。
「……兎にも角にも、ワルツ殿への罪を償わなければならない。その件は、事が事。時間をかけて、丁寧に行わなければなりませんね」
「あの子の――エリス・ワルツとしての感情は、禍々しく……。クロード殿やこの屋敷に触れた時の瞳には、ゾッとするものがありましたな……」
「その場にいなくてソレなら、その場にいたらもっと酷い事になりますわね……。まずは周りの人間が説得を試みれば、多少は……」
「経験上そこまで大きな感情になると言葉だけでは意味がない上に、周囲が擁護してしまえば火に油を注ぐ結果となり兼ねません。激昂のリスクが生じますが、俺が直接話をするべきでしょう」
その身で直接怒りを受け止めて、妥協してもらえるポイントがないかを探るしない。彼はそう考え、壁から背中を離しました。
「ミラを苦しめ悩ませる羽目にはなってしまうが、やむを得ない。……あの約束は、必ず守るから……。信じていてくれ」
クロードは一旦自室に戻って服を着替え、私服から礼服へと変更。相手への謝罪と敬意の心を持って扉をノックし、ミラの母・レルアと入れ替わる形で部屋に足を踏み入れたのでした。
ミラが、眠りに落ちたあとのこと。彼女の父であるベルバが、別室で待機していたクロードと彼の母・ナズリに報告した直後のこと。
クロードはすぐさま『二人』を慮り、腕組みをしました。
「ワルツ殿の苦しみ怒りを鑑みれば、当主として責任を取る――目の前で自害をするなり、彼女の手で殺害されるなりするべきでしょう。俺の先祖は、それだけの事をしているのですからね」
「……し、しかし、ですな……」
「クロード、貴方が命を落とせば…………。………………ミラさんは……」
「悲しみ、絶望してくれるでしょう。どちらもが納得できる地点を見つけるのは、至難ですね」
立ったまま思案していた彼は壁に背中からもたれ掛かり、天井へと視線を動かします。
これはクロードが、考え事をする際によくする行動。彼にとってはこの体勢が、最も頭が働くのです。
「……兎にも角にも、ワルツ殿への罪を償わなければならない。その件は、事が事。時間をかけて、丁寧に行わなければなりませんね」
「あの子の――エリス・ワルツとしての感情は、禍々しく……。クロード殿やこの屋敷に触れた時の瞳には、ゾッとするものがありましたな……」
「その場にいなくてソレなら、その場にいたらもっと酷い事になりますわね……。まずは周りの人間が説得を試みれば、多少は……」
「経験上そこまで大きな感情になると言葉だけでは意味がない上に、周囲が擁護してしまえば火に油を注ぐ結果となり兼ねません。激昂のリスクが生じますが、俺が直接話をするべきでしょう」
その身で直接怒りを受け止めて、妥協してもらえるポイントがないかを探るしない。彼はそう考え、壁から背中を離しました。
「ミラを苦しめ悩ませる羽目にはなってしまうが、やむを得ない。……あの約束は、必ず守るから……。信じていてくれ」
クロードは一旦自室に戻って服を着替え、私服から礼服へと変更。相手への謝罪と敬意の心を持って扉をノックし、ミラの母・レルアと入れ替わる形で部屋に足を踏み入れたのでした。
1
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
貴方だけが私に優しくしてくれた
バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。
そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。
いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。
しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる