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第10話 逆転した日々 俯瞰視点
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「……………………」
「……………………」
あの日から、1年後。エリア―ヌとモリスは、ミラレア侯爵邸内の二階にて呆然と天井を見上げていました。
――あのあとも、快復計画はまるで好転しない――。
――フロリアンは、ずっと醜い顔のまま――。
――そんな男と縁を切れない――。
――切れないから、もう22歳になってしまった――。
――もしも奇跡的に縁を切れたとしても、今から新たな出会いなんて期待できるはずがない――。
――人生が滅茶苦茶になってしまった――。
――娘の人生が、滅茶苦茶になってしまった――。
そんな理由により二人は365日絶望と過ごす羽目になり、それによって容姿が著しく変化。実年齢より一回り以上老け、『地上に舞い降りた月』はすっかり別人のようになってしまっていました。
「どうして……。こんなことに……。なってしまいましたの……」
「どうして……。こんなことに、なってしまうのだ……」
まるで、抜け殻。まったく生気を感じなくなった二人は今日も『定番』と化した台詞を呟き、同時刻――
〇〇
「「かんぱいっ!」」
――ミラレア侯爵邸内の一階部分にある、食堂。広々とした豪奢な空間では、フロリアンとジェロームが満面の笑みを浮かべていました。
――あのあとも、快復計画はまるで好転しなかった――。
――けれど刺し違いを匂わせたら、要望はなんでも通るようになっている――。
――屋敷に自分達の部屋が欲しいと言ったら、すぐに用意される――。
――希少な食材や酒であっても、望めばすぐに出てくる――。
――今やすっかり、ミラレア侯爵邸の住人になっている――。
――ミラレア侯爵邸の主、同然になっている――。
顔中にあるコブはまったくよくならず、引き続き人前に出ることも叶わない。しかしながらそんなマイナスを吹き飛ばすほどのプラスがあるため、いつも笑顔が咲き乱れていたのです。
「いやぁ、これはこれで悪くない。むしろコブに感謝しないといけないな!!」
「うむっ、コブ様様だな!!」
そうして今日も二人は声を弾ませ、最高の時間を過ごすのですが――。彼らはまだ、知りません。
その日常はもう間もなく、完全に崩壊してしまうことに。
〇〇
「……そろそろ、頃合いだね。さあ、もう一つの『お礼』を始めようか」
「……………………」
あの日から、1年後。エリア―ヌとモリスは、ミラレア侯爵邸内の二階にて呆然と天井を見上げていました。
――あのあとも、快復計画はまるで好転しない――。
――フロリアンは、ずっと醜い顔のまま――。
――そんな男と縁を切れない――。
――切れないから、もう22歳になってしまった――。
――もしも奇跡的に縁を切れたとしても、今から新たな出会いなんて期待できるはずがない――。
――人生が滅茶苦茶になってしまった――。
――娘の人生が、滅茶苦茶になってしまった――。
そんな理由により二人は365日絶望と過ごす羽目になり、それによって容姿が著しく変化。実年齢より一回り以上老け、『地上に舞い降りた月』はすっかり別人のようになってしまっていました。
「どうして……。こんなことに……。なってしまいましたの……」
「どうして……。こんなことに、なってしまうのだ……」
まるで、抜け殻。まったく生気を感じなくなった二人は今日も『定番』と化した台詞を呟き、同時刻――
〇〇
「「かんぱいっ!」」
――ミラレア侯爵邸内の一階部分にある、食堂。広々とした豪奢な空間では、フロリアンとジェロームが満面の笑みを浮かべていました。
――あのあとも、快復計画はまるで好転しなかった――。
――けれど刺し違いを匂わせたら、要望はなんでも通るようになっている――。
――屋敷に自分達の部屋が欲しいと言ったら、すぐに用意される――。
――希少な食材や酒であっても、望めばすぐに出てくる――。
――今やすっかり、ミラレア侯爵邸の住人になっている――。
――ミラレア侯爵邸の主、同然になっている――。
顔中にあるコブはまったくよくならず、引き続き人前に出ることも叶わない。しかしながらそんなマイナスを吹き飛ばすほどのプラスがあるため、いつも笑顔が咲き乱れていたのです。
「いやぁ、これはこれで悪くない。むしろコブに感謝しないといけないな!!」
「うむっ、コブ様様だな!!」
そうして今日も二人は声を弾ませ、最高の時間を過ごすのですが――。彼らはまだ、知りません。
その日常はもう間もなく、完全に崩壊してしまうことに。
〇〇
「……そろそろ、頃合いだね。さあ、もう一つの『お礼』を始めようか」
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