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第6話 最悪の予想外 俯瞰視点(2)

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「ずっとこのまま!? 嫌だっ!! いやだっっ‼ そんな人生はごめんだ!! このコブぉぉぉわあ‼ どうすればいいんだぁっ!?」
「落ち着きなさい。貴男の顔は、わたくし達が治しますわ」

 頭を抱え絶叫するフロリアン。そんな彼に希望をもたらしたのは、ゆっくりと絨毯から起き上がったエリア―ヌでした。
 しかしながら――。彼女が即答したのは、フロアリアンのためではなく自分のため。

『あの顔をずっと見ていたい』
『あの顔をずっと傍に置いておきたい』

 エリア―ヌは快復したフロリアンの顔をいたく気に入っているが故に、全力をもっての解決を約束したのです。

「あっ、ありがとうございます! ありがとうございます!! で、ですが……。それは、可能、なのでしょうか……」

 マノンが特効薬を開発している間、父ジェロームは国内外のあらゆる方法を使い、同時進行で治療を試みました。けれどその全て試しても、極僅かも好転しなかったのです。

「わたしは僅かでも有用な可能性があるものは、すべて手に入れ試しました。ですが、そのすべてに効果はなく……。あのコブに効いたのは、マノン謹製のスープのみでした……」
「そのスープは、もう手に入りませんし……。どのような薬草を使ったのかも、聞いていません……。それでも……。可能、なのでしょうか……?」
「はぁ、貴男達はおバカですわね。わたくし達を誰だと思っていますの?」
「由緒正しき血を身に宿し、長い歴史と優れた実力によって築かれた高い高い地位を持つ、有力侯爵家様なのだぞ? 不可能などない!」

 喜びながらも青ざめるフロリアンとジェロームを、揃って一笑。エリア―ヌ親子はそれぞれ自分自身を指さし、誇らしげに胸を張りました。

「元専門家の家系だったとはいえ、伯爵家が、それも素人だった女が見つけたんですもの。わたくし達が本気を出せば、その特効薬スープを再現できますわ」
「何を使っているか分からない? そんなもの、トライ&エラーでどうとでもできるのだよ。我が家(いえ)の力と金を使えば、マノンの100倍以上の速度での収集と試作が可能だ」
「あの女が5年かかったのであれば、そうですわねぇ。半年内にはどうにかなると思いますわ」
「我々がマノンに薬を渡せといったのは、手間が省けるから。作れないから、あのように動いたのではないのだよ!」
「おぉぉぉぉ!! さすがでざいます!! エリア―ヌ様! お義父様! 痛み入ります!」
「なにとぞ……! なにとぞ、よろしくお願い致します……!!」

 身体を震わせ感激する二人に大仰な頷きが返り、早速『フロリアン快復作戦』の幕が開けました。そのためフロリアンとジョロームは今度こそ、心から安堵していたのですが――。
 彼らは、そして彼女達自身も、すっかり忘れてしまっています。

 ウィラルズ筆頭公爵家に怯え、身を引かざるを得なくなったことを。
『不可能などない』は大きな大きな間違いで、不可能はいくらでもあることを。

 ですので――
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