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第5話 繋がりが生まれた理由~偶然と必然~ 俯瞰視点(1)
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「マノン嬢の婚約が、白紙に……!? アリサリア卿っ、何があったのですか!?」
フロリアンが裏切りマノンが深く傷ついた、その翌日のことでした。アリサリア伯爵邸では、長く艶のある銀髪を肩口から流した、知的かつ落ち着いた雰囲気を放つ高背の男性が――ザーダンドに属するウィラルズ筆頭公爵家の嫡男アレクシが、持参していた花束をおもわず落としていました。
ついに、マノン嬢は特効薬を完成させたのか――。
よかった。これは祝福に伺わないといけないね――。
屋敷にある資料は読破したため、新たな資料を国外から取り寄せたり。
国中の山や草原に赴き、薬草の採取をしたり。
隣国に新種の薬草を求めに行ったり。
独自の考えを加えた研究を行ったり。
5年の間にマノンが行っていた行動の一つ、『隣の国まで求めに行く』。その新種の薬草がある山の所有者が、ウィラルズ公爵家でした。
アレクシはその際にマノンと出会い、深く感銘を受けたことで縁が生まれており――友となっており、完成したという報告とお礼の手紙を読んではるばる訪れていたのです。
「…………そうですか、婚約者がそのようなことを……。ええ、それは仰る通り看過してはならない問題です。幸いにもこの国の第二王子殿下とは旧友ですしね、マノン嬢の友として介入をし、あちらには相応の罰を与えましょう。…………けれど、それより先に……」
心と身体を傷付けられ、寝込んでしまっているマノンを救わなければ――。アレクシはそう考え、早速行動を起こします。
「マノン嬢、こういう時は内心を外へとしっかり出した方がいい。あえて感情的になって他者にぶつけた方が、心が軽くなるのですよ。よろしければ、その相手に僕を使ってください」
「眩い輝きを放つダイヤモンドであっても、見る者の目が腐っていれば美しいと感じません。貴方のクマや肌は、想いの証。なによりも美しいものですよ」
などなど。アレクシはそれから2日間ずっとマノンの隣に座り、そっと手を握りながら、心と身体の傷を癒してゆきました。24年間の人生で自身がした『経験』と今ある『本心』を用いて、心を解きほぐしてゆきました。
その結果――
「……アレクシ様、ありがとうございます。アレクシ様のおかげで、苦しみがなくなりました」
――マノンの心身から『絶望』は消え去り、まだ弱弱しいものではありましたが、笑みを浮かべられるようになっていたのです。
「それはよかった。……マノン嬢。私用のため僕はもうもなく帰国しますが、近々再び伺います。復活のお祝いに、どこかに出かけましょう」
必死になって行動を続けた人に、尊敬する友に、完全に回復して欲しいから。自分にできることがあれば何でもしよう――。
そんな思いで以降も二人は何度も会い、色々な場所を訪れ、色々な会話を行いました。そしてそれによってマノンは完全に回復し、
――優しくて真っすぐな、アレクシ様……。アレクシ様が好き、大好きです――。
――ずっとマノン嬢は、素晴らしい人だと知っていた。けれど実際は更に真っすぐで清らかで……。真水のようで……。僕は彼女に、異性としての好意を抱いているようだ――。
その間にお互いを更に深く理解していたことにより、お互いに恋心が芽生えていました。ですのでやがて二人は婚約者となり、フロリアンが訪れたあの日は、婚約披露のパーティーに関する話やデートをするため隣国を訪れていて――
「……そう、だったのですね……。あの方が、いらしていたのですね」
その直後に帰国したことで、マノンはフロリアンの現状と企みを知りました。ですのですぐに、伝書役を飛ばして――
フロリアンが裏切りマノンが深く傷ついた、その翌日のことでした。アリサリア伯爵邸では、長く艶のある銀髪を肩口から流した、知的かつ落ち着いた雰囲気を放つ高背の男性が――ザーダンドに属するウィラルズ筆頭公爵家の嫡男アレクシが、持参していた花束をおもわず落としていました。
ついに、マノン嬢は特効薬を完成させたのか――。
よかった。これは祝福に伺わないといけないね――。
屋敷にある資料は読破したため、新たな資料を国外から取り寄せたり。
国中の山や草原に赴き、薬草の採取をしたり。
隣国に新種の薬草を求めに行ったり。
独自の考えを加えた研究を行ったり。
5年の間にマノンが行っていた行動の一つ、『隣の国まで求めに行く』。その新種の薬草がある山の所有者が、ウィラルズ公爵家でした。
アレクシはその際にマノンと出会い、深く感銘を受けたことで縁が生まれており――友となっており、完成したという報告とお礼の手紙を読んではるばる訪れていたのです。
「…………そうですか、婚約者がそのようなことを……。ええ、それは仰る通り看過してはならない問題です。幸いにもこの国の第二王子殿下とは旧友ですしね、マノン嬢の友として介入をし、あちらには相応の罰を与えましょう。…………けれど、それより先に……」
心と身体を傷付けられ、寝込んでしまっているマノンを救わなければ――。アレクシはそう考え、早速行動を起こします。
「マノン嬢、こういう時は内心を外へとしっかり出した方がいい。あえて感情的になって他者にぶつけた方が、心が軽くなるのですよ。よろしければ、その相手に僕を使ってください」
「眩い輝きを放つダイヤモンドであっても、見る者の目が腐っていれば美しいと感じません。貴方のクマや肌は、想いの証。なによりも美しいものですよ」
などなど。アレクシはそれから2日間ずっとマノンの隣に座り、そっと手を握りながら、心と身体の傷を癒してゆきました。24年間の人生で自身がした『経験』と今ある『本心』を用いて、心を解きほぐしてゆきました。
その結果――
「……アレクシ様、ありがとうございます。アレクシ様のおかげで、苦しみがなくなりました」
――マノンの心身から『絶望』は消え去り、まだ弱弱しいものではありましたが、笑みを浮かべられるようになっていたのです。
「それはよかった。……マノン嬢。私用のため僕はもうもなく帰国しますが、近々再び伺います。復活のお祝いに、どこかに出かけましょう」
必死になって行動を続けた人に、尊敬する友に、完全に回復して欲しいから。自分にできることがあれば何でもしよう――。
そんな思いで以降も二人は何度も会い、色々な場所を訪れ、色々な会話を行いました。そしてそれによってマノンは完全に回復し、
――優しくて真っすぐな、アレクシ様……。アレクシ様が好き、大好きです――。
――ずっとマノン嬢は、素晴らしい人だと知っていた。けれど実際は更に真っすぐで清らかで……。真水のようで……。僕は彼女に、異性としての好意を抱いているようだ――。
その間にお互いを更に深く理解していたことにより、お互いに恋心が芽生えていました。ですのでやがて二人は婚約者となり、フロリアンが訪れたあの日は、婚約披露のパーティーに関する話やデートをするため隣国を訪れていて――
「……そう、だったのですね……。あの方が、いらしていたのですね」
その直後に帰国したことで、マノンはフロリアンの現状と企みを知りました。ですのですぐに、伝書役を飛ばして――
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