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第3話 これは……? 俯瞰視点(2)
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「返事は、ノーだ。フロリアン、貴様にやる施しなど存在しない」
アリサリア伯爵邸にたどり着いた、フロリアン。その後邸内にある応接室へと通された彼を待っていたのは、マノンの父ファブリスによる予想外の回答でした。
「恩を仇で返し、娘の心も体もボロボロにした男。そんな下衆に従うはずがないだろう」
「な……っ。な……っ!」
「以上だフロリアン、貴様と話すことはもうない。もうそろそろ娘がザーダ――コホン。外出先から帰ってくるのでな、早急に立ち去ってもらおう」
「な……っ!! 正気か!? 気でも狂ったのか!?」
かつて俺を治したあの薬が必要になった――。すぐに寄こせ――。応じなければ両家が総力をあげて潰すぞ――。
そう告げた直後に、拒否をする。フロリアンはファブリスの反応が信じられず、たまらず座っていたソファーから立ち上がりました。
「拒めば潰す、そう言っているんだぞ!? 分かっているのか!?」
「無論、分かっている。今し方の返事は、全てを承知の上でのものだ」
「な、なぜだ……。そこまで理解していて、なぜそんな返答を――っ、そうか! お前は刺し違えるつもりなんだな!!」
怨敵が一生苦しむことになるのなら、自分たちは滅びてもいい。むしろ、それでいい。
そう思っていると感じ、フロリアンは目を剥きました。
「そうなのだろう!! そう考えているんだろう!!」
「その問いに答える義理はない。……フロリアン。貴様と話すことはもうない、そろそろ娘が帰ってくる、そう言ったはずだ。お前の存在はわたしにとってもあの子にとってもストレスとなるのでな、早々に消えろ」
「っっ!! …………そうか、よく分かった。いいだろう。そっちがその気なら、考えがある……!!」
刺し違えられると思うなよ――。伯爵家と侯爵家の連合を舐めるなよ――。フィアファーク家とミラレア家の力を合わせて、屈服させてやる――。どうぞお飲みくださいと薬を差し出すようにさせてやる――。
彼はそう決め、両者の間にあるテーブルに唾を吐きました。
「穏便に済ませてやろうと思ったが、もうやめだ! ファブリス、覚悟していろよ……!!」
「フロリアン、消えろと言ったはずだ。口ではなく足をさっさと動かせ」
「っっっ!! ぜっ、絶対に許さないからな!! 謝っても手加減してやらないからな!! 徹底的に後悔させやるからっ、楽しみにしているんだな!!」
そして凹凸だらけの顔を真っ赤にしながら扉を蹴り開け、暴言を吐き散らしながらアリサリア伯爵邸を去っていったのでした。
〇〇
「お父様、ただいま戻りました。……難しいお顔をされていますね? どうなされたのですか?」
「いやな、虎の威を借る狐だな、と忸怩たるものを感じていたのだよ。マノン、実はな――」
アリサリア伯爵邸にたどり着いた、フロリアン。その後邸内にある応接室へと通された彼を待っていたのは、マノンの父ファブリスによる予想外の回答でした。
「恩を仇で返し、娘の心も体もボロボロにした男。そんな下衆に従うはずがないだろう」
「な……っ。な……っ!」
「以上だフロリアン、貴様と話すことはもうない。もうそろそろ娘がザーダ――コホン。外出先から帰ってくるのでな、早急に立ち去ってもらおう」
「な……っ!! 正気か!? 気でも狂ったのか!?」
かつて俺を治したあの薬が必要になった――。すぐに寄こせ――。応じなければ両家が総力をあげて潰すぞ――。
そう告げた直後に、拒否をする。フロリアンはファブリスの反応が信じられず、たまらず座っていたソファーから立ち上がりました。
「拒めば潰す、そう言っているんだぞ!? 分かっているのか!?」
「無論、分かっている。今し方の返事は、全てを承知の上でのものだ」
「な、なぜだ……。そこまで理解していて、なぜそんな返答を――っ、そうか! お前は刺し違えるつもりなんだな!!」
怨敵が一生苦しむことになるのなら、自分たちは滅びてもいい。むしろ、それでいい。
そう思っていると感じ、フロリアンは目を剥きました。
「そうなのだろう!! そう考えているんだろう!!」
「その問いに答える義理はない。……フロリアン。貴様と話すことはもうない、そろそろ娘が帰ってくる、そう言ったはずだ。お前の存在はわたしにとってもあの子にとってもストレスとなるのでな、早々に消えろ」
「っっ!! …………そうか、よく分かった。いいだろう。そっちがその気なら、考えがある……!!」
刺し違えられると思うなよ――。伯爵家と侯爵家の連合を舐めるなよ――。フィアファーク家とミラレア家の力を合わせて、屈服させてやる――。どうぞお飲みくださいと薬を差し出すようにさせてやる――。
彼はそう決め、両者の間にあるテーブルに唾を吐きました。
「穏便に済ませてやろうと思ったが、もうやめだ! ファブリス、覚悟していろよ……!!」
「フロリアン、消えろと言ったはずだ。口ではなく足をさっさと動かせ」
「っっっ!! ぜっ、絶対に許さないからな!! 謝っても手加減してやらないからな!! 徹底的に後悔させやるからっ、楽しみにしているんだな!!」
そして凹凸だらけの顔を真っ赤にしながら扉を蹴り開け、暴言を吐き散らしながらアリサリア伯爵邸を去っていったのでした。
〇〇
「お父様、ただいま戻りました。……難しいお顔をされていますね? どうなされたのですか?」
「いやな、虎の威を借る狐だな、と忸怩たるものを感じていたのだよ。マノン、実はな――」
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