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第2話 1年後~最高の? 婚約披露パーティー~ 俯瞰視点(1)

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「「「「「二人とも、おめでとう!」」」」」
「「「「「おめでとうございますっ!」」」」」」

 マノンが裏切られ酷く傷ついた日から、1年後。ミラレア侯爵家所有の建物の中では、沢山の拍手と祝福の声が飛び交っていました。
 これらが向かう先は、ミラレア家の長女エリア―ヌとフィアファーク伯爵家の長男フロリアン。今日のパーティーは二人の婚約を報告するためのもので、招待された参加者はこうして祝していたのです。

「「「「「おめでとう! おめでとうっ!」」」」」
「「「「「おめでとうございます! おめでとうございますっ!」」」」」
「温かいお言葉と、お気持ちが宿った拍手……。痛み入りますわ」
「皆様。痛み入ります」

 月光の如き輝きを放つブロンドとルビーのような瞳を持つ、『地上に舞い降りた月』ことエリア―ヌ。すっかりコブは消え去り、かつて『若獅子』と称された容姿を取り戻したフロリアン。会場の前方で並んでいる二人は腰を折り、まずはエリア―ヌが感謝の言葉を続けます。
 そしてそれが終わると、次はフロリアンの番。彼はエリア―ヌと同じく場内にいる参加者へと感謝の言葉を紡ぎ、そうした彼は9時の方角へと視線を向けました。


「…………マノン。俺の元婚約者であり、今は『家族』となった人。やむを得ない事情があるとはいえ…………君にこの姿を見てもらえないのは、悲しいよ」

「マノン、ありがとう。君のおかげで今の俺はあり、こうして新たな、最高の一歩を踏み出せるようになったよ」

「ありがとう。ありがとう。本当に、ありがとう……!」


 あの日行った脅迫命令により、参加者の中に醜き真実を知る者はいません。それをいいことにフロリアンはありもしないことを語り、いけしゃあしゃあと偽りの涙を流したのでした。

「………………エリア―ヌ様、お待たせしました。では」
「ええ。皆様に、お見せしましょう」

 この国では婚約披露の場ではお互いの手の甲にキスを行い、挙式の場では口と口でキスを交わす仕来りがありました。ですのでまずはルールに従い格下貴族であるフロリアンがエリア―ヌの甲に唇を落とし、続いてエリア―ヌがフロリアンの甲に唇をつけ――

「「「「「っ!」」」」」
「「「「「っっ!」」」」」

 ――つけようとしていた、その時でした。不意に参加者たち全員が息を呑み、急激に場内はざわつき始めたのでした。

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