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プロローグ 裏切り マノン・アリサリア視点
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「おめでとうございますっ! おめでとうございますっ、フロリアン様……!!」
「ありがとう……! 元に戻れたのは君のおかげだ!! ありがとう……! ありがとう、マノン……!!」
フィアファーク伯爵邸内にある、多くの苦楽を共有した場所、フロリアン様の自室。私達はその中央で、涙を浮かべ抱き合っていました。
どちらも前が見えなくなってしまう程に嬉し涙を零し、お互いに痛いくらいに相手を強く抱き締めてしまっている理由。それは――
長年フロリアン様を苦しめていた病が、完治したからです。
――異変の始まりは、今から5年。政略による出会いだったものの、お互いに相手に恋をして。愛のある幸せな婚約を結んで、2か月が経った頃でした――。
「うああああああああ!? 顔がっ!? 俺のかおがぁああああああ!?」
ある日突然フロリアン様のお顔が、コブだらけになってしまったのです。
そうなった原因は不明で、前例もないため治療法すらありませんでした。そのため……
「こんな状態じゃ、外に出られない……。出たくない……。どうして俺だけこんなことに……。最悪だ……。最悪だ……。最悪だ…………」
フロリアン様は、塞ぎ込んでしまいました。すべてに絶望し、お部屋に閉じこもられるようになってしまったのです。
「おかしいだろ……。なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよ……。くそ……。くそ…………。くそ………………! もう、終わりだ…………」
「フロリアン様、終わりではありません。……私が必ずや、貴方様を元に戻してみせます」
2代前に廃業しているもののかつて薬屋業を営んでいたこともあり、我がアリサリア伯爵家には薬に関する――薬草に関する資料や調合に必要な器材が、沢山残っていました。ですので特効薬を作りお救いすると誓い、こうして私の戦いが始まったのです。
「無理だ……。名医ですらお手上げだったんだぞ……。医者ですらない君が、治せるはずがない……」
「フロリアン様。ご存じの通りこの国では、薬草を使った治療法は衰退しております。つまりその治療が試みられてはおりませんので、突き詰めれば可能だと確信しております」
「……マノン……。効果がなかったから、衰退したんだろう……。そんなものを突き詰めたって、成果を得られるはずがない……」
「いいえ、フロリアン様は勘違いをされております。深い知識が必要であったり素材の採取が困難だったり――所謂コストパフォーマンスがあまりにも悪いため、取り扱う者がいなくなり衰退しているのです。ですので達成は可能だと信じております」
「…………そう、なのか?」
「はい。そうです」
「………………分かった。君を信用する。信用させてもらうよ」
「マノン、ありがとう。君が頑張ってくれているから、希望を持って生きていける。今日は久しぶりに、庭にも出てみたんだよ」
「そうなのですね……っ。よかったです。もっと頑張りますねっ!」
幸いにもフロリアン様は私を信じてくださり、どんどんと明るくなられました。なので更に期待に応えるべく動き、
お屋敷にある資料は読破したため、新たな資料を国内外から取り寄せたり。
国中の山や草原に赴き、薬草の採取をしたり。
隣国に新種の薬草を求めに行ったり。
独自の考えを加えた研究を行ったり。
私は365日開発に打ち込み、1か月前――走り始めてから5年後に、ようやくその努力は実を結ぶことになりました。
炎症を取る効果のある薬草と毒素を出す効果のある薬草などなど、計16の素材を合わせた薬――一種の薬膳スープ。試作第134号に効果があると判明し、飲み始めてからドンドンと腫れがひいてゆき、ついに今日顔中にあったコブが跡形もなく消え去ったのです。
「やっと、普通の生活に戻れる……! ありがとう! ありがとう!! ありがとうマノンっ!! これでようやく、君との関係も再開させられる……!!」
このようなことになってしまっておりましたので、結婚に関するアレコレはストップしていました。ですのですぐに、挙式に関するお話が再び進み始めたのですが――。
「………………………………」
その僅か10日後に、私は言葉を失い立ち尽くすことになりました。なぜなら――
「マノン、すまない。君と結んでいる婚約は、なかったことにしてもらう」
突然フロリアン様とフロリアンの父がウチにいらっしゃり、応接室に入るや信じられないことを仰ったからです。
「ありがとう……! 元に戻れたのは君のおかげだ!! ありがとう……! ありがとう、マノン……!!」
フィアファーク伯爵邸内にある、多くの苦楽を共有した場所、フロリアン様の自室。私達はその中央で、涙を浮かべ抱き合っていました。
どちらも前が見えなくなってしまう程に嬉し涙を零し、お互いに痛いくらいに相手を強く抱き締めてしまっている理由。それは――
長年フロリアン様を苦しめていた病が、完治したからです。
――異変の始まりは、今から5年。政略による出会いだったものの、お互いに相手に恋をして。愛のある幸せな婚約を結んで、2か月が経った頃でした――。
「うああああああああ!? 顔がっ!? 俺のかおがぁああああああ!?」
ある日突然フロリアン様のお顔が、コブだらけになってしまったのです。
そうなった原因は不明で、前例もないため治療法すらありませんでした。そのため……
「こんな状態じゃ、外に出られない……。出たくない……。どうして俺だけこんなことに……。最悪だ……。最悪だ……。最悪だ…………」
フロリアン様は、塞ぎ込んでしまいました。すべてに絶望し、お部屋に閉じこもられるようになってしまったのです。
「おかしいだろ……。なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよ……。くそ……。くそ…………。くそ………………! もう、終わりだ…………」
「フロリアン様、終わりではありません。……私が必ずや、貴方様を元に戻してみせます」
2代前に廃業しているもののかつて薬屋業を営んでいたこともあり、我がアリサリア伯爵家には薬に関する――薬草に関する資料や調合に必要な器材が、沢山残っていました。ですので特効薬を作りお救いすると誓い、こうして私の戦いが始まったのです。
「無理だ……。名医ですらお手上げだったんだぞ……。医者ですらない君が、治せるはずがない……」
「フロリアン様。ご存じの通りこの国では、薬草を使った治療法は衰退しております。つまりその治療が試みられてはおりませんので、突き詰めれば可能だと確信しております」
「……マノン……。効果がなかったから、衰退したんだろう……。そんなものを突き詰めたって、成果を得られるはずがない……」
「いいえ、フロリアン様は勘違いをされております。深い知識が必要であったり素材の採取が困難だったり――所謂コストパフォーマンスがあまりにも悪いため、取り扱う者がいなくなり衰退しているのです。ですので達成は可能だと信じております」
「…………そう、なのか?」
「はい。そうです」
「………………分かった。君を信用する。信用させてもらうよ」
「マノン、ありがとう。君が頑張ってくれているから、希望を持って生きていける。今日は久しぶりに、庭にも出てみたんだよ」
「そうなのですね……っ。よかったです。もっと頑張りますねっ!」
幸いにもフロリアン様は私を信じてくださり、どんどんと明るくなられました。なので更に期待に応えるべく動き、
お屋敷にある資料は読破したため、新たな資料を国内外から取り寄せたり。
国中の山や草原に赴き、薬草の採取をしたり。
隣国に新種の薬草を求めに行ったり。
独自の考えを加えた研究を行ったり。
私は365日開発に打ち込み、1か月前――走り始めてから5年後に、ようやくその努力は実を結ぶことになりました。
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「やっと、普通の生活に戻れる……! ありがとう! ありがとう!! ありがとうマノンっ!! これでようやく、君との関係も再開させられる……!!」
このようなことになってしまっておりましたので、結婚に関するアレコレはストップしていました。ですのですぐに、挙式に関するお話が再び進み始めたのですが――。
「………………………………」
その僅か10日後に、私は言葉を失い立ち尽くすことになりました。なぜなら――
「マノン、すまない。君と結んでいる婚約は、なかったことにしてもらう」
突然フロリアン様とフロリアンの父がウチにいらっしゃり、応接室に入るや信じられないことを仰ったからです。
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