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第22話 脱出劇の裏側 アニエス視点

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《アニエス、エミリアンだよ。脱出計画を変更する。
 この手紙と一緒に届いた球体があるよね? それは、破裂すると煙が噴き出すんだ。
 まずはそれを使って――部屋に来た人間の目の前の床に叩きつけて、その人間の視界を奪う。
 次が、とても重要だ。絶対に成功させて欲しい。
 部屋に来た人間――その中でもクリストフか父ジルか母デレジの顔に向けて、この間渡したペンを使って欲しいんだ。
 そうやって誰かしらの目を開かなくしたら、もう一羽が届けたロープを使って窓から脱出して欲しい。
 あのロープは頑丈で、切れはしない。ちゃんと結びさえすれば安全に外の地面に降りられるよ。
 そのあとは脱出のタイミングに合わせて、ヴァルソリク卿が反対方向で騒ぎを起こしてくださることになっているんだ。
 それに乗じて、敷地から出る。
 正面にある塀の向こうで待っているから、呼んでくれたらすぐ塀にのぼってロープで引き上げる。
 以上が、全工程だよ。
 文字だけ見ると大変そうに思えるけど、意外とそうではないんだよ。
 ペンを使うのは最低1人でOKだし、あのペンは5回打てる。4回外しても大丈夫だから絶対に大丈夫だよ。
 しかも部屋から外に降りた後は、追っ手は来ない――部屋とその場所の反対側で大騒ぎが起きてるから、そんな余裕はない。悠々と移動できるから心配はいらないよ。
 あと少しだよ。
 一緒に乗り越えよう                             》

 クリストフ様達がやって来るおよそ12時間前に、わたしのもとにそんな手紙が届いていました。
 エミリアンが急いで用意してくれたボールとロープ、そして――

『もう一度お待たせ。これをどうぞ』
『?? これは……?』
『万が一の緊急時に、アニエスを護ってくれるものだよ。こいつは一見するとただのペンだけど、面白い仕掛けがあって――』

 ノックをすると、先端から液体が――粘着性の高い液体を発射できるペン。非常事態の護身として使用できるアイテムを使い、脱出を試みることになっていたのです。

『お戻りになられたのですね――…………。その手錠や黒い布……。何に使われるおつもりですか……?』
『決まっているだろ。偽物を本物にするために、使うのさ』

 あのようなことを考えていると知り、『失敗してしまったら……』という恐怖に襲われました。しかも相手は3で、ますます不安になりました。
 でも。

《絶対に大丈夫だよ》

 大切で大好きな人の文字が、わたしに力をくれました。

((……そうだよね。大丈夫。絶対に))

 なのでわたしは全てにおいて、円滑に動くことができて――


「よく頑張ったね。お帰り、アニエス」


 ――わたしはエミリアンに、優しく強く、抱き締められたのでした。




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