18 / 54
第10話 エリス エリス クリストフ視点(3)
しおりを挟む
((な……!? これ、は……。ぼくは……。げんかく、を……みて、いるのか……!?))
それは、とあるパーティーにしぶしぶ参加した時のことだった。
優しげで少しだけ垂れた、宝石のようなブルーの瞳が印象的な目。品を感じる小さめの鼻。花びらのような、ピンク色の唇。金糸のようなブロンド。
かつて僕の目と心を奪った人、エリスがそこにいたのだ。
((っ、近くにいる人間と言葉を交わし始めた! ほかの人間が認識しているのなら幻覚じゃない!! ちゃんと実在しているんだっ!! でも、どうしてここにエリスがいるんだ……!? 彼女がこの国にいるはずがない……! どうなっているんだ……!?))
その答えは、彼女はエリスではない別人だったから。
ローレラル子爵令嬢アニエス。
それが、彼女の正体。
信じられないことに、エリスにそっくり――生き写しな人が、同じ国に居たのだった。
((……………………欲しい。アレを、僕のものにしたい……))
すぐにそんな思いが溢れてきて、でも、すぐに別の思いも湧き上がって来た。
そこにいるのは、アニエス・ローレラル。
エリス・レイラマイルではない。
いくらアニエス・ローレラルを自分のものにしても、エリス・レイラマイルを手に入れたことにはならない。
その現実が、あっという間に脳内を満たしたのだった。
((…………駄目、だ……。姿が一緒でも、他がまるで違うんだ……。そんなことをしても、意味がない……。エリスを手に入れたことにはならな――……違う……。そうじゃない……。そうじゃない……!!))
なぜアニエス・ローレラルは、エリス・レイラマイルではないのか? その答えは、アニエス・ローレラルはアニエス・ローレラルだから。
名前は違うし言動も違うしあのネックレスを身に着けてないから、エリス・レイラマイルではないんだ。
((だとしたら……。それをすべて克服したら、アニエス・ローレラルはエリス・レイラマイルになる……!!))
エリスという名にして言動を矯正してネックレスを身に着けさせたら、それはもうエリス本人。
コレと婚約すればエリスと婚約したことにもなるし、コレと結婚したらエリスと結婚したことにもなるし、エリスと生涯を共にすることにもなる!!
((いいぞ……!! これだ……!! これだ……っ!!))
だから僕はすぐさま動き出し、目標達成には色々な障害があったが、問題はすべて取り除くことができた。あの頃と同じく忌々しく存在を抹消したくなる汚物・『幼馴染』の存在が邪魔だったが、
『ローレラル卿、このお願いが非常に愚かな我が儘だと理解しております。ですがそれでも、今回ばかりは我を通させていただきたいと考えております。どうか御力をお貸しください』
『もちろんでございます! そのご希望、喜んで叶えさせていただきますっ!!』
非常に話が分かる人間がいたおかげで、無事に婚約を果たしたのだった。
((ふふふふふ。ふふふふふふ。ふふふふふふふふふ。ようこそ、エリス……! 今度こそずっと、仲良くしようねぇ……!!))
それは、とあるパーティーにしぶしぶ参加した時のことだった。
優しげで少しだけ垂れた、宝石のようなブルーの瞳が印象的な目。品を感じる小さめの鼻。花びらのような、ピンク色の唇。金糸のようなブロンド。
かつて僕の目と心を奪った人、エリスがそこにいたのだ。
((っ、近くにいる人間と言葉を交わし始めた! ほかの人間が認識しているのなら幻覚じゃない!! ちゃんと実在しているんだっ!! でも、どうしてここにエリスがいるんだ……!? 彼女がこの国にいるはずがない……! どうなっているんだ……!?))
その答えは、彼女はエリスではない別人だったから。
ローレラル子爵令嬢アニエス。
それが、彼女の正体。
信じられないことに、エリスにそっくり――生き写しな人が、同じ国に居たのだった。
((……………………欲しい。アレを、僕のものにしたい……))
すぐにそんな思いが溢れてきて、でも、すぐに別の思いも湧き上がって来た。
そこにいるのは、アニエス・ローレラル。
エリス・レイラマイルではない。
いくらアニエス・ローレラルを自分のものにしても、エリス・レイラマイルを手に入れたことにはならない。
その現実が、あっという間に脳内を満たしたのだった。
((…………駄目、だ……。姿が一緒でも、他がまるで違うんだ……。そんなことをしても、意味がない……。エリスを手に入れたことにはならな――……違う……。そうじゃない……。そうじゃない……!!))
なぜアニエス・ローレラルは、エリス・レイラマイルではないのか? その答えは、アニエス・ローレラルはアニエス・ローレラルだから。
名前は違うし言動も違うしあのネックレスを身に着けてないから、エリス・レイラマイルではないんだ。
((だとしたら……。それをすべて克服したら、アニエス・ローレラルはエリス・レイラマイルになる……!!))
エリスという名にして言動を矯正してネックレスを身に着けさせたら、それはもうエリス本人。
コレと婚約すればエリスと婚約したことにもなるし、コレと結婚したらエリスと結婚したことにもなるし、エリスと生涯を共にすることにもなる!!
((いいぞ……!! これだ……!! これだ……っ!!))
だから僕はすぐさま動き出し、目標達成には色々な障害があったが、問題はすべて取り除くことができた。あの頃と同じく忌々しく存在を抹消したくなる汚物・『幼馴染』の存在が邪魔だったが、
『ローレラル卿、このお願いが非常に愚かな我が儘だと理解しております。ですがそれでも、今回ばかりは我を通させていただきたいと考えております。どうか御力をお貸しください』
『もちろんでございます! そのご希望、喜んで叶えさせていただきますっ!!』
非常に話が分かる人間がいたおかげで、無事に婚約を果たしたのだった。
((ふふふふふ。ふふふふふふ。ふふふふふふふふふ。ようこそ、エリス……! 今度こそずっと、仲良くしようねぇ……!!))
6
お気に入りに追加
585
あなたにおすすめの小説
呪われ令嬢、王妃になる
八重
恋愛
「シェリー、お前とは婚約破棄させてもらう」
「はい、承知しました」
「いいのか……?」
「ええ、私の『呪い』のせいでしょう?」
シェリー・グローヴは自身の『呪い』のせいで、何度も婚約破棄される29歳の侯爵令嬢。
家族にも邪魔と虐げられる存在である彼女に、思わぬ婚約話が舞い込んできた。
「ジェラルド・ヴィンセント王から婚約の申し出が来た」
「──っ!?」
若き33歳の国王からの婚約の申し出に戸惑うシェリー。
だがそんな国王にも何やら思惑があるようで──
自身の『呪い』を気にせず溺愛してくる国王に、戸惑いつつも段々惹かれてそして、成長していくシェリーは、果たして『呪い』に打ち勝ち幸せを掴めるのか?
一方、今まで虐げてきた家族には次第に不幸が訪れるようになり……。
★この作品の特徴★
展開早めで進んでいきます。ざまぁの始まりは16話からの予定です。主人公であるシェリーとヒーローのジェラルドのラブラブや切ない恋の物語、あっと驚く、次が気になる!を目指して作品を書いています。
※小説家になろう先行公開中
※他サイトでも投稿しております(小説家になろうにて先行公開)
※アルファポリスにてホットランキングに載りました
※小説家になろう 日間異世界恋愛ランキングにのりました(初ランクイン2022.11.26)
愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる