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第3話 一か月後 ~あの日買ったものと、出会い~ コンスタン視点(2)

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(ザールーク伯爵家はとても長い歴史を持つ、由緒正しき家系。確かに『歴史』はとても重要ではありますけど……。あのお姿を見たら、『お金』の方がより大事なのだと思わずにはいられませんわ)

 まさかの発言に驚いていると、さらに予想外の呟きが飛び出した。
 歴史より、金が上。
 彼女の考えは、俺とまったく同じだった。

「……へぇ、ココも驚きだ。真実を理解している人間が、ここにもいたなんてね」
「えっ!? ぁっ、わたくしったらつい聞こえる声量で――ぇ? 『ここにもいた』……ということは……」
「ああ、そうだよ。俺も同じ感情を抱いていたんだ、ずっとね」

 パーティーで姿を見るたびに、嗤っていたこと。
 パーティーで姿を見るたびに、歴史よりも金が大事なんだと感じていたこと。
 色々と話してきたが、まだ伝えてはいなかった部分を伝えた。

「まあ、そうだったんですのね……! 流石はコンスタン様ですわ……!」
「歴史で物が買えるか? 買えない。問題が起きた時、歴史で解決できるか? できない。歴史は実際のところ、大した役にも立たないんだよね」

 せいぜい、『すごいですね~』と言われるくらい。気持ちよくなれる程度のプラスしかなく、困った時はまったく頼りにならない。

「だが『金』はどうだ? 金で、物は買えるか?」
「もちろん、買えますわ」
「問題が起きた時、金で解決できるか?」
「もちろん、解決できますわ」
「そう、どちらも可能。なら、どちらが大切なのか明白だよね」

 武器に例えるなら、錆びたナイフと切れ味鋭い名剣。『金』の圧勝だ。

「こんなにもはっきりしたことなのに、はぁ。必死になって否定をしてきた女がいるんだよ」
「あらまあ、そうなんですのね。そんな愚か者がいるだなんて……。どこのどなたなのかしら……?」

 今目の前には、初めて出会った同類様がいる。その反応は間違いなく決まっていて、一緒に忌々しい人間を扱き下ろしたくなった。
 久しぶりに、アイツの名前を出すとしよう。

「俺の元婚約者、アリアーヌ・レリスタルだよ。アイツは会うたびに否定し続け、あげくとんでもないことを言い出したんだよ」

『なんでもお金で解決しようとしたり、お金の有無で人の優劣を判断したり。自分では気付いていないと思うけど、それは人として最低なことなの』

『ハッキリ言わないと、貴方は気付かないの! もう、自分で気付けないようになってしまっているのよ……。お願い……。お願いだから、わたしの話をちゃんと聞いて……!』

 こんなことをアイツは、いけしゃあしゃあと言い放った。

「急に花壇の前に呼ばれて、いきなりコレ。どう思う?」

 さっき言った目的のために、問いかけてみる。すると彼女は――

「はぁ、情けない。持たない者の嫉妬にしか聞こえませんわ」

 ――予想通りの反応をしたのだった。
 しかもベネディクトは、さらに――
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