28 / 34
第16話 ありがとうな 俯瞰視点(3)
しおりを挟む
「た、頼む……っ。頼みます……っ。その想いは、一切口外しないでください……!!」
全身が氷のようになってしまっていた、セルジュ。彼は猛スピードで両膝をつき、地面に額を押し当てました。
「それが耳に入ってしまえば……っ。学院時代から無駄なことをしていたらと、把握されたら……。なにをされるか分からない……っ、きっと消されてしまう……!! だから――」
「断る。俺は明日、クロエの耳に入れるつもりだ。『あの時からすでに、レティシアに好意を抱いていた』とな」
「っっ! なっ、なぜ……!? なぜなのですか……!? 僕がこんなにも必死になっているのに、どうして――」
「必死になっているのが、お前だからだ。追放は記憶喪失に関する罰で、学院時代の問題はまだ触れられていないだろ? それが、これなんだよ」
それらの行動も同じく、司法の場などに持ち込むことはできません。そこで違う形で、返すことにしていたのです。
「参加者への再度の謝罪など、今夜は色々と忙しくてな。それは明日の昼頃になる――把握されるまで、12時間もない。早く目が届かない場所に逃げないと、何があるか分からないぞ? 調べたところによると名声が多いファレティーラ卿にも、実際には娘を溺愛する悪癖があったり、色々な悪い噂があったりするらしいしな。もしかすると、親子で狙ってくるかもしれないぞ?」
「………………」
「社交界での評判は大きな影響があって、あの件によってクロエ・ファレティーラの関与が認知された――個人としても家としても、ダメージを受けることになるんだ。ただではすまないだろう。楽には、死なせてくれないだろうよ」
拷問されるかもしれないな――。オディロンはこの世に存在する拷問の例を5つほど挙げ、微苦笑を浮かべました。
「口にするだけでも恐ろしくおぞましいもの達、そのどれを使うつもりなんだろうな? セルジュ、捕まったら大変だ。苦しんで死にたくなければ――」
「い、言われなくてもそうするっ!! 死んでたまるかっ!! 死ぬもんかっ!! 絶対に生きてやるっ! いきてやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
セルジュはものすごい勢いで立ち上がり、そのまま反転。死に物狂いで走り出し、夜の闇の中へと消えていったのでした。
その背後で、このように口が動いていたと知らずに――。
「やっぱりお前は、予想外に遭うとボロボロになるな。ファレティーラ卿にそういった性質があるなら、あの夜も手を貸しているだろ? あの御方は評判通りの方で、協力の噂が流れたらクロエは――」
全身が氷のようになってしまっていた、セルジュ。彼は猛スピードで両膝をつき、地面に額を押し当てました。
「それが耳に入ってしまえば……っ。学院時代から無駄なことをしていたらと、把握されたら……。なにをされるか分からない……っ、きっと消されてしまう……!! だから――」
「断る。俺は明日、クロエの耳に入れるつもりだ。『あの時からすでに、レティシアに好意を抱いていた』とな」
「っっ! なっ、なぜ……!? なぜなのですか……!? 僕がこんなにも必死になっているのに、どうして――」
「必死になっているのが、お前だからだ。追放は記憶喪失に関する罰で、学院時代の問題はまだ触れられていないだろ? それが、これなんだよ」
それらの行動も同じく、司法の場などに持ち込むことはできません。そこで違う形で、返すことにしていたのです。
「参加者への再度の謝罪など、今夜は色々と忙しくてな。それは明日の昼頃になる――把握されるまで、12時間もない。早く目が届かない場所に逃げないと、何があるか分からないぞ? 調べたところによると名声が多いファレティーラ卿にも、実際には娘を溺愛する悪癖があったり、色々な悪い噂があったりするらしいしな。もしかすると、親子で狙ってくるかもしれないぞ?」
「………………」
「社交界での評判は大きな影響があって、あの件によってクロエ・ファレティーラの関与が認知された――個人としても家としても、ダメージを受けることになるんだ。ただではすまないだろう。楽には、死なせてくれないだろうよ」
拷問されるかもしれないな――。オディロンはこの世に存在する拷問の例を5つほど挙げ、微苦笑を浮かべました。
「口にするだけでも恐ろしくおぞましいもの達、そのどれを使うつもりなんだろうな? セルジュ、捕まったら大変だ。苦しんで死にたくなければ――」
「い、言われなくてもそうするっ!! 死んでたまるかっ!! 死ぬもんかっ!! 絶対に生きてやるっ! いきてやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
セルジュはものすごい勢いで立ち上がり、そのまま反転。死に物狂いで走り出し、夜の闇の中へと消えていったのでした。
その背後で、このように口が動いていたと知らずに――。
「やっぱりお前は、予想外に遭うとボロボロになるな。ファレティーラ卿にそういった性質があるなら、あの夜も手を貸しているだろ? あの御方は評判通りの方で、協力の噂が流れたらクロエは――」
1
お気に入りに追加
1,082
あなたにおすすめの小説
ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
百谷シカ
恋愛
伯爵令嬢イーリス・レントリヒは、王妃アレクサンドラの侍女として宮廷で働いている。
ぽっちゃりしていて特に美人でもないので、誰の寵愛も受けないかわりに敵もいない。
ところがある日、王妃付きのコックから賄いを都合してもらった際に、酒を拝借しにきた第二王子ヨハンに見初められてしまう。
「はぁ……可愛い。丸くて白くてぷにぷにしてて、食べちゃいたいよ」
芸術好きで戦争嫌いの平和主義者ヨハンは、イーリスの見た目から性格までとにかく大好き!
♡無欲なぽっちゃり令嬢が幸せを掴むシンデレラストーリー♡
====================================
(他ベリーズカフェ様・野いちご様、エブリスタ様に投稿)
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
離れ離れの婚約者は、もう彼の元には戻らない
月山 歩
恋愛
婚約中のセシーリアは隣国より侵略され、婚約者と共に逃げるが、婚約者を逃すため、深い森の中で、離れ離れになる。一人になってしまったセシーリアは命の危機に直面して、自分の力で生きたいと強く思う。それを助けるのは、彼女を諦めきれない幼馴染の若き王で。
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
【完結】急に態度を変えて来られても貴方のことは好きでも何でもありません!
珊瑚
恋愛
太っているせいで婚約者に罵られていたシャーロット。見切りをつけ、婚約破棄の書類を纏め、友達と自由に遊んだり、関係改善を諦めたら一気に激痩せ。今更態度を変えてきましたが私の貴方への気持ちが変わることは金輪際ありません。
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる