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第16話 ありがとうな 俯瞰視点(3)

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「た、頼む……っ。頼みます……っ。その想いは、一切口外しないでください……!!」

 全身が氷のようになってしまっていた、セルジュ。彼は猛スピードで両膝をつき、地面に額を押し当てました。

「それが耳に入ってしまえば……っ。学院時代から無駄なことをしていたらと、把握されたら……。なにをされるか分からない……っ、きっと消されてしまう……!! だから――」
「断る。俺は明日、クロエの耳に入れるつもりだ。『あの時からすでに、レティシアに好意を抱いていた』とな」
「っっ! なっ、なぜ……!? なぜなのですか……!? 僕がこんなにも必死になっているのに、どうして――」
「必死になっているのが、お前だからだ。追放は記憶喪失に関する罰で、学院時代の問題はまだ触れられていないだろ? それが、これなんだよ」

 それらの行動も同じく、司法の場などに持ち込むことはできません。そこで違う形で、返すことにしていたのです。

「参加者への再度の謝罪など、今夜は色々と忙しくてな。それは明日の昼頃になる――把握されるまで、12時間もない。早く目が届かない場所に逃げないと、何があるか分からないぞ? 調べたところによると名声が多いファレティーラ卿にも、実際には娘を溺愛する悪癖があったり、色々な悪い噂があったりするらしいしな。もしかすると、親子で狙ってくるかもしれないぞ?」
「………………」
「社交界での評判は大きな影響があって、あの件によってクロエ・ファレティーラの関与が認知された――個人としても家としても、ダメージを受けることになるんだ。ただではすまないだろう。楽には、死なせてくれないだろうよ」

 拷問されるかもしれないな――。オディロンはこの世に存在する拷問の例を5つほど挙げ、微苦笑を浮かべました。

「口にするだけでも恐ろしくおぞましいもの達、そのどれを使うつもりなんだろうな? セルジュ、捕まったら大変だ。苦しんで死にたくなければ――」
「い、言われなくてもそうするっ!! 死んでたまるかっ!! 死ぬもんかっ!! 絶対に生きてやるっ! いきてやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 セルジュはものすごい勢いで立ち上がり、そのまま反転。死に物狂いで走り出し、夜の闇の中へと消えていったのでした。
 その背後で、このように口が動いていたと知らずに――。

「やっぱりお前は、予想外に遭うとボロボロになるな。ファレティーラ卿にそういった性質があるなら、あの夜も手を貸しているだろ? あの御方は評判通りの方で、協力の噂が流れたらクロエは――」

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