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第14話 明かされてゆくこと レティシア視点(1)

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「宿の件については、俺が詳しく説明しよう。……セルジュ。レティシアと俺は、ずっと疑っていたんだよ」

 目尻が裂けんばかりに両目を見開き、銅像の如く硬直されているセルジュ様。そんな人を見据えながら、オディロンお兄様が一歩前に出ました。

「レティ―と呼んであんなにも狼狽える、なのに後半は堂々と信頼回復の方法を提案する。その裏に何もないはずがない。俺達はそう考え、あえて泳がせていたんだよ。お前に行動させるためにな」
「………………」
「記憶喪失のフリをしていた半年間、こんなにも愛しの人に会えなかったから我慢できなかったんだろうな。あの日から2週間後の深夜、お前は動き出した。クロエ・ファスティーラ様の手を借りてな」
「………………ち、違う……っ。僕は、フリなんてしていませんよ……! ここにいる彼女とは面識がなくっ、想っても会ってもいない……っ!」
「いや、お前は想っていて会ってるよ。それは俺、レティシア、レティシアの父母、お前の父母、そして――。新聞社の方々が、はっきりと見ているんだからな」

 こういった場合では、第三者の証言が大きな力を持ちます。ですのでセルジュの父親ポールおじ様が依頼を行い、そういった方3名に同行していただきました。

「ば、バカな……っ。あり得ない……っっ。全員で話を合わせて僕を嵌めようとしているのでしょう……!? そんな場所へは――」
「お前の両親も同意見なんだぞ? 息子の悪事が明るみになれば、『家』やご自身にだってダメージがある。そんな被害まで受けて陥れて、なにになるんだ?」
「そっ、それは……っ。きっと、それは……っっ。そりぇわ……っっっ。ああいったものだ! こういったものなんだっ!」

 再び、あの日見せた弱点が表れました。セルジュ様は舌を持つらせながら、おじ様とおば様を無駄に鋭く指さしました。

「意味不明な言葉を繰り返しながら指を差されても、何一つ理解できないぞ。ちゃんとした言語を扱ってくれ」
「そっ、それは……っ。っ! あれだ!! 記憶喪失の息子は大して役に立たず次期当主にするのは不安!! だから養子を取りたくなったがっ、記憶喪失の件はすでに世間に認知されていたっ! そんなことをすれば各所から非難を浴びかねないっ! そこで捏造して堂々と厄介払いできるようにしたんだっ!! 新聞社の人間だって買収したんだ!! これが正解だっつ!!」

 セルジュ様はものすごい速さで言い切り、会心の表情を浮かべます。そちらは全く説得力がないものなのに。

「……そうか。全部が捏造なのか」
「ああそうだ!! 僕は無実!! だから――」
「だから、なんだ? 裁判でも起こして争おうとしているのか?」
「っ、それは名案だ!! そうだなっ、そうしよう!! あるのは目撃情報だけで確固たる証拠はなくっ、僕は実際潔白なんだ!! しっかりと調べてもらって――…………」

 更に勢いづいていたセルジュ様が、一瞬して固まりました。どうやらやっと、その先に待つものに気付かれたようです。

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