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第12話 知る2人 レティシア視点

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「……なんてことを……」
「あやつめ……! よくもいけしゃあしゃあと……!!」

 今夜舞踏会が開かれている、スレン侯爵家邸内。その会場の外では、アリアンヌおば様とポールおじ様が声とお体を震わせていました。
 その理由は、扉の向こうで――会場から、交際の宣言と大きな拍手が響いてきているからです。

「記憶喪失と嘯き、レティシア嬢やオディロン君達を心配させ……。その理由は、別と相手を選びたかったから。許せるものではない……!!」
「あの子が行ったものは、人として犯してはならないもの。言語道断だわ……っ」

 これまでは不自然さが生まれてはならないと、ポールおじ様とアリアンヌおば様には伏せていました。ですがセルジュ様とエレーヌ様に怪しい動きがあり、今夜こういったことを行うのだと把握できました。
 そこで昨夜おじ様おば様に監視に同行していただき、エレーヌ様との関係などを全て把握してもらっています。そのためすでに怒りで満ちていたお二人でしたが、怒の感情は更に大きさを増しました。

「レティシア嬢、オディロン君、リステルズ卿、ベルティール様。愚息が申し訳ございません……!」
「レティシアさん、オディロンさん、リステルズ卿、ベルティール様。申し訳ございません……」

 おじ様とおば様は私達に深々と腰を折り曲げ、そのあと左手側にいらっしゃる方に――スレン邸の所有者である当主イヴァン様へと再度、背を深く曲げました。
 これから行うことは、舞踏会を妨害してしまうもの。ですので事前に説明を行い、快く受け入れてくださっていたのです。

「ポール、アリアンヌ、お前達は正しく教育した。それは友であるこの男がよく知っている。わたしは――この場の全員が、頭を上げてくれ、そう思っているぞ」

 スレン卿のお言葉に、お父様、お母様、オディロンお兄様、私、ここにいる全員が、迷わず同意を示します。
 おじ様おば様は真っすぐな方で、一度も子どもの味方をすることなく、私のために動いくださっていました。責める気持ちなんて、僅かもありません。

「これは、自分への言い訳ではないのですが――。おじさんおばさん、回避や阻止が不可能なことはあります。お気になさらないでください」

 お兄様はすぐに罪悪感を薄める言葉を発し、鋭い視線を扉へと向けます。

「元凶、全ての罪を背負うのはアイツです。……さあ。会場の方々に、真実を知っていただきましょう」

 あちらが次の作戦を実行したように、こちらも次の作戦を実行します。私達は全員で会場へと入り、ポールおじ様が第一声をあげられたのでした。

「セルジュ、おめでとう。よかったな。……かねてから愛していた人と、恋人になることができて」

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