18 / 34
第10話 エレーヌ・ルレアルを愛する理由と、 セルジュ視点
しおりを挟む
非常に悔しいものなのだが、認めざるを得ないだろう――。僕は友であるオディロン・アヴィテイルに、劣等感を覚えていたのだ。
強いリーダーシップを持つオディロン。
カリスマ性を持つオディロン。
頭の回転が速いオディロン。
僕が必死になって行っていることの全てを、容易に行ってしまえるオディロン。
そんな男を無意識的に意識し、いつか必ず上を行ってやる、そう無意識的に強く感じていたのだろう。
だから――
レティシア・リステルズに恋をして、興味がなくなった。
ずっと一緒に居た人が、ある日ふっと自分の隣から消えてしまう。いつも一緒だったのに、僕の隣で幸せそうにしている。
それを見て、悔しがると思っていたらしい。男として、オディロンを超えられると思っていたらしい。
そんな感情が『好意』があると自分自身を誤認させ、これまで沢山のアプローチを行ってきた。騙したりクロエ様に協力していただいたり、レティシアへと多くのものを割いてきたのだ。
婚約して間もなく――。『完全に手に入れた』僕はそう気付き、そうすれば瞬く間にレティシアへの愛情はなくなった。
可愛さと綺麗さを兼ね備えた、絶世の美女。そう感じていたのに、平凡な女に映るようになった。
こんな女と生涯を共にするのは、御免だと強く思うようになった。
――ちょうど、そんな時だった――。
((……天使が、いる……))
僕はとある夜会で、エレーヌ・ルレアルという名の奇跡と出逢ったのだ。
――運命の相手、それは存在する――。
そう感じた僕はすぐさまアプローチを行い、
「わたしのために、婚約を解消してくださる。そこまで仰られるほどに想われている。そう知ってしまったら…………わたしも、同じ気持ちとなってしまっておりますわ」
熱意が伝わり、彼女もまたこちらを運命の相手と認識してくれるようになった。
そこでその夜から婚約解消をするべく策を練り、僕自身にもエレーヌにも一切害をもたらさない、完璧なものを生み出したのだった。
「しまっ! うわあああああああ!?」
そうしてあの日作戦の第1段階を実行し、途中でミスがあったものの、どうにか軌道を修正。無事に婚約解消となって、自由の身となった。
――そんな記念すべき日から、41日後――。
――何をやっても怪しまれないくらい時が経ち、かつ、共通の友人主催の舞踏会がある夜――。
ようやく最後の作戦、第2段階を決行することになったのだった。
エレーヌ。狭くボロい宿で会う、そんな時間はお仕舞だ。
この夜が終われば僕達は……っ。堂々と会えるようになる……!
強いリーダーシップを持つオディロン。
カリスマ性を持つオディロン。
頭の回転が速いオディロン。
僕が必死になって行っていることの全てを、容易に行ってしまえるオディロン。
そんな男を無意識的に意識し、いつか必ず上を行ってやる、そう無意識的に強く感じていたのだろう。
だから――
レティシア・リステルズに恋をして、興味がなくなった。
ずっと一緒に居た人が、ある日ふっと自分の隣から消えてしまう。いつも一緒だったのに、僕の隣で幸せそうにしている。
それを見て、悔しがると思っていたらしい。男として、オディロンを超えられると思っていたらしい。
そんな感情が『好意』があると自分自身を誤認させ、これまで沢山のアプローチを行ってきた。騙したりクロエ様に協力していただいたり、レティシアへと多くのものを割いてきたのだ。
婚約して間もなく――。『完全に手に入れた』僕はそう気付き、そうすれば瞬く間にレティシアへの愛情はなくなった。
可愛さと綺麗さを兼ね備えた、絶世の美女。そう感じていたのに、平凡な女に映るようになった。
こんな女と生涯を共にするのは、御免だと強く思うようになった。
――ちょうど、そんな時だった――。
((……天使が、いる……))
僕はとある夜会で、エレーヌ・ルレアルという名の奇跡と出逢ったのだ。
――運命の相手、それは存在する――。
そう感じた僕はすぐさまアプローチを行い、
「わたしのために、婚約を解消してくださる。そこまで仰られるほどに想われている。そう知ってしまったら…………わたしも、同じ気持ちとなってしまっておりますわ」
熱意が伝わり、彼女もまたこちらを運命の相手と認識してくれるようになった。
そこでその夜から婚約解消をするべく策を練り、僕自身にもエレーヌにも一切害をもたらさない、完璧なものを生み出したのだった。
「しまっ! うわあああああああ!?」
そうしてあの日作戦の第1段階を実行し、途中でミスがあったものの、どうにか軌道を修正。無事に婚約解消となって、自由の身となった。
――そんな記念すべき日から、41日後――。
――何をやっても怪しまれないくらい時が経ち、かつ、共通の友人主催の舞踏会がある夜――。
ようやく最後の作戦、第2段階を決行することになったのだった。
エレーヌ。狭くボロい宿で会う、そんな時間はお仕舞だ。
この夜が終われば僕達は……っ。堂々と会えるようになる……!
1
お気に入りに追加
1,082
あなたにおすすめの小説
幼馴染に奪われそうな王子と公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
「王子様、本当に愛しているのは誰ですか???」
「私が愛しているのは君だけだ……」
「そんなウソ……これ以上は通用しませんよ???」
背後には幼馴染……どうして???
婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。
【完結】最初からあなたは婚約対象外です
横居花琉
恋愛
王立学園へ通うことになった伯爵令嬢グレースに与えられた使命は良い婚約者を作ること。
それは貴族の子女として当然の考えであり、グレースは素直に受け入れた。
学園に入学したグレースは恋愛とは無関係に勉学に励んだ。
グレースには狙いがあったのだ。
エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。
【完結】婚約破棄は誰が為に?
春野オカリナ
恋愛
レイティア・クラレンス辺境伯爵令嬢は、第二王子マテウスと婚約していた。
いずれ結婚して辺境伯爵家を継ぐはずだったのだが、兄の王太子殿下が不貞を働き、婚約破棄になった。
しかも王太子の座を追われる事になり、マテウスが王太子になったのだが、レイティアでは、王太子妃としてやれないだろうと婚約を解消された。
新たに婚約者になったのは、元王太子の婚約者だったオフィーリア・ルクセンブルグ公爵令嬢だった。
この婚約解消は一体誰が何の目的て仕組んだ事なのか?
王宮で開かれた新王太子の婚約披露パーティーで真実が明らかにされる。
断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる