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第6話 夜の監視 レティシア視点(3)

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「お兄様……っ」
「ああ。まずは、セルジュ様・・・・・のお帰りだな」

 密会が始まって、およそ2時間後。変装されたセルジュ様が上機嫌で現れ、馬車に素早く乗り込みました。

「男が去って…………次は、女の方だな。出てきたのは…………やっぱりか。顔を隠しているな」

 万が一を想定し、目から下をすっぽりと布で隠していました。ですので、髪は茶色で背中の中頃まで伸びていること。身長は150センチ程度。このくらいしか把握できませんでした。

「なら、あとをつけて住居を特定するだけだ――……」
「お兄様? どうされたのですか?」

 御者さんに指示を出そうとしていたら、動きが止まりました。何か、あったのでしょうか?

「レティシア、女の方の迎えが来ただろ? そこにいる4人の男、護衛を見てどう思う?」
「えっと……。体格などは非常によくて、強そうです。ですがキツネ顔の方のような雰囲気……只者ではないオーラは、感じません」
「ああ、そうなんだよ。俺はこの女が遣した人間かと思っていたが、どうもそうじゃないらしい。そこで俺達はより怪しい、キツネ男の正体を突き止めることにした」

 私達が乗っている馬車の後方には、私が乗ってきたリステルズ家の馬車があります。ですのでお兄様はリステルズ家の御者ハーレンスさんにそちらの追跡を依頼し、私達は再びセルジュ様の尾行を始めたのでした。

「キツネ男は、貴族じゃない。俺達以上の存在――上級貴族に雇われている、その一家に近しい存在のはず。だからセルジュを送り届けたら、主のもとに報告に戻る」

 セルジュ様を2階の自室へと巧みに導いたあと、キツネの方を載せた馬車は南の方角へと走り始めました。そうして更に尾行を続けること、2時間半。やがてその馬車は、大きなお屋敷――ファレティーラ侯爵家の敷地へと消えていったのでした。

「ファレティーラ…………クロエ様の屋敷か。当主ご夫妻は厳格な人格者で、となると手配したのは十中八九クロエ子どもになるが……。セルジュとファレティーラ様は、大して面識がなかったはずだぞ。どうなってるんだ……?」
「………………」
「女の方と友人で、そっちを援護している………ようには、見えなかった。……レティシア。俺の知らないところで、2人は会っていなかったか? 接点を何か知らない――レティシア? どうしたんだ?」

 おもわず固まってしまっていた、せいだと思います。お兄様は私の顔を覗き込み、不思議そうに目を瞬かれました。

 だって……。だって…………。
 その方は……。クロエ・ファレティーラ様は――

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