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第2話 共通の知人 レティシア視点(2)

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「……ああ。俺もそう考えていたところだ。そうじゃないと、説明がつかない」

 先ほどの出来事は、矛盾する点が多々ありました。そのためお兄様にも同様のお考えがあったようで、程なく頷きが返ってきました。

「そうすると、理由はなんだ……? これまでのアイツから推測すると…………動機は、レティシアのプラスになるもの」
「セルジュ様は、私を愛し優先してくださる方でした。ですので、そちらが真っ先に浮かびましたが……」
「そうだな。思い浮かぶものが、ない」

 おじ様おば様は『嘘』『偽り』『卑怯』が大嫌いな方達で、ガ―レンド伯爵家に後ろめたい隠し事はありません。親族や領民の方々との関係も非常に良好で、権力争いなどのトラブルもありません。
 そして記憶喪失になったことで一週間ほど入院をして全身をくまなく調べ、どこにも悪い部分はないとお医者様が断言されています。病気などもないと明らかになっています。
 結んでいた婚約が解消されて、私のためになることが一つもないのです。

「となれば、逆。ああする理由は、アイツにとってプラスになるもので……」
「ご自分のために、婚約を解消したかった。そう、なりますね」

 おじ様とおば様は私を歓迎してくださっていて、心から婚約を喜んでくださっていました。ですので当主夫妻からの命令という可能性はなく、

 私に飽きてしまった。
 私より好きな人が出来た。

 消去法で、可能性はこの2つとなってしまいます。

「レティシア。最近――記憶喪失になる前に、アイツに不自然な点はあったか?」
「…………いえ。ありませんでした」

 お会いする頻度にも2人で居る時間にも、大きな変化はなし。常識的な誤差の範囲内で、目立った変化はありませんでした。

「お兄様は、いかがですか?」
「俺の方にも、まったくない。だからあり得ないと感じるが、ああいったことがあったんだ。俺達や自分の両親に――周りの人間に一切悟られないように、密かに何かしらをやっていたんだろうな」

 悪い方向に考えてしまっているだけ。私の中にもそんな思いが浮かんできましたが、勘違いならああいったことにはなりません。必ず、何かがあります。

「……だったら、ここで考えていても仕方がないな。アイツを追いかけて問いただしてみよう。あの動揺を攻めれば、ボロを出すはずだ」
「そうですねお兄様。参りましょう」

 おじ様は私達に丁寧な挨拶をしてくださったあと、独りで執務室に籠られていた――恐らくは悔しさで涙されており、そのためセルジュ様は執務室へと書類を渡しに向かわれました。ですので私達はそちらへと歩を進め、木製の扉をノックしたのでした。

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