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第2話 殺害について シルヴァン視点
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「こないだ会った時は、早くても再来月って話でしたのに……! なにがあったんですのっ!?」
「協力者が頑張ってくれたみたいでね。予定より早く、ちゃんと認識させられるようになったらしいんだ」
マルセルの殺害。彼女を殺す際は絶対に、他殺だと思われないようにしなければならない。
そこで俺達が考えたのが――
アナフィラキシーショックによる殺害。
マルセルは過去に蜂に刺されたことがあって、体内で蜂毒への抗体ができているため2回目以降刺されると強烈なアレルギー反応を引き起こしてしまう。
そのため3人で出かけた際に『マルセルを刺す』ように調教した蜂を複数放ってその状態を起こし、対応している間に手遅れの状態にすることにしたのだ。
蜂は自然界に普通に存在している生き物で、周囲にいるのは俺達だけ。
蜂の仕込みに関しては細心の注意を払っていて、父上やおじさん達には一切勘づかれてはいない――。俺もジャクリーヌも、しっかりと関係を隠してきている――。実際に2人ともマルセルを大切に思っている――。
以上の点から俺達の関与が疑われることはなく、俺達に一切の悪影響なく邪魔者を排除できるのだ。
「今現在最終調整を行っていて、来週には仕上がるんだってさ。彼は断言してくれたよ」
来週実行できるようになるなら来週行いたくなるが、俺達は貴族。互いに出席しないといけないパーティーや様々な用事があって、揃って目的地に行くという『遠出』は簡単には叶わないのだ。
「そうなんですのね……! その方にはお礼を弾まないといけませんわ」
「上乗せしないといけない、俺もそう思っているよ。……と、いうわけで。明日からの一か月間は、手向けの一か月間となる」
それでね。最後の一か月は、特に豪華にしてあるんだ。
たくさんの思い出を作る用意をしてあるからさ。
俺達は今でもマルセルを想っていて、マルセルには本当に悪いことをしていると思っている。そのせめてものお詫びとして、実行までの期間を使って、彼女には特に幸せな時間を過ごしてもらうと決めていたのだ。
「マルセルも俺らと気持ちは同じで、3人で過ごす時間が一番楽しいと感じている。そこで……見てくれ。このスケジュールを組んだ。今後はこの通り動こうと考えていて、オーケーかな?」
「ええ、どの日にも予定は入ってはいませんわ。精一杯のお見送りをしましょう」
用意していた紙を渡すと、ごくりと唾を飲んだあと、頷きが返って来た。
そう。
そうなんだよな。
マルセルを殺すのは辛い。
辛いけど、やるしかない。
俺達は改めて最悪な婚約の組み合わせを作った父上達を怨み、こうして俺とジャクリーヌは――。ゴールには幸せが待つ、悲しみに溢れた旅を始めたのだった。
「協力者が頑張ってくれたみたいでね。予定より早く、ちゃんと認識させられるようになったらしいんだ」
マルセルの殺害。彼女を殺す際は絶対に、他殺だと思われないようにしなければならない。
そこで俺達が考えたのが――
アナフィラキシーショックによる殺害。
マルセルは過去に蜂に刺されたことがあって、体内で蜂毒への抗体ができているため2回目以降刺されると強烈なアレルギー反応を引き起こしてしまう。
そのため3人で出かけた際に『マルセルを刺す』ように調教した蜂を複数放ってその状態を起こし、対応している間に手遅れの状態にすることにしたのだ。
蜂は自然界に普通に存在している生き物で、周囲にいるのは俺達だけ。
蜂の仕込みに関しては細心の注意を払っていて、父上やおじさん達には一切勘づかれてはいない――。俺もジャクリーヌも、しっかりと関係を隠してきている――。実際に2人ともマルセルを大切に思っている――。
以上の点から俺達の関与が疑われることはなく、俺達に一切の悪影響なく邪魔者を排除できるのだ。
「今現在最終調整を行っていて、来週には仕上がるんだってさ。彼は断言してくれたよ」
来週実行できるようになるなら来週行いたくなるが、俺達は貴族。互いに出席しないといけないパーティーや様々な用事があって、揃って目的地に行くという『遠出』は簡単には叶わないのだ。
「そうなんですのね……! その方にはお礼を弾まないといけませんわ」
「上乗せしないといけない、俺もそう思っているよ。……と、いうわけで。明日からの一か月間は、手向けの一か月間となる」
それでね。最後の一か月は、特に豪華にしてあるんだ。
たくさんの思い出を作る用意をしてあるからさ。
俺達は今でもマルセルを想っていて、マルセルには本当に悪いことをしていると思っている。そのせめてものお詫びとして、実行までの期間を使って、彼女には特に幸せな時間を過ごしてもらうと決めていたのだ。
「マルセルも俺らと気持ちは同じで、3人で過ごす時間が一番楽しいと感じている。そこで……見てくれ。このスケジュールを組んだ。今後はこの通り動こうと考えていて、オーケーかな?」
「ええ、どの日にも予定は入ってはいませんわ。精一杯のお見送りをしましょう」
用意していた紙を渡すと、ごくりと唾を飲んだあと、頷きが返って来た。
そう。
そうなんだよな。
マルセルを殺すのは辛い。
辛いけど、やるしかない。
俺達は改めて最悪な婚約の組み合わせを作った父上達を怨み、こうして俺とジャクリーヌは――。ゴールには幸せが待つ、悲しみに溢れた旅を始めたのだった。
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