一度もクリアできなかった乙女ゲームの世界に転生しました

柚木ゆず

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第11話 運の悪いトラブル アデライド視点(2)

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 この作戦を実行中、モツレッドを訪れた場合に確定で発生してしまうイベント。それが、『エリク様に目撃されてしまう』。
 どこでアンリに声をかけても必ずその姿を見られてしまっていて、それによって後日面倒なイベントが発生してしまうのです。

「マリーさん達が身構えていたら、警戒しているように見えるかもしれない。悪化の可能性を考えて内緒にさせてもらっていて、モツレッドに着いた時点で起きるのは分かっていたんですよ」
「そ、そうだったのですね……。もしか、しなくて…………この出来事は、よくないことなのですよね……?」
「はい、そうなんです。第3の敵――元凶に挑む際に、悪い影響をもたらす可能性があるんですよ」

 次にエリク様に会った際に上手く解決出来たらセーフで、上手く解決できなかったらアウト。支障をきたしてしまう。
 このイベントがとにかく厄介で、アウトを回避するやり方が明確になっていない。セーフになる時もアウトになる時も今一つその理由が掴めなくて、運頼みをするしかないのだ。

「ただそれに関してはもう、わたしができることはありません。今は頭の中から追い出して、目先の問題に集中します」

 今はまだアンリを掌握しただけで、ネリーの敵意を消せてはいない。
 選択肢が用意されないこの世界ではすべて自分の言葉でやらないといけなくて、ひとつの言い間違えや言葉の詰まりが失敗に繋がる危険性がある。最後の最後で台無しにしてしまわないように、ソレについては一旦忘れておく。

「3日後……でしたね」
「はい、3日後の午後2時です。その時にちゃんと説得できるように、これからしっかりと頭の中を整理します」

 さっきも言ったようにわたしの言葉で喋るから、相手の言葉も丸々変わってしまう。
 〇〇な風に言ってきた時は○○と返す。〇〇な素振りを見せた時は、〇〇をして落ち着かせる。などなど。
 あらゆる状況であり返事を想定して頭の中でシミュレーションを行い、

「マリーさん、お願いします」
「お任せください。……どういうことなの!? 説明してしろ!!」
「こちらに関しては、まずはここにあるものを見せてください」

「だから信用できないって言ってるでしょ!! これだけじゃ認めないわ!!」
「ご安心を、他にもちゃんとございます。ここからは貴方様の婚約者様・・・・・・・も交えてご説明しますね」

 実際にその状況を再現して練習を重ねて、あっという間に3日が経過した。

((……よし、行きましょうか。舞台に))

 アメロルス家所有の建物。待ち合わせ場所となっているところへと向かい、鬼の形相で待ち構えているネリーと接触して――




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