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第10話 カジノ レオナルド視点(2)

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「はーっはっはっは! 見てみろ! これが敏腕経営者様の勘だ!!」

 あれから連勝のオンパレード! 時々負けるものの圧倒的に勝ちの方が多く、なんと所持金は5000万まで増えたのだった!

「5倍だぞ5倍! ルーレットの前で座ってるだけで4000万も増えた! こんなに楽して稼げるのなら、このままコレを仕事にするのもいいかもな! わーっはっはっはっはっは!」
(レオナルド様、さすがでございます! 次は、どちらに賭けますかっ?)
「そうだな。今の俺は絶好調っ、赤と黒の二択じゃなくてもいける。3に500万だ!」

 護衛トムにニヤリと笑いかけ、3の上に勢いよく大量のチップを載せる。
 俺は、『流れ』を読める男。次にボールが入るのはこのポケットだ!

「ここに入れば、36倍。一気に1億8000万が手に入る……!」
(れ、レオナルド様……。この確率は厳しいのではないのでしょうか……? これまで通り、二択で堅実に――)
「トム、お前は誰に意見をしてるんだ? お前にその資格も権利もないっ、黙っていろ!」

 過ぎた真似をする無能な臣下を叱りつけ・・・・、ディーラーが放ったボールの行方を追う。
 俺の希望を載せた、真っ白なボール。
 ソイツは美しい軌道を描きながら、俺が指定した『3』のポケットに――

「黒の26でございます」

 ――入ら、なかった。
 ボールは俺が選んだ3の、左隣のポケットにポトリと入ってしまった。

「くそっ、500万も失ってしまった……っ! だっ、だがまだ4500万もあるんだ! もう一度『3』に500万だ!」
(レオナルド様っ! 無礼と承知で再び口を挟ませていただきますっ! こ――)
「うるさい黙れ! さっきは3の隣に入ったんだ! 次は必ず入る! 俺には分かるんだよっっ!」

 幸福の女神は、間違いなくこちらに微笑んでいる。
 俺は自信を持って再度『3』のポケットを指定し――

「赤の19でございます」

 ――っっ。また、はずれてしまった……!

「これで、残り4000万か……。ふっ、まだ大丈夫。これも予想の範疇だ。とはいえ、流石にストレート・アップ一点賭けは無謀だったな。今度はスプリット・ベット二点賭けにしておくか」

 コイツは、隣接する二つの数字を選ぶやり方。
 当選時の倍率は18倍と下がってしまうが、数字を二つ指定できる分確率はあがる。さっきの負けはこれで取り返す!

「まだ4000万もある、攻めてもいいっ。20と23でいくぞ!」

 数字を見ていると、20と23が光ったように見えた。そこで俺は自信を持って、そこへと力強く500万ベットをして――

「赤の3でございます」

 ――また……。また、はずれやがった……!

「しかもさっきまで選んでいた『3』だとっ!? ふざけやがって!! ルーレットぉっ、貴様俺をバカにしてい――落ち着け、レオナルド。違うぞ、違う。こいつは俺の予想が冴えている証だ」

 良い線をいっている。つまり、勝利の時は近いということだ!

「危ない危ない、怒りに任せて見通すところだった。そういう話なら、もう一度スプリット・ベット! チョイスは3と6だ!! 額はもう一度500万だ!」

 三度目の正直。俺は身を乗り出し、ディーラーが投げたボールを凝視して――

「黒の20でございます」

 ――怒りが爆発し、おもわずルーレットの台を壊しそうになってしまう。
 またはずれで……。しかも、さっきまで選んでいた数字だと……!?

「…………そ、そうか。そうかそうか。そう来るのか」

 なるほど。ルーレットよ。お前の考えがよ~く分かった。
 だったら、俺は――

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