最愛の人が、元婚約者にしつこく復縁を迫られているらしい

柚木ゆず

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第12話 その後~ピエール達の場合~ 俯瞰視点(2)

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「ここは、森――じゃない! 山!? こっ、こんなところに僕らを連れてきて……。どうするつもりなのですか!?」

 17時間以上にも及ぶ強制的な移動の末、連れてこられたのは木々が生い茂った場所。ここはヴァルスター伯爵家が所有する、『レヴィザ山』という標高1653メートルの山でした。

「お前達は罰を与えられるために、連行されていた。ならば目的は当然、罰を与えるためだ」
「ピエール、ダニエル。お前達はこれから死ぬまで、ここで薬草8種、木の実6種を採取することになる」

 5人いる、仮面の男。その中の2人が懐から紙を――リストを取り出して飛ばし、ピエールとダニエルに拾わせました。

「これを集めて、あそこ――住居を兼ねた山小屋で汚れを取り、毎日午前8時に訪れるヴァルスター伯爵家の関係者に渡す。それがお前達の役目だ」

 その薬草8種と木の実6種は、重い病に効く薬の原料。効果が絶大な代わりに生息している環境が悪く、100グラム手に入れるのさえも大変。入手には大きな労力を伴うものでした。
 そのためベンジャミンは罰その1・・・・として、生涯ここで労働させることにしたのです。

「そ、そんな……。僕達が泥臭い真似を――なっ、なんでもございません!! よっ、喜んでさせていただきます!! 今のはつい出てしまったものでして!! 御気分を害そうとするものではございません!!」
「いっ、命を取られないだけ幸せだと感じております故!! 決して逃亡など致しません故っ!! 誠心誠意っ、作業をさせていただきます!!」

 長時間の移動で、2人の心はボロボロになっていました。そのため彼らは大慌てで姿勢を正し、首が取れそうになる程に激しく頷きました。

「主な生息場所や採取および保管方法などは、ヴァルスター伯爵家の方がそこに記してあるそうだ。それをしかと頭に叩き込み、従順な駒となれ。いいな?」
「「かっ、畏まりました!!」」

 少しでも逆らえば、化け物並みの存在が出てきてしまう。そのため2人は揃って片膝をついて了承し、即日その作業は始まります。

「……父上……。頑張ろう……!」
「あ、ああ。頑張ろう……!」

 そうしてピエール達は貧相な作業着に着替え、与えられた仕事をこなし始めたのですが――。

 彼らの悪い性質・喉元を過ぎれば熱さを忘れてしまう。

 作業開始から6日間が経った頃でした。あんなに怯え反省していた2人からはすっかりその色が消えていて、彼らはあることを企み始めました。
 ですがそれは、ベンジャミンの想定内で――

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