23 / 30
第11話 だから、こうしてここにいる ベンジャミン視点(3)
しおりを挟む
「あの方がお前には合っていると思っていたけれど、まだまだ足りなかったらしい。そこでお前には、新しい罰を下す」
あのような、比較的穏やかなやり方はもうしない。これからは厳しく、長く、心身を苛むものを与える。
「こ、殺す、のか……!? 僕を殺すのかぁぁ……!?」
「そうしたいところだが、それだと一瞬で済んでしまう。それでは意味がないから、お前にはこれからとある場所に向かってもらうことにした。父親と一緒にな」
そう告げて廊下へと声をかけると、後ろ手に拘束された当主が――もう一人の元凶が、青ざめてやって来た。
「っ! 父上っ!? 父上っ!!」
「ピエール……すまん……。…………べっ、ベンジャミン様お許しください……。まさか、あのくらいで自殺を試みるとは思っておらず……。ルーシー・レーズリックの行動は、想定外でして……。ど、どうかっ! お許しをぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」
「『あのくらいで』。当たり前のようにそう吐く人間を、許すはずがないだろう」
「おっ、お願いします!! 一度だけチャンスを!! どうかっ、どうかっ! やり直す機会をおあたえくだぐぇ…………」
コイツとこれ以上、放つ必要はない。なので意識を刈り取っていただき、俺はヤツの息子ピエールへと向き直った。
「今ので、どう足掻いても無駄だって分かっただろう? お前達の未来は、地獄と確定している」
「そ、そんな……。い、いやだ……。お、お願いだ……。たすけ」
「助けるつもりはない、そう言ったはずだ。それに仮に助けようとしても、もうできないんだよ。お前達親子は、レーデフェル公爵家の関与を知ってしまっているからな」
公爵様は特に警戒心が強く、『家族であってもこの関係を漏らさないこと』を後ろ盾の条件とされている。そのため関係を知ってしまった時点で、自由を奪われる未来が確定しているんだ。
「き、聞くつもりなんて……。なかったのにぃぃ……! じゃっ、じゃあ! ぼくはっ! どこにっ、連れて行かれるんだぁ…………!?」
「それは、着いてからのお楽しみだ。移動中もたっぷりと不安に襲われて、衰弱するといい」
「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁ!! いやだああああああっ!! やめろぉぉっ! やめてくれぇぇぇぇぇ――びぃぃぃぃ…………」
恐怖の量が、許容範囲を超えてしまったらしい。泣き叫んでいたピエールは泡を吹き出し、真後ろに倒れてしまった。
「……お前達はやりすぎてしまったから、どんなに取り乱しても同情はしない」
だから――
「お願い致します」
「「「「「「はっ」」」」」」
俺はレーデフェル公爵家の影に一礼を行い、愚かな親子は豪奢な部屋から運び出されてしまったのだった。
そしてその後、2人は――
あのような、比較的穏やかなやり方はもうしない。これからは厳しく、長く、心身を苛むものを与える。
「こ、殺す、のか……!? 僕を殺すのかぁぁ……!?」
「そうしたいところだが、それだと一瞬で済んでしまう。それでは意味がないから、お前にはこれからとある場所に向かってもらうことにした。父親と一緒にな」
そう告げて廊下へと声をかけると、後ろ手に拘束された当主が――もう一人の元凶が、青ざめてやって来た。
「っ! 父上っ!? 父上っ!!」
「ピエール……すまん……。…………べっ、ベンジャミン様お許しください……。まさか、あのくらいで自殺を試みるとは思っておらず……。ルーシー・レーズリックの行動は、想定外でして……。ど、どうかっ! お許しをぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」
「『あのくらいで』。当たり前のようにそう吐く人間を、許すはずがないだろう」
「おっ、お願いします!! 一度だけチャンスを!! どうかっ、どうかっ! やり直す機会をおあたえくだぐぇ…………」
コイツとこれ以上、放つ必要はない。なので意識を刈り取っていただき、俺はヤツの息子ピエールへと向き直った。
「今ので、どう足掻いても無駄だって分かっただろう? お前達の未来は、地獄と確定している」
「そ、そんな……。い、いやだ……。お、お願いだ……。たすけ」
「助けるつもりはない、そう言ったはずだ。それに仮に助けようとしても、もうできないんだよ。お前達親子は、レーデフェル公爵家の関与を知ってしまっているからな」
公爵様は特に警戒心が強く、『家族であってもこの関係を漏らさないこと』を後ろ盾の条件とされている。そのため関係を知ってしまった時点で、自由を奪われる未来が確定しているんだ。
「き、聞くつもりなんて……。なかったのにぃぃ……! じゃっ、じゃあ! ぼくはっ! どこにっ、連れて行かれるんだぁ…………!?」
「それは、着いてからのお楽しみだ。移動中もたっぷりと不安に襲われて、衰弱するといい」
「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁ!! いやだああああああっ!! やめろぉぉっ! やめてくれぇぇぇぇぇ――びぃぃぃぃ…………」
恐怖の量が、許容範囲を超えてしまったらしい。泣き叫んでいたピエールは泡を吹き出し、真後ろに倒れてしまった。
「……お前達はやりすぎてしまったから、どんなに取り乱しても同情はしない」
だから――
「お願い致します」
「「「「「「はっ」」」」」」
俺はレーデフェル公爵家の影に一礼を行い、愚かな親子は豪奢な部屋から運び出されてしまったのだった。
そしてその後、2人は――
0
お気に入りに追加
885
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです
早奈恵
恋愛
ざまぁも有ります。
クラウン王太子から突然婚約破棄を言い渡されたグレイシア侯爵令嬢。
理由は殿下の恋人ルーザリアに『チャボット毒殺事件』の濡れ衣を着せたという身に覚えの無いこと。
詳細を聞くうちに重大な勘違いを発見し、幼なじみの公爵令息ヴィクターを味方として召喚。
二人で冤罪を晴らし婚約破棄の取り消しを阻止して自由を手に入れようとするお話。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる