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第11話 だから、こうしてここにいる ベンジャミン視点(2)
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「う、うしろ……? な、何を言っているんだ! 後ろには誰も居な――な!?」
戸惑いながら後ろを見たピエールは、その直後激しく目を剥く羽目になった。なぜならばさっきまで誰も居なかった場所に、5人の男が――仮面をつけた黒ずくめの男達が、立っていたのだから。
「い、いつどうやって入ってきた……!? 何者だっ、コイツらは……!?」
「俺が説明をしている間に――数分前からとっくに、部屋の出入り口を通って入ってきていた。そしてこの方々の正体は、隣国貴族レーデフェル公爵家の影だ」
隣の国の、筆頭公爵家。この国の大公以上もの力を持つ家の、暗器だ。
「隣国の、公爵、その影だと……!? なんで貴様がそんなものを行使できるんだ!?」
「大公の時と、似たようなものだ。当主様の周囲にある悪い芽を摘み取ったことで、困った時は手を貸していただけるようになったんだよ」
どんなに『良い目』を持っていても――持っているからこそ、本当に厄介な敵は警戒をして巧みに本性を隠す。そこでノーマークな俺が嗅ぎ回り、失脚などを企んでいる者を潰して回った。
新たな武器を――攻撃に特化した秘密兵器を、得るために。
「各貴族には得意不得意があり、無礼千万なのだけれど、閣下のお力では対処できない――あるいは対処が遅くなってしまう問題も存在していた。そこで気になった部分を、埋める努力をしていたのさ。婚約をしたあとも、ずっと」
先週の、隣国への訪問。それはもちろんその一環で、関係の維持であり強化を図っていたんだ。
「そ、そんな……。大公閣下、だけじゃなかったなんて……。騙された…………!!」
「手の内を、馬鹿正直に明かすはずがないだろう? お前はそれでよく、貴族の一員として生きてこられたな?」
貴族界は、権謀術数渦巻く伏魔殿。昨日の味方が今日は敵になる可能性のある、厳しく醜い世界だ。
この男は想像以上に、甘やかされてきたらしい。
「こんな人間が領主になっていたら、領民も相当苦労していたはずだ。そういう意味でも、消えることになったよかった」
「き、消える……。ま、まさか……。まさか、お前は……。僕を……」
「当たり前だ。一度ではなく、二度でもなく、三度もルーシーを傷付けようとした男を放っておくはずがないだろう?」
自殺寸前まで追い込んで。にもかかわらずケロッとして復縁を申し込んで。再び彼女を絶望のどん底に落として、それを活かそうとした。そんなゴミを、許せるはずがない。
だから――
戸惑いながら後ろを見たピエールは、その直後激しく目を剥く羽目になった。なぜならばさっきまで誰も居なかった場所に、5人の男が――仮面をつけた黒ずくめの男達が、立っていたのだから。
「い、いつどうやって入ってきた……!? 何者だっ、コイツらは……!?」
「俺が説明をしている間に――数分前からとっくに、部屋の出入り口を通って入ってきていた。そしてこの方々の正体は、隣国貴族レーデフェル公爵家の影だ」
隣の国の、筆頭公爵家。この国の大公以上もの力を持つ家の、暗器だ。
「隣国の、公爵、その影だと……!? なんで貴様がそんなものを行使できるんだ!?」
「大公の時と、似たようなものだ。当主様の周囲にある悪い芽を摘み取ったことで、困った時は手を貸していただけるようになったんだよ」
どんなに『良い目』を持っていても――持っているからこそ、本当に厄介な敵は警戒をして巧みに本性を隠す。そこでノーマークな俺が嗅ぎ回り、失脚などを企んでいる者を潰して回った。
新たな武器を――攻撃に特化した秘密兵器を、得るために。
「各貴族には得意不得意があり、無礼千万なのだけれど、閣下のお力では対処できない――あるいは対処が遅くなってしまう問題も存在していた。そこで気になった部分を、埋める努力をしていたのさ。婚約をしたあとも、ずっと」
先週の、隣国への訪問。それはもちろんその一環で、関係の維持であり強化を図っていたんだ。
「そ、そんな……。大公閣下、だけじゃなかったなんて……。騙された…………!!」
「手の内を、馬鹿正直に明かすはずがないだろう? お前はそれでよく、貴族の一員として生きてこられたな?」
貴族界は、権謀術数渦巻く伏魔殿。昨日の味方が今日は敵になる可能性のある、厳しく醜い世界だ。
この男は想像以上に、甘やかされてきたらしい。
「こんな人間が領主になっていたら、領民も相当苦労していたはずだ。そういう意味でも、消えることになったよかった」
「き、消える……。ま、まさか……。まさか、お前は……。僕を……」
「当たり前だ。一度ではなく、二度でもなく、三度もルーシーを傷付けようとした男を放っておくはずがないだろう?」
自殺寸前まで追い込んで。にもかかわらずケロッとして復縁を申し込んで。再び彼女を絶望のどん底に落として、それを活かそうとした。そんなゴミを、許せるはずがない。
だから――
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