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第10話 死んでいない理由 ベンジャミン視点
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「…………なるほど。すっかり大人しくなっていた理由が、ようやく分かりましたよ」
それはおよそ、今から2週間前のこと。突然暗殺計画の報が届き、俺は応接室で呆れの息を吐き出していた。
半年前――あのあとすぐに罪を言い広め、謹慎を行い、途中からは奉仕活動を始めたピエール。あの時の目を見て、何か企んでいると感付いてはいたのだけれど――。まさか、こんな大掛かりなことをするとはね。
「貴方様を消してレーズリック様の心を傷付け、そちらを利用しての復縁を企んでいるようでございます。それ故に処理が必要ではございますが、ベンジャミン様」
「ええ、理解していますよ。公的機関に、対処を任せるつもりはございません」
ソコが関わってしまうとどうしても、企みの知得などを説明する過程で『協力者』の存在が知れてしまう。
協力は内密に――。そういう約束を交わしていることは当然覚えているし、それに俺自身も、そんな生ぬるい方法を使うつもりはない。
「ですので貴方がたのお力を、お借りしたいと思っておりまして。確か……決行は13日後、式の前日でしたね?」
「その日に、ロッカの湖で。そんな計画のようでございます」
「でしたらその間にこちらも色々と準備を行って、そうですね……。当日ピエールが雇った殺し屋を、ルーシーに悟られないように処分したいのですが。そちらは可能でしょうか?」
その際には傍に彼女がいて、もしも悟られてしまったら『自分が原因で……』と気に病ませてしまうことになる。なので殺し屋の存在に気付かれないようにしたくて、確認を行ってみると即座に首肯が返ってきた。
「生け捕りとなると多少難度は上がりますが、『処分』でしたら造作もありません。悲鳴の一つさえも発させずに、処理できますよ」
「助かります。……ではそうしていただいて、こちらはそのあと――」
どのように動くのか。そしてその日までの間に、どんな準備を行うのか。そういったことの詳説をさせていただき、1時間ほどで打ち合わせは終わった。
「承知いたしました。では引き続き陰より警戒を行い、その際に再び介入をさせていただきます」
「痛み入ります。それではよろしくお願い致します」
そうして俺もその日に向けて色々と準備を行い、ついに当日がやって来た。
「今日はついて来てくれてありがとう。また、明日。午前6時に、迎えに行くね」
「はい……っ。また明日。お待ちしております……っ」
この国では式当日、新郎が新婦を連れて会場入りするようになっている。なのでその約束をして別れ、
「さて、行こうか。悪い芽を、完全に摘み取りに」
俺は自身の屋敷ではなく、サテファーズ伯爵邸を目指したのだった。
それはおよそ、今から2週間前のこと。突然暗殺計画の報が届き、俺は応接室で呆れの息を吐き出していた。
半年前――あのあとすぐに罪を言い広め、謹慎を行い、途中からは奉仕活動を始めたピエール。あの時の目を見て、何か企んでいると感付いてはいたのだけれど――。まさか、こんな大掛かりなことをするとはね。
「貴方様を消してレーズリック様の心を傷付け、そちらを利用しての復縁を企んでいるようでございます。それ故に処理が必要ではございますが、ベンジャミン様」
「ええ、理解していますよ。公的機関に、対処を任せるつもりはございません」
ソコが関わってしまうとどうしても、企みの知得などを説明する過程で『協力者』の存在が知れてしまう。
協力は内密に――。そういう約束を交わしていることは当然覚えているし、それに俺自身も、そんな生ぬるい方法を使うつもりはない。
「ですので貴方がたのお力を、お借りしたいと思っておりまして。確か……決行は13日後、式の前日でしたね?」
「その日に、ロッカの湖で。そんな計画のようでございます」
「でしたらその間にこちらも色々と準備を行って、そうですね……。当日ピエールが雇った殺し屋を、ルーシーに悟られないように処分したいのですが。そちらは可能でしょうか?」
その際には傍に彼女がいて、もしも悟られてしまったら『自分が原因で……』と気に病ませてしまうことになる。なので殺し屋の存在に気付かれないようにしたくて、確認を行ってみると即座に首肯が返ってきた。
「生け捕りとなると多少難度は上がりますが、『処分』でしたら造作もありません。悲鳴の一つさえも発させずに、処理できますよ」
「助かります。……ではそうしていただいて、こちらはそのあと――」
どのように動くのか。そしてその日までの間に、どんな準備を行うのか。そういったことの詳説をさせていただき、1時間ほどで打ち合わせは終わった。
「承知いたしました。では引き続き陰より警戒を行い、その際に再び介入をさせていただきます」
「痛み入ります。それではよろしくお願い致します」
そうして俺もその日に向けて色々と準備を行い、ついに当日がやって来た。
「今日はついて来てくれてありがとう。また、明日。午前6時に、迎えに行くね」
「はい……っ。また明日。お待ちしております……っ」
この国では式当日、新郎が新婦を連れて会場入りするようになっている。なのでその約束をして別れ、
「さて、行こうか。悪い芽を、完全に摘み取りに」
俺は自身の屋敷ではなく、サテファーズ伯爵邸を目指したのだった。
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