19 / 30
第9話 完璧だ! ~今日は最高の日になる~ 俯瞰視点
しおりを挟む
「はっはっはっ! はーっはっはっは! 完璧っ! 完璧だっっ!」
あれから13日後の、午後4時過ぎのことでした。サテファーズ伯爵邸内にあるピエールの自室では、彼の大笑いが響き渡っていました。
あのあとも引き続き反省した芝居をしていて、ベンジャミンには――最も厄介な存在である大公にも、本心を一切悟られないこと。
そんな状況下で、一流の殺し屋が動き出すこと。
それらによって彼は、計画の成功を確信。そのためあの日と同じく、ブラッディ・メアリーを傾けながら笑っていたのでした。
「今頃ヤツは、ロッカの湖に――人気(ひとけ)が少ない場所に居る。そろそろ、この世を去る頃だな」
彼は豪華な掛け時計を一瞥し、すっかり好物となっているカクテルを一口飲みます。そうして再び大口を開けて笑い、満面の笑みで吉報を待ちます。
「貴族絡みの暗殺は大騒動、かなり早く情報は広まる。だから…………遅くても3時間後、午後7時には貴族界が大騒ぎになるはずだ」
知れ渡るまでは、あと3時間か――。まいったな、少々早く騒ぎ始めてしまったか――。つい先走ってしまったな――。などなど。
ピエールはワザとらしく微苦笑を浮かべ、今という嬉しくて仕方ない時間を存分に楽しみます。
「『待つ』という行為は腹立たしいと思っていたが、まさかこんなにも楽しい『待つ』があるだなんてな。いやぁ~、まだまだ見識が狭いな僕は」
「そうだなぁ。僕は午後8時に訃報を把握したことにして…………。すぐさまルーシーのもとに駆け寄りたいが、早すぎると不自然に思われるかもしれない。そこで…………明日の早朝、優しい声をかけにいくか」
安心しておくれ、ルーシー。明日は――結婚式当日は、予定通り君にとって最高の日になるよ。傷付いた心を僕が癒してあげるから、楽しみにしていてね――。
今日もまたあまりにも身勝手なものを口にし、そうしている間に3時間が経過。そろそろ訃報こと吉報が入る時間となりました。
「いよいよか、いよいよだな……! 至高の時間がやって来る……!!」
その嬉しいニュースは、父ダニエルが持って来てくれる約束となってしまい。そのため追加で用意させたブラッディ・メアリーを味わいながら待ち、やがて部屋の扉が勢いよく開け放たれたのですが――
「な…………」
それを切っ掛けとして、ピエールの顔から笑みが消えてしまいます。
なぜならば――
「突然すまないね、ピエール。君と話しがしたくて、邪魔させてもらったよ」
――部屋に入ってきたのは、父ダニエルではなくベンジャミン。とっくに殺されているはずの男が、突如現れたからです。
あれから13日後の、午後4時過ぎのことでした。サテファーズ伯爵邸内にあるピエールの自室では、彼の大笑いが響き渡っていました。
あのあとも引き続き反省した芝居をしていて、ベンジャミンには――最も厄介な存在である大公にも、本心を一切悟られないこと。
そんな状況下で、一流の殺し屋が動き出すこと。
それらによって彼は、計画の成功を確信。そのためあの日と同じく、ブラッディ・メアリーを傾けながら笑っていたのでした。
「今頃ヤツは、ロッカの湖に――人気(ひとけ)が少ない場所に居る。そろそろ、この世を去る頃だな」
彼は豪華な掛け時計を一瞥し、すっかり好物となっているカクテルを一口飲みます。そうして再び大口を開けて笑い、満面の笑みで吉報を待ちます。
「貴族絡みの暗殺は大騒動、かなり早く情報は広まる。だから…………遅くても3時間後、午後7時には貴族界が大騒ぎになるはずだ」
知れ渡るまでは、あと3時間か――。まいったな、少々早く騒ぎ始めてしまったか――。つい先走ってしまったな――。などなど。
ピエールはワザとらしく微苦笑を浮かべ、今という嬉しくて仕方ない時間を存分に楽しみます。
「『待つ』という行為は腹立たしいと思っていたが、まさかこんなにも楽しい『待つ』があるだなんてな。いやぁ~、まだまだ見識が狭いな僕は」
「そうだなぁ。僕は午後8時に訃報を把握したことにして…………。すぐさまルーシーのもとに駆け寄りたいが、早すぎると不自然に思われるかもしれない。そこで…………明日の早朝、優しい声をかけにいくか」
安心しておくれ、ルーシー。明日は――結婚式当日は、予定通り君にとって最高の日になるよ。傷付いた心を僕が癒してあげるから、楽しみにしていてね――。
今日もまたあまりにも身勝手なものを口にし、そうしている間に3時間が経過。そろそろ訃報こと吉報が入る時間となりました。
「いよいよか、いよいよだな……! 至高の時間がやって来る……!!」
その嬉しいニュースは、父ダニエルが持って来てくれる約束となってしまい。そのため追加で用意させたブラッディ・メアリーを味わいながら待ち、やがて部屋の扉が勢いよく開け放たれたのですが――
「な…………」
それを切っ掛けとして、ピエールの顔から笑みが消えてしまいます。
なぜならば――
「突然すまないね、ピエール。君と話しがしたくて、邪魔させてもらったよ」
――部屋に入ってきたのは、父ダニエルではなくベンジャミン。とっくに殺されているはずの男が、突如現れたからです。
0
お気に入りに追加
887
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。
田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。
ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。
私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。
王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。
冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。
本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。
ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。
隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。
「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」
どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。


断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる