最愛の人が、元婚約者にしつこく復縁を迫られているらしい

第８話 計画 俯瞰視点（１）

「なんだって……？　３０００万ピリス（１ピリス＝１円）を借りたい……!?」

　ピエール曰く、邪魔され煮え湯を飲まされた日――ベンジャミンによって一蹴されてから、半年後。ピエールの姿は、後ろ盾であるゼネベック公爵邸にありました。

「はい。どうしてもその額が必要でして、わたしの一生の・・・を我が儘を叶えてはいただけないでしょうか？」
「それ自体はまあ構わんが、使い方によって回答は変わる。ピエールよ、これを何に使うつもりなんじゃ？」
「実は反省の一環として、恵まれない子ども達を対象とした支援を考えておりまして。その土台とするべく、まとまった現金が必要なのでございます」
「……なるほどな。分かった。すぐに用意しようじゃないか」

　あのあとピエールは各所で自身の罪を白状し、無期限で謹慎をしていました。心から反省しているフリを半年ものあいだ続け、ベンジャミンに殺意を抱いていると誰にも思わせないようにしていました。
　それに何よりゼネベック公爵ことゲインは、話が合うピエールを、実の孫のように可愛がっていました。そのためそれらの理由によってゲインは本心に気付かず、あっさりと『軍資金』を手渡してしまったのです。

「ありがとうございますっ！　これで、僕の意思を貫けます・・・・・・・」
「ほっほっほ、それはよかった。……あのようなことになって、さしものワシでも介入ができなかった。ずっと気に病んでおったが、やっと力になれてホッとしておるよ」
「重ね重ね、ご心配をおかけいたしました。…………当時は怒り狂いましたが、今では彼に感謝していますよ。僕の誤りを正してくれたのですから」

　そうして彼はベンジャミンへの感謝をたっぷりと語り、それが済むとお屋敷を去ります。そしてその足で支援の行動を始めるのですが、そこでは１０００万ピリスしか使用しません。

「父上、上手く借りることができたよ。残りは用意できるよね？」
「勿論だとも。あの男はわたしにとっても、敵だ。ちゃんと用意してあるぞ」

　ピエールが自邸に戻るとテーブルの上には４０００万ピリスが並んでいて、手元にある２０００万と合わせて、計６０００万ピリス。今度はこれを馬車に詰め込み、陽が沈みきったタイミングでとある場所へと発ちます。
　変装をした彼が、偽装を施した馬車で向かう場所。それは――