上 下
13 / 30

第5話 回想~2人の出会いと恋と、決意~ ベンジャミン視点(4)

しおりを挟む
((…………家の力を高めるのは、どうやっても不可能。それこそピエールのサテファーズ家のように、他家の力を借りるしかないな))

 力を得る方法を探し始めてから、4日後。予想通りどう足掻いても無理だと理解した俺は、そう確信するや動き出す。

((……サテファーズ伯爵家のように、先祖からの縁がない場合は強力な味方を作れない))

 なぜなら、信頼関係がないから。あちらに手を貸す理由がないため、その手の懇願をしても相手にはされない。

((……だから……。手を貸す理由を、作るしかない))

 そこで俺は社交界を様々な角度から嗅ぎ回り・・・・、膨大な時間と労力を費やしたものの、上位貴族絡みの『懸念』を把握する。そして父上は、下手をすると反感を買いかねないという理由で難色を示していたが――

「失敗できない理由がありますので、失敗は致しません。必ずや成功させます」

 ――説得を行い、大公閣下の失脚計画など4つの芽への対応を開始させる。
 相手はタチの悪い上位貴族ばかりなため苦労をしたものの、

・泥臭い調査で、相手の情報を完璧に知得できていたこと。
・大公と俺は一切の関係がなく、あちらは俺の行動を予想できなかったこと。
・ありもしない裏切り者がいるとの噂を流し、敵側を上手く疑心暗鬼にできたこと。

 それらによって、無事全て成功。その後、それらの『貢献』を閣下に伝えるなどして――結局1年近く費やしてしまったけれど、どうにか納得できるだけの『武器』を手に入れられたのだった。
 なのでようやく、

「ルーシー。一緒に、もう一歩先に進んでくれませんか?」
「……ベンジャミン様。それは……っ」
「うん。…………ルーシー・レーズリック様。どうか、僕の婚約者になってください」

 プロポーズを行い、俺達は婚約者となった。そしてその一か月後、昨日――

『ピエール様は、関係を戻したいようでして……。6日前から、しつこく復縁を迫られるようになってしまったのですよ……』

 最愛の人に起きたトラブルを知り、用意していた『武器』を使うことにしたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。

百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」 私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。 この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。 でも、決して私はふしだらなんかじゃない。 濡れ衣だ。 私はある人物につきまとわれている。 イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。 彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。 「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」 「おやめください。私には婚約者がいます……!」 「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」 愛していると、彼は言う。 これは運命なんだと、彼は言う。 そして運命は、私の未来を破壊した。 「さあ! 今こそ結婚しよう!!」 「いや……っ!!」 誰も助けてくれない。 父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。 そんなある日。 思いがけない求婚が舞い込んでくる。 「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」 ランデル公爵ゴトフリート閣下。 彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。 これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

あなたと妹がキモ……恐いので、婚約破棄でOKです。あ、あと慰謝料ください。

百谷シカ
恋愛
「妹が帰って来たので、今日はこれにて。また連絡するよ、ルイゾン」 「えっ? あ……」 婚約中のティボー伯爵令息マルク・バゼーヌが、結婚準備も兼ねた食事会を中座した。 理由は、出戻りした妹フェリシエンヌの涙の乱入。 それからというもの、まったく音沙汰ナシよ。 結婚予定日が迫り連絡してみたら、もう、最悪。 「君には良き姉としてフェリシエンヌを支えてほしい。婿探しを手伝ってくれ」 「お兄様のように素敵な方なんて、この世にいるわけがないわ」 「えっ? あ……ええっ!?」 私はシドニー伯爵令嬢ルイゾン・ジュアン。 婚約者とその妹の仲が良すぎて、若干の悪寒に震えている。 そして。 「あなたなんかにお兄様は渡さないわ!」 「無責任だな。妹の婿候補を連れて来られないなら、君との婚約は破棄させてもらう」 「あー……それで、結構です」 まったく、馬鹿にされたものだわ! 私はフェリシエンヌにあらぬ噂を流され、有責者として婚約を破棄された。 「お兄様を誘惑し、私を侮辱した罪は、すっごく重いんだからね!」 なんと、まさかの慰謝料請求される側。 困った私は、幼馴染のラモー伯爵令息リシャール・サヴァチエに助けを求めた。 彼は宮廷で執政官補佐を務めているから、法律に詳しいはず……

【 完 】転移魔法を強要させられた上に婚約破棄されました。だけど私の元に宮廷魔術師が現れたんです

菊池 快晴
恋愛
公爵令嬢レムリは、魔法が使えないことを理由に婚約破棄を言い渡される。 自分を虐げてきた義妹、エリアスの思惑によりレムリは、国民からは残虐な令嬢だと誤解され軽蔑されていた。 生きている価値を見失ったレムリは、人生を終わらせようと展望台から身を投げようとする。 しかし、そんなレムリの命を救ったのは他国の宮廷魔術師アズライトだった。 そんな彼から街の案内を頼まれ、病に困っている国民を助けるアズライトの姿を見ていくうちに真実の愛を知る――。 この話は、行き場を失った公爵令嬢が強欲な宮廷魔術師と出会い、ざまあして幸せになるお話です。

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

婚約破棄して勝手に落ちぶれたんだから、もう頼らないで

霜月琥珀
恋愛
ビッチでクズな義妹に誑かされた婚約者が私の両親を屋敷から追い出したみたいなので、やがて復縁を迫ってくる実家を勘当された元婚約者と冤罪がバレて逮捕された義妹をざまぁします。 リハビリ作品です。

婚約破棄?してもらわないと困ります!脱税犯の婚約者はゴメンです

 (笑)
恋愛
エメロード・サファイア公爵令嬢は、その美しさと知性で社交界を魅了する一方、裏では王国に仕える脱税調査官として活動していた。次なるターゲットはギャラン公爵。彼の信頼を得るために婚約者として近づいたエメロードは、巧妙に彼の不正の証拠を集めていく。しかし、公爵が抱いていた彼女への愛情はすべて誤解だった。エメロードの冷静な知略が、公爵の運命を大きく揺るがす物語。

悪役令嬢になりそこねた令嬢

ぽよよん
恋愛
レスカの大好きな婚約者は2歳年上の宰相の息子だ。婚約者のマクロンを恋い慕うレスカは、マクロンとずっと一緒にいたかった。 マクロンが幼馴染の第一王子とその婚約者とともに王宮で過ごしていれば側にいたいと思う。 それは我儘でしょうか? ************** 2021.2.25 ショート→短編に変更しました。

既に王女となったので

杉本凪咲
恋愛
公爵令息のオーウェンと結婚して二年。 私は彼から愛されない日々を送っていた。 彼の不倫現場を目撃した私は、離婚を叫び家を去る。 王女になるために。

処理中です...