2 / 30
第1話 元婚約者・ピエールの奇行 ベンジャミン視点(1)
しおりを挟む
「ピエールが、復縁……? ヤツは確か、先月婚約をしたはず。どうなっているんだ……?」
ウチことヴァルスター家もサテファーズ家と同格なため、交流はなくともある程度の情報は入ってくる。心変わりをしたその相手――エルダリンス子爵令嬢ステファニーとの結婚に向け、嬉々として前進していたはずなのだが……?
「それが……。『僕が間違っていた』『君以上に素敵な女性は、いなかった』『ステファニーとの関係はすでに絶ったから、あの頃に戻りたい』と……。突然いらっしゃったピエール様は、そう仰られました……」
「……なるほど。ステファニーに飽きたのか」
思い返せばヤツは、『君以外にはあり得ない』『君だけを永遠に愛し続ける』と言っていたルーシーを捨てた。
一度あったのなら、二度目だって有り得る。当時何かの切っ掛けでステファニーに興味を持ったように、何らかの理由で再度ルーシーに興味を持つようになってしまったんだ。
「あのようなことがあった方とはお友達にすらなれませんし、なにより私にはベンジャミン様がいます。ですので、即座にお断りしたのですが……」
絶対に僕の方が幸せにできる――。
だから、あの男と別れて欲しい――。
あの時のような間違いは二度と犯さないから――。
もう絶対に、君以外を見ないから――。
真に愛すべき人、愛しのルーシー。その証を受け取ってください――。
ピエールはいけしゃあしゃあと、リングを差し出したらしい。そして、再びルーシーが断ると――
「毎日、いらっしゃるようになって……。外出先でも、待ち伏せをされるようになってしまったのです……」
午前中に必ずココを訪ねてきたり、参加予定のなかった夜会に居たり。断っても断っても、しつこく付き纏ってきていたそうだ。
「ベンジャミン様と次にお会いするまでに、解決させようと思っていたのですが……。まったく諦めてくださらなくて……。大きな後ろ盾がある方なので強く出られず、どうすればいいのかずっと考えていて……。その影響で先ほどは、あのようになってしまっていたのです」
「そう、だったんだね。ルーシー、俺のためにありがとう」
事情を理解した俺はイスから立ち上がり、彼女のもとに歩み寄って感謝を伝える。そしてより不安を消せるよう両手を取ってから、こう伝えたのだった。
「どんなに強い後ろ盾があっても、問題ない。その件は俺が、片をつけるよ」
※本日はお昼ごろに、もう1話投稿をさせていただきます(時間に余裕があった場合は、夕方~夜にもう1話投稿をさせていただきます)
ウチことヴァルスター家もサテファーズ家と同格なため、交流はなくともある程度の情報は入ってくる。心変わりをしたその相手――エルダリンス子爵令嬢ステファニーとの結婚に向け、嬉々として前進していたはずなのだが……?
「それが……。『僕が間違っていた』『君以上に素敵な女性は、いなかった』『ステファニーとの関係はすでに絶ったから、あの頃に戻りたい』と……。突然いらっしゃったピエール様は、そう仰られました……」
「……なるほど。ステファニーに飽きたのか」
思い返せばヤツは、『君以外にはあり得ない』『君だけを永遠に愛し続ける』と言っていたルーシーを捨てた。
一度あったのなら、二度目だって有り得る。当時何かの切っ掛けでステファニーに興味を持ったように、何らかの理由で再度ルーシーに興味を持つようになってしまったんだ。
「あのようなことがあった方とはお友達にすらなれませんし、なにより私にはベンジャミン様がいます。ですので、即座にお断りしたのですが……」
絶対に僕の方が幸せにできる――。
だから、あの男と別れて欲しい――。
あの時のような間違いは二度と犯さないから――。
もう絶対に、君以外を見ないから――。
真に愛すべき人、愛しのルーシー。その証を受け取ってください――。
ピエールはいけしゃあしゃあと、リングを差し出したらしい。そして、再びルーシーが断ると――
「毎日、いらっしゃるようになって……。外出先でも、待ち伏せをされるようになってしまったのです……」
午前中に必ずココを訪ねてきたり、参加予定のなかった夜会に居たり。断っても断っても、しつこく付き纏ってきていたそうだ。
「ベンジャミン様と次にお会いするまでに、解決させようと思っていたのですが……。まったく諦めてくださらなくて……。大きな後ろ盾がある方なので強く出られず、どうすればいいのかずっと考えていて……。その影響で先ほどは、あのようになってしまっていたのです」
「そう、だったんだね。ルーシー、俺のためにありがとう」
事情を理解した俺はイスから立ち上がり、彼女のもとに歩み寄って感謝を伝える。そしてより不安を消せるよう両手を取ってから、こう伝えたのだった。
「どんなに強い後ろ盾があっても、問題ない。その件は俺が、片をつけるよ」
※本日はお昼ごろに、もう1話投稿をさせていただきます(時間に余裕があった場合は、夕方~夜にもう1話投稿をさせていただきます)
0
お気に入りに追加
887
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。
田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。
ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。
私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。
王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。
冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。
本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。
ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。
隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。
「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」
どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。


断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる