最愛の人が、元婚約者にしつこく復縁を迫られているらしい

柚木ゆず

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第1話 元婚約者・ピエールの奇行 ベンジャミン視点(1)

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「ピエールが、復縁……? ヤツは確か、先月婚約をしたはず。どうなっているんだ……?」

 ウチことヴァルスター家もサテファーズ家と同格なため、交流はなくともある程度の情報は入ってくる。心変わりをしたその相手――エルダリンス子爵令嬢ステファニーとの結婚に向け、嬉々として前進していたはずなのだが……?

「それが……。『僕が間違っていた』『君以上に素敵な女性は、いなかった』『ステファニーとの関係はすでに絶ったから、あの頃に戻りたい』と……。突然いらっしゃったピエール様は、そう仰られました……」
「……なるほど。ステファニーに飽きたのか」

 思い返せばヤツは、『君以外にはあり得ない』『君だけを永遠に愛し続ける』と言っていたルーシーを捨てた。
 一度あったのなら、二度目だって有り得る。当時何かの切っ掛けでステファニーに興味を持ったように、何らかの理由で再度ルーシーに興味を持つようになってしまったんだ。

「あのようなことがあった方とはお友達にすらなれませんし、なにより私にはベンジャミン様がいます。ですので、即座にお断りしたのですが……」

 絶対に僕の方が幸せにできる――。
 だから、あの男と別れて欲しい――。
 あの時のような間違いは二度と犯さないから――。
 もう絶対に、君以外を見ないから――。
 真に愛すべき人、愛しのルーシー。その証を受け取ってください――。

 ピエールはいけしゃあしゃあと、リングを差し出したらしい。そして、再びルーシーが断ると――

「毎日、いらっしゃるようになって……。外出先でも、待ち伏せをされるようになってしまったのです……」

 午前中に必ずココを訪ねてきたり、参加予定のなかった夜会に居たり。断っても断っても、しつこく付き纏ってきていたそうだ。

「ベンジャミン様と次にお会いするまでに、解決させようと思っていたのですが……。まったく諦めてくださらなくて……。大きな後ろ盾がある方なので強く出られず、どうすればいいのかずっと考えていて……。その影響で先ほどは、あのようになってしまっていたのです」
「そう、だったんだね。ルーシー、俺のためにありがとう」

 事情を理解した俺はイスから立ち上がり、彼女のもとに歩み寄って感謝を伝える。そしてより不安を消せるよう両手を取ってから、こう伝えたのだった。

「どんなに強い後ろ盾があっても、問題ない。その件は俺が、片をつけるよ」





※本日はお昼ごろに、もう1話投稿をさせていただきます(時間に余裕があった場合は、夕方~夜にもう1話投稿をさせていただきます)
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