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第6話 大きな大きな、予想外 俯瞰視点(1)
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「ははは、はははははっ。散々な人生だと思っていたが、神はわたしを見放さなかったようだな!」
ゼサデント子爵邸内にある、執務室。そこでは大きな荷物を前にして、当主ニックが上機嫌で喉を鳴らしていました。
このあと屋敷に戻って来たマルセルがこの荷物を持って失踪して、その捜索をしている最中で崖から転落――したと見せかける。そしてその後隣国にてベルナールの代理人と接触し、残りの5000万を手に入れる。
充分な資金を持った状態で、新たな人生を始められる。
それが、嬉しくてたまらないのです。
「立て直しが不可能な『家』に生まれ、到底貴族とは思えない毎日を過ごす羽目になっていたが……! ここからは違う……!! これを元手に倍っ、いいや3倍4倍と増やしっ、金に溢れた生活を送ってやろうじゃないか!!」
自分には実力がある! 軍資金さえあればそれが可能だ! と豪語している彼にそんな実力はなく、実行した場合あっという間に軍資金は溶けてしまいます。
そもそも彼が有能であれば、立て直しは充分に可能でした。
愚者はそれらに気付くことなく肩を揺らして笑い、慇懃無礼に腰を折り曲げました。
「アルマ・フェニアック様、ほんに申し訳ございません。我々は、貴女様に恨みはまったくありません。ですが貴女様を揺すれば金がボロボロと零れ落ちてくるので、利用させていただきました」
「今回の件によって最愛の婚約者様との縁が切れ、英雄に不貞を働いたとして社交界などすべてにおいて居場所を失くしてしまうでしょう。そこで我々は恩人様に、せめてものお詫びを用意しております」
「我々は隣国サッバゼータルにて大金を作り、貴女様をお待ちしております。人生をやり直せる準備をして、お待ちしております。故に支援が必要となりましたら、いつでもいらっしゃってください。喜んで、支援をさせていただきます」
「貴女様が我々を見つけることができたら、の話ですがな。はーっはっはっはっは!」
そしてニックは腹をかかえて嗤い、たっぷり3分ほど体を揺らしたら、室内にある掛け時計を一瞥。「おっと、そろそろ帰ってくる頃合いだな」とひとりごち、『功労者』を迎えるべく応接室を後にしました。
「まずは手厚く褒めてやらんとな。ふふふ、ふふふふふふふっ」
引き続き笑みを浮かべながらエントランス付近で待機をし、マルセルを乗せた馬車が返って来たという報告があったため外へと出た――のですが、残念ながら息子を手厚く褒めることはできません。
その理由はもちろん、
「たっ、大変です父上!! 予想外が発生しっ、とんでもない事態となってしまいました!!」
マルセルが血相を変えて、馬車から降りてきたからです。
ゼサデント子爵邸内にある、執務室。そこでは大きな荷物を前にして、当主ニックが上機嫌で喉を鳴らしていました。
このあと屋敷に戻って来たマルセルがこの荷物を持って失踪して、その捜索をしている最中で崖から転落――したと見せかける。そしてその後隣国にてベルナールの代理人と接触し、残りの5000万を手に入れる。
充分な資金を持った状態で、新たな人生を始められる。
それが、嬉しくてたまらないのです。
「立て直しが不可能な『家』に生まれ、到底貴族とは思えない毎日を過ごす羽目になっていたが……! ここからは違う……!! これを元手に倍っ、いいや3倍4倍と増やしっ、金に溢れた生活を送ってやろうじゃないか!!」
自分には実力がある! 軍資金さえあればそれが可能だ! と豪語している彼にそんな実力はなく、実行した場合あっという間に軍資金は溶けてしまいます。
そもそも彼が有能であれば、立て直しは充分に可能でした。
愚者はそれらに気付くことなく肩を揺らして笑い、慇懃無礼に腰を折り曲げました。
「アルマ・フェニアック様、ほんに申し訳ございません。我々は、貴女様に恨みはまったくありません。ですが貴女様を揺すれば金がボロボロと零れ落ちてくるので、利用させていただきました」
「今回の件によって最愛の婚約者様との縁が切れ、英雄に不貞を働いたとして社交界などすべてにおいて居場所を失くしてしまうでしょう。そこで我々は恩人様に、せめてものお詫びを用意しております」
「我々は隣国サッバゼータルにて大金を作り、貴女様をお待ちしております。人生をやり直せる準備をして、お待ちしております。故に支援が必要となりましたら、いつでもいらっしゃってください。喜んで、支援をさせていただきます」
「貴女様が我々を見つけることができたら、の話ですがな。はーっはっはっはっは!」
そしてニックは腹をかかえて嗤い、たっぷり3分ほど体を揺らしたら、室内にある掛け時計を一瞥。「おっと、そろそろ帰ってくる頃合いだな」とひとりごち、『功労者』を迎えるべく応接室を後にしました。
「まずは手厚く褒めてやらんとな。ふふふ、ふふふふふふふっ」
引き続き笑みを浮かべながらエントランス付近で待機をし、マルセルを乗せた馬車が返って来たという報告があったため外へと出た――のですが、残念ながら息子を手厚く褒めることはできません。
その理由はもちろん、
「たっ、大変です父上!! 予想外が発生しっ、とんでもない事態となってしまいました!!」
マルセルが血相を変えて、馬車から降りてきたからです。
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