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第12話 ただの負けではなく、 クリスチアーヌ視点(2)
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「いい、もの……?」
「そ、いいもの。わたしの後ろにご注目よ」
トン、トン、トンと――。床を右手で3か所叩いて、パチンと指を鳴らす。それによって叩いた場所では虹色の魔法陣が浮かび上がるようになって――
「ガルルルルルルルルルルルル」
「ギギギギギギギギギギギギギ」
「ピィィィィィィィィィィィィ」
――10メートルくらいの大きな熊。15メートルくらいの大きなイカ。20メートルくらいの大きな鳥。『ローラッカスの森』の守護獣、『ロードトッグス』の守護獣、『ローズハットス山』の守護獣が登場したのだった。
「ガルルルルルルルルルルルルっ」
「ギギギギギギギギギギギギギっ」
「ピィィィィィィィィィィィィっ」
「しっかり、『毒』は抜けたみたいね。仕方ないとはいえ、手荒な真似をしちゃってごめんなさいね」
「………………守護獣が、生きている……!? どうなっているんだ!?」
鍵を3つ集めたということは、3体を殺したということ。突然目の前にあり得ない、明らかな矛盾した光景が広がり、たまらずゾエルは頭を抱えた。
「これは幻覚じゃない!! 実在している!! どうなっているんだ!? 女っ、貴様はなにをしたんだ!?」
「ちょっと待ちなさいよ。ええと…………これを使ったのよ」
わたしが収納用魔法陣から取り出したのは、長方形の粘土のようなもの。サミュエル様に使用した『複製粘土(ふくせいねんど)』――ではなくて、その翌年に完成させた改良品。
『……………………』
『? クリスチアーヌ様……? 眷族の残骸が、どうかしたのですか……?』
『……………………ちょっと気になることがあっただけです。なんでもありませんよ』
『??? そちらは……?』
『眷属は、魔王の力の一部。倒れた――邪な力が留まったままとなったら、この土地に悪影響を及ぼしかねません。この場が穢れないようにしているのですよ』
ローラッカスの森では、その時。
『夜も更けてきましたが、上にある魔法があれば時間は関係ありません。このまま最後の目的地へと向かっても構いませんか?』
『もちろんです。クリスチアーヌ様さえよければ、喜んでお供をさせていただきます』
『ありがとうございます。ではまいり――すみません。そちらの剣を貸していただけますか』
『え? は、はい。どうぞ』
『それは…………ああっ。そちらも、穢れを払うものなのですね』
『ええ、そうなんです。この敵は先ほどの敵よりも巨大だった――穢れる可能性がさっきよりも高いと思いまして、追加で行っております』
ロードトッグスでは、その時に。
『ピォォォォォォォォォ!! ピオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『暴れて落とそうとしてるのかしら? けど、そんな暇はないわよ。だってもう、アンタは終わってるのだからね』
『ピォォオオオオオオオオオオオオ!! ピオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォピ!?』
ローズハットスでは、空の上で蒸発させる瞬間に。複製粘土会を押し付け、守護獣の魂をコピーした器に入れていたのだった。
「くっつけたものの存在のコピーして、魂を入れられる……!? 守護獣を――神に近い存在を入れただなんて……。そんなこと、できるはずがない……」
「できているから、この子たちがここにいるんでしょう? あの頃のわたしはつい、ちょっとやりすぎちゃったのよ」
ちなみにこれは81歳の頃に創った試作品的なもので、翌年の82歳の頃には完成版が誕生していてストックも複数個ある。ただしソレは機能を追求しすぎたせいで実用性は皆無となっており、五感および身体能力の異常な向上&不死&再生能力を持つ代わりに――人間の魂が入った瞬間魂が器の強さに耐え切れずに消滅してしまうので、サミュエル様に使うことはできない。
人間の魂が消滅してしまうほど、強力な――異常な器だったから、神に近い存在でも普通に使うことができたのよね。
しかもずっと居てくれないと困る子たちに、不死と再生能力をプラスすることもできた。色々あったけど、まあよかったんじゃないかしらね。
「……………………………………」
「そういうワケであらゆる災害も起きないし、大地が死んで大勢の国民が死ぬこともない。……ねえ、逆転勝利が覆ってしまって、どんな気持ち?」
「ち、ちくしょうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――ぁ、ぁああああああああああああああああああああああああ!! だっ、ダーズンさまぁああああああああああああああああああああああああああああ……………………」
崩れ落ちながら、大絶叫。怒りと悲しみの大声を出して悔しがっている最中にタイムリミットが訪れてしまい、さようなら。
眷族ゾエルは完全に砂となって消え去り――
こうしてこの世界から完全に、魔王ダーズンの影は消えたのだった。
「そ、いいもの。わたしの後ろにご注目よ」
トン、トン、トンと――。床を右手で3か所叩いて、パチンと指を鳴らす。それによって叩いた場所では虹色の魔法陣が浮かび上がるようになって――
「ガルルルルルルルルルルルル」
「ギギギギギギギギギギギギギ」
「ピィィィィィィィィィィィィ」
――10メートルくらいの大きな熊。15メートルくらいの大きなイカ。20メートルくらいの大きな鳥。『ローラッカスの森』の守護獣、『ロードトッグス』の守護獣、『ローズハットス山』の守護獣が登場したのだった。
「ガルルルルルルルルルルルルっ」
「ギギギギギギギギギギギギギっ」
「ピィィィィィィィィィィィィっ」
「しっかり、『毒』は抜けたみたいね。仕方ないとはいえ、手荒な真似をしちゃってごめんなさいね」
「………………守護獣が、生きている……!? どうなっているんだ!?」
鍵を3つ集めたということは、3体を殺したということ。突然目の前にあり得ない、明らかな矛盾した光景が広がり、たまらずゾエルは頭を抱えた。
「これは幻覚じゃない!! 実在している!! どうなっているんだ!? 女っ、貴様はなにをしたんだ!?」
「ちょっと待ちなさいよ。ええと…………これを使ったのよ」
わたしが収納用魔法陣から取り出したのは、長方形の粘土のようなもの。サミュエル様に使用した『複製粘土(ふくせいねんど)』――ではなくて、その翌年に完成させた改良品。
『……………………』
『? クリスチアーヌ様……? 眷族の残骸が、どうかしたのですか……?』
『……………………ちょっと気になることがあっただけです。なんでもありませんよ』
『??? そちらは……?』
『眷属は、魔王の力の一部。倒れた――邪な力が留まったままとなったら、この土地に悪影響を及ぼしかねません。この場が穢れないようにしているのですよ』
ローラッカスの森では、その時。
『夜も更けてきましたが、上にある魔法があれば時間は関係ありません。このまま最後の目的地へと向かっても構いませんか?』
『もちろんです。クリスチアーヌ様さえよければ、喜んでお供をさせていただきます』
『ありがとうございます。ではまいり――すみません。そちらの剣を貸していただけますか』
『え? は、はい。どうぞ』
『それは…………ああっ。そちらも、穢れを払うものなのですね』
『ええ、そうなんです。この敵は先ほどの敵よりも巨大だった――穢れる可能性がさっきよりも高いと思いまして、追加で行っております』
ロードトッグスでは、その時に。
『ピォォォォォォォォォ!! ピオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『暴れて落とそうとしてるのかしら? けど、そんな暇はないわよ。だってもう、アンタは終わってるのだからね』
『ピォォオオオオオオオオオオオオ!! ピオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォピ!?』
ローズハットスでは、空の上で蒸発させる瞬間に。複製粘土会を押し付け、守護獣の魂をコピーした器に入れていたのだった。
「くっつけたものの存在のコピーして、魂を入れられる……!? 守護獣を――神に近い存在を入れただなんて……。そんなこと、できるはずがない……」
「できているから、この子たちがここにいるんでしょう? あの頃のわたしはつい、ちょっとやりすぎちゃったのよ」
ちなみにこれは81歳の頃に創った試作品的なもので、翌年の82歳の頃には完成版が誕生していてストックも複数個ある。ただしソレは機能を追求しすぎたせいで実用性は皆無となっており、五感および身体能力の異常な向上&不死&再生能力を持つ代わりに――人間の魂が入った瞬間魂が器の強さに耐え切れずに消滅してしまうので、サミュエル様に使うことはできない。
人間の魂が消滅してしまうほど、強力な――異常な器だったから、神に近い存在でも普通に使うことができたのよね。
しかもずっと居てくれないと困る子たちに、不死と再生能力をプラスすることもできた。色々あったけど、まあよかったんじゃないかしらね。
「……………………………………」
「そういうワケであらゆる災害も起きないし、大地が死んで大勢の国民が死ぬこともない。……ねえ、逆転勝利が覆ってしまって、どんな気持ち?」
「ち、ちくしょうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――ぁ、ぁああああああああああああああああああああああああ!! だっ、ダーズンさまぁああああああああああああああああああああああああああああ……………………」
崩れ落ちながら、大絶叫。怒りと悲しみの大声を出して悔しがっている最中にタイムリミットが訪れてしまい、さようなら。
眷族ゾエルは完全に砂となって消え去り――
こうしてこの世界から完全に、魔王ダーズンの影は消えたのだった。
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