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第11話 魔王ダーズンとの戦い クリスチアーヌ視点(5)
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「ふふふ、騙されたな? ダーズン様は、このくらいの攻撃じゃ死なないんだよ」
「驚いたか? 我の肉体はどんなことが起きようと、僅かでも肉が残っている限り自動的に再生するようになっているのだ」
なるほど、そういうこと。
勇者と聖女が『封印』を選択したのは、そういう事情があったからなのね。
「厳密に言うと、肉は残っている必要はない。細胞が1つでも残っていたら、そこを中心としてあっという間に再生することができるのだ!!」
「ふ~ん。便利な力ね」
「……認めたくはないが、認めざるを得んな。女よ、我は貴様には勝てん。だがなぁ、殺される未来は絶対にない!!」
ダーズンがドシンと、足踏みをする。そうしたらダーズンの周囲に、強大な漆黒の魔法陣が――別の次元へと転移するための魔法陣が出現した。
わたしと戦っても絶対に勝てない。勝てないから尻尾を撒いて逃げる。ってわけね。
「この魔法陣は30秒後に発動し、我が完全に消滅しない限り動き続ける。要するに止める術はない!!」
「勝ち目のない戦いはしない。無理をせず逃走する。良い選択肢だと思うわ」
「ははは! いい負け惜しみの声が聞こえるぞ!!」
「なにを言っているのかしらね? これはそんなものではないわ」
単に、現状を見て評価しているだけ。
「くははっ、その顔は悔しがっているように見えるぞ? 最後の最後で残念だったな!」
「ソレは、そう見えているだけよ。だって――」
「だって? なんだ?」
「だって――アンタはこの場から、逃げ切れないのだからね」
だから『負け惜しみ』じゃないし、『悔しがっている』もあり得ない。
「ふ、くふふ。ダーズン様、あの女は面白いことを言いますね」
「我の話を聞いていなかったようだな。もしくは、少々話が難解になると理解できる頭がなかったようだ」
「それも、ハズレ。……ねえダーズン。アンタって、自分は不死の存在だ、って思っているんでしょう?」
「『思っている』のではなく、それが事実だ」
思った通りね。
やっぱり、勘違いをしていた。
「いいえ、事実じゃないわ。だってアンタは、すべての細胞を消滅させたら死ぬんだもの」
「くっ、くはははははは!! そうだなっ、確かにそうだ! 全ての細胞を消されてしまったら死ぬな!」
「細胞は極めて小さく、何億何千億と存在しているし、もしかしたら細胞を意図的に切り離して安全圏に移動させられる術もあるのかしもれないわね。……もし。例えそうだとしても、わたしなら可能よ」
ここは扉の向こう側の世界。別にここが崩壊したって構いやしない。
創ってみたものの危険すぎて使えなかった魔法。ようやくアレが日の目を見る時が来たわね。
「ははは、そうか! ならやってみてくれ! 我に見せてくれたまえよ!!」
「言われなくてもするわよ。『空間抹消(くうかんまっしょう)』」
ダーズンを○で囲むように視線を動かし、パチンと指を鳴らす。
その、刹那だった。
「なにをのんびり眺めているのだ? 我の周りに何か飛んでいるとでもい」
視線で○を描いた部分がパッと消え去り、ダーズン――のみならず、空間を含め○の内側にあった景色すべてがなくなってしまったのだった。
「…………え? だ、だーずん、さま……? だーずん、さま……?」
「ダーズンは消滅したわよ。周りにあった空間と一緒にね」
わたしが指定した空間を消滅させる。それがこの魔法の効果。
空間の一部を消滅させると、その際に出来た『穴』に空間全てが吸い込まれて消滅してしまう――。そんな危険性があるから、転生前の世界でも一度も使用することができなかったのよね。
「う、うそだ……! ダーズン様が負けるはずがない!! 嘘だ!! ダーズン様はどこかに転移させられただけだ!!」
「わたしが嘘をつくメリットがある? それに、自分を見てみなさい。わたしの言葉に嘘がないことが、簡単に分かるわよ」
「わたくしの、からだ……? なにがあると――うわあああああああああああああああああああああああああ!?」
ゾエルの身体が、砂のように崩れ始めている。
眷族は、主と一心同体。眷族が死んでも主は死なないけれど、主が死ぬと眷族もしんでしまうのよね。
「アンタがそうなっているのは、ダーズンが完全に消滅した証拠。あっけない最期だったわね」
「そんな……ダーズン様が……。くそ! くそお!! くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「調子に乗るから痛い目を見るのよ。もしどこかでダーズンに会えたなら、教えてあげるといいわ。『謙虚に生きろ』ってね」
「ぐ……!! …………女、貴様こそ調子に乗るなよ……!! 確かにダーズン様は敗れたが、負けじゃない。この戦いは、引き分けだ……!!」
主は負けて眷族はまもなく消滅するのに、引き分け?
どういうことなのかしらね?
「驚いたか? 我の肉体はどんなことが起きようと、僅かでも肉が残っている限り自動的に再生するようになっているのだ」
なるほど、そういうこと。
勇者と聖女が『封印』を選択したのは、そういう事情があったからなのね。
「厳密に言うと、肉は残っている必要はない。細胞が1つでも残っていたら、そこを中心としてあっという間に再生することができるのだ!!」
「ふ~ん。便利な力ね」
「……認めたくはないが、認めざるを得んな。女よ、我は貴様には勝てん。だがなぁ、殺される未来は絶対にない!!」
ダーズンがドシンと、足踏みをする。そうしたらダーズンの周囲に、強大な漆黒の魔法陣が――別の次元へと転移するための魔法陣が出現した。
わたしと戦っても絶対に勝てない。勝てないから尻尾を撒いて逃げる。ってわけね。
「この魔法陣は30秒後に発動し、我が完全に消滅しない限り動き続ける。要するに止める術はない!!」
「勝ち目のない戦いはしない。無理をせず逃走する。良い選択肢だと思うわ」
「ははは! いい負け惜しみの声が聞こえるぞ!!」
「なにを言っているのかしらね? これはそんなものではないわ」
単に、現状を見て評価しているだけ。
「くははっ、その顔は悔しがっているように見えるぞ? 最後の最後で残念だったな!」
「ソレは、そう見えているだけよ。だって――」
「だって? なんだ?」
「だって――アンタはこの場から、逃げ切れないのだからね」
だから『負け惜しみ』じゃないし、『悔しがっている』もあり得ない。
「ふ、くふふ。ダーズン様、あの女は面白いことを言いますね」
「我の話を聞いていなかったようだな。もしくは、少々話が難解になると理解できる頭がなかったようだ」
「それも、ハズレ。……ねえダーズン。アンタって、自分は不死の存在だ、って思っているんでしょう?」
「『思っている』のではなく、それが事実だ」
思った通りね。
やっぱり、勘違いをしていた。
「いいえ、事実じゃないわ。だってアンタは、すべての細胞を消滅させたら死ぬんだもの」
「くっ、くはははははは!! そうだなっ、確かにそうだ! 全ての細胞を消されてしまったら死ぬな!」
「細胞は極めて小さく、何億何千億と存在しているし、もしかしたら細胞を意図的に切り離して安全圏に移動させられる術もあるのかしもれないわね。……もし。例えそうだとしても、わたしなら可能よ」
ここは扉の向こう側の世界。別にここが崩壊したって構いやしない。
創ってみたものの危険すぎて使えなかった魔法。ようやくアレが日の目を見る時が来たわね。
「ははは、そうか! ならやってみてくれ! 我に見せてくれたまえよ!!」
「言われなくてもするわよ。『空間抹消(くうかんまっしょう)』」
ダーズンを○で囲むように視線を動かし、パチンと指を鳴らす。
その、刹那だった。
「なにをのんびり眺めているのだ? 我の周りに何か飛んでいるとでもい」
視線で○を描いた部分がパッと消え去り、ダーズン――のみならず、空間を含め○の内側にあった景色すべてがなくなってしまったのだった。
「…………え? だ、だーずん、さま……? だーずん、さま……?」
「ダーズンは消滅したわよ。周りにあった空間と一緒にね」
わたしが指定した空間を消滅させる。それがこの魔法の効果。
空間の一部を消滅させると、その際に出来た『穴』に空間全てが吸い込まれて消滅してしまう――。そんな危険性があるから、転生前の世界でも一度も使用することができなかったのよね。
「う、うそだ……! ダーズン様が負けるはずがない!! 嘘だ!! ダーズン様はどこかに転移させられただけだ!!」
「わたしが嘘をつくメリットがある? それに、自分を見てみなさい。わたしの言葉に嘘がないことが、簡単に分かるわよ」
「わたくしの、からだ……? なにがあると――うわあああああああああああああああああああああああああ!?」
ゾエルの身体が、砂のように崩れ始めている。
眷族は、主と一心同体。眷族が死んでも主は死なないけれど、主が死ぬと眷族もしんでしまうのよね。
「アンタがそうなっているのは、ダーズンが完全に消滅した証拠。あっけない最期だったわね」
「そんな……ダーズン様が……。くそ! くそお!! くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「調子に乗るから痛い目を見るのよ。もしどこかでダーズンに会えたなら、教えてあげるといいわ。『謙虚に生きろ』ってね」
「ぐ……!! …………女、貴様こそ調子に乗るなよ……!! 確かにダーズン様は敗れたが、負けじゃない。この戦いは、引き分けだ……!!」
主は負けて眷族はまもなく消滅するのに、引き分け?
どういうことなのかしらね?
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