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第11話 魔王ダーズンとの戦い クリスチアーヌ視点(4)

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「……………………」「……………………」
「全然、気付きませんでした……」
「ごめんなさい。あのタイミングでお伝えしてしまったら様々な不安が生まれてしまいますし、なにより敵に悟られてしまう危険性がありましたので。伏せさせてもらっていました」

 隣で目が点になっているサミュエル様に謝罪をして、呆然となっているダーズン&ゾエルに向き直る。

「そういうワケでわたしはずっと、手のひらの上で踊らされているフリ、をしていたの。じゃあなぜ、そうし続けていたのでしょうか?」
「…………………………」「…………………………」

 ダーズンもゾエルも、答えられない。
 いつまで待っても回答がなさそうだし、正解を発表しましょうか。

「その答えは、『魔王ダーズンをこの手で消滅させたかった』からよ」

 魔王ダーズンは再誕しようとしているのではなくて、封印されている――。『黒い繭』を攻撃したら死ぬのではなく、封印が解けて自由になる――。
 そんな結論に至ったわたしは、

『この機会にダーズンのもとに行って、殺しましょう』

 という思いを抱くようになる。
 だってダーズンを生かしておいたらいつ何が起きるか分からないし、そもそも書物を偽装した存在が国内に居るかもしれないんだもの。それじゃあ、落ち着いて恋なんてできない。
 寿命が尽きるまでサミュエル様とのんびり楽しく過ごせるように、全ての邪魔者を排除することにしたのだった。

「ダーズン。アンタはこの世界を支配するために解放されたのではなくて、滅ぼさせるために解放されたのよ」
「…………………………」「…………………………」
「1000年ぶりに復活してすぐバイバイは可哀想だけれど、この世界の支配を目論まなければわたしに殺されはしなかった。なにもかも自業自得。諦めなさい」

 サミュエルと様との時間を邪魔する上に、はっきりとした『悪』。遠慮はしない。
 ダーズンと話したいことはもうなくなったし、終わりにしましょうか。

「…………………………」「…………………………」
「せっかくだから、アンタの真似をして滅してあげるわ。『神速光線(しんそくこうせん)』」

 今なお言葉を失っているダーズンに向け、右の手平を突き出す。
 さっきのあちらと同じように、手のひらの前に現れた真っ白な魔法陣。ソレが輝くと――

「え……? っ、ダーズン様!?」

 ――『魔法陣から30センチの光線が発射され、その光はダーズンの頭部を消し飛ばしてしまった』。
 という出来事が、僅か0・01秒の間に起きていたのだった。

「だ、ダーズン様!? ダーズン様っ!?」
「アンタは見えなかったでしょうし、ダーズン自身は何も感じなかったでしょうね」

 光は『光』だから光速で進む。……だったらそれ以上に進む光を打ち出せたら面白いわね……!!
 そんな経緯で生み出されたお遊び用の魔法だけれど、攻撃用にもなる魔法。ちなみに威力はダーズンが放った『滅殺闇』の10000倍以上あって、仮に反応できて対応されたとしても、結局は防げない攻撃となっている。

「ダーズン様ぁぁぁぁ!!」
「……………………………………」

 首から上がないから、何も発せない。ダーズンの身体はそのまま真後ろにバッタリ倒れて――

「! クリスチアーヌ様っ! あれを見てください!!」

 ――真っ黒の液体のようになってしまった。と思っていたら液体がモゾモゾと蠢き始め、やがてダーズンの身体が完全に再生してしまったのだった。

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