姉の婚約者を奪おうとする妹は、魅了が失敗する理由にまだ気付かない

柚木ゆず

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第9話 大喜びする妹 ソフィー視点(1)

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((ふふふふっ。ふふふふふふっ。日頃の行いが良いから、何もしなくても髪の毛が手に入っちゃったっ))

 時間を間違えたシュヴァリエ様と、40分程度お喋りをした後のコト。応接室の真ん中で、わたしは満面の笑みを浮かべていた。

 ――え? 約束を間違えた?――。
 ――だったらこの時間を使って、毛髪を採れない?――。
 ――そうだ! 応接室に暫く居たら、1本くらい落ちるでしょ――。

 そんなものを思い付いて、大正解っ。シュヴァリエ様が去られたあとにカーペットを調べてみたら、茶色の髪が――シュヴァリエ様の髪が落ちてたのよね。

((やっぱり、世界もわたしを応援してくれているんだわ。最後の一つがあっさりと手元にやってきて、必要なものは全部揃った))

 だから早速自分の部屋に戻って、魅了の儀式を実行――は、まだしない。

((だって。今すぐ行ったら、感付かれてしまう心配があるんだもの))

 前回は『実は気になっていて、ついにお姉ちゃんへの愛を上回った』にするつもりだったけど、今回はそれを使えない。だから今突然わたしを好きになると、怪しまれちゃう。
 そこで次は、魅了の『欠点』を有効活用するコトにした。

((魅了は使用者と対象者が離れていればいるほど、即効性が大きく失われてしまう。だからあえて、離れてから使用する))

 そうすればじわじわと魅了が効いていって、じわじわとわたしを好きになってゆく。つまり自然に恋をしたと映るようになって、単に心変わりをしたと思わせられるのよね。

((だから実行するのは、シュヴァリエ様が帰ってから。シュヴァリエ侯爵邸に戻られてから))

 お母様が秘薬を受け取る際に商人に相談をしていて、これがベストな距離と知っている。そこでわたしは落ちていた毛髪をハンカチで包んで保管して、7時間後の深夜1時過ぎ。シュヴァリエ様が絶対に移動していない寝静まった頃に動き出し、

「お母様」
「ええっ。始めましょう」

 コッソリと、お母様の部屋に移動。2人で直径1メートルの布を広げ、魅了に必要な魔法陣を描き始めたのでした。

 うふふふふっ。今度こそ、シュヴァリエ様はわたしのものになる……っ。

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