姉の婚約者を奪おうとする妹は、魅了が失敗する理由にまだ気付かない

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
8 / 24

第6話 追及する次女と母 ソフィー視点

しおりを挟む
「……もしかして……。ソフィーの髪の毛とシュヴァリエ様の髪の毛が、しっかりと絡み合っていなかったんじゃないかしら?」

 2人で相談を始めて、2時間くらいが経ったと思う。あれこれ悩んでいたら、俯きがちだったお母様の顔が上がった。

「魔法陣は正しく描いて、秘薬を指定量ちゃんと置いて、呪文も正しく唱えたんだもの。だとしたら問題があるのは、毛髪に関する部分。そこを重点的に考えていたら、それしかなかったのよ」
「…………うん、そうだよ……っ。わたしもそう思うっ」

 こっちもずっと振り返ってて、魔法陣とか呪文にミスはなかったんだもの。消去法でそうなるっ。

「だったら、しっかり絡ませたら成功するねっ。早くやり直そっ」
「残念だけど、それは無理よ。魔法陣も秘薬も毛髪も、処分してしまったわ」

 ぁ、そうだった。証拠は全部抹消してから、お姉ちゃんのところに行ったんだったわね。

「魔法陣は描き直せるけど、秘薬と毛髪は改めて集めないといけないわ。だから再挑戦は、最短で1週間後ね」

 母の息がかかった使用人ミントによると、シュヴァリエ様が次にいらっしゃるのは来週。あの方はもう去られていて、運悪く屋敷内に髪の毛は落ちていなかったからさっきのような手段はとれないから、次の機会に手に入れるしかない。
 秘薬はお金さえ出せば5日程度で入手できるから、プラスで2日待つのはイライラするけど……。仕方がないわね。

「こうやって、問題点が見つかったんだもの。これくらいは我慢しましょっか」
「ふふっ、ソフィーは切り替えが早くて偉いわ。じゃあもうすぐディナーの時間になることだし、食堂に向かいましょ」
「そうだね、お母様。行きましょっ」

 そうしてわたし達はスッキリして部屋を出て、家族4人でいつも通り・・・・・食事を行う。
 あの工作があるから追及されるコトはなくって、なにも問題なし。その後も今まで通りの毎日が続くようになって、トラブルもなく一週間が経った。

((……ふふ。シュヴァリエ様が、いらっしゃったわね。毛髪採取作戦、スタートよっ))

 待っている間に秘薬は無事調達できたし、今日魅了しても不自然にならないように対策も用意した。つまり、髪の毛さえ手に入れば成功は確実で――。
 毛髪の入手は比較的イージーなミッションだから、わたしは含み笑いながら動き出したのだった。

しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。 その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。 彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。 それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。 儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。 そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

言いたいことは、それだけかしら?

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【彼のもう一つの顔を知るのは、婚約者であるこの私だけ……】 ある日突然、幼馴染でもあり婚約者の彼が訪ねて来た。そして「すまない、婚約解消してもらえないか?」と告げてきた。理由を聞いて納得したものの、どうにも気持ちが収まらない。そこで、私はある行動に出ることにした。私だけが知っている、彼の本性を暴くため―― * 短編です。あっさり終わります * 他サイトでも投稿中

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。

田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。 ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。 私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。 王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

「これは私ですが、そちらは私ではありません」

イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。 その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。 「婚約破棄だ!」 と。 その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。 マリアの返事は…。 前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。

妹よ。そんなにも、おろかとは思いませんでした

絹乃
恋愛
意地の悪い妹モニカは、おとなしく優しい姉のクリスタからすべてを奪った。婚約者も、その家すらも。屋敷を追いだされて路頭に迷うクリスタを救ってくれたのは、幼いころにクリスタが憧れていた騎士のジークだった。傲慢なモニカは、姉から奪った婚約者のデニスに裏切られるとも知らずに落ちぶれていく。※11話あたりから、主人公が救われます。

処理中です...