低級令嬢の庭球物語

柚木ゆず

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第6話 決戦(3)

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「たははっ、口ほどにもねーな。急成長した運動音痴少女ってのは、想像の半分以下も実力がないんだな」

 相手がいないからこれまで満足にリターンやラリーを磨けなかった上に、昨日は他にやるべき練習があって手を付ける暇がなかった。さすがにこのレベルの相手には、茜の知識と経験だけで戦うのは厳しいわね。

「このまま一方的に倒すのは可哀想だが、生憎オレは徹底的が好きな男だ。この調子で容赦なく叩きつぶすぜぇっ!!」
「ユート、そうはさせないわっ。はあっ!」

 サーブが来る範囲は、サービスボックス内だけ――ある程度決まっているので、どんなに強烈でもリターンはできる。
 けれど、ヒューナの身体ではそこから得点に繋げられない。

《ユート・スピン VS ヒューナ・フラット 40‐0 (0‐0)》

 ラリーを5回続けられたものの、打ったスライスがベースラインを超えてしまいアウトとなった。
 相手の強打をしっかり返すには、全身の筋肉が足りない。茜のイメージ通りに球を打ち返せないし回転をかけられないしで、上手くコントロールできない。

「……。これだとロブさんみたいなシコラーに徹して、相手のミスを待つこともできないわね……」
「今日のヒューナは、独り言が多いな。よそ見してる暇なんてねーぞっっ!?」

 この試合4回目のサーブが来て、またしてもラリーが始まる。
 トップスピンで返すとトップスピンが返って来て、フラットで返すとフラットが返ってきて、ボールが互いのコートで飛び交う。
 しかしさっき言ったように、ヒューナは筋肉不足――力が不足している。なので次第にパワーで押されだし、またしても呆気なく失点した。

《ユート・スピン VS ヒューナ・フラット 1‐0》

 初回に比べて多少打ち合える時間が長くなったものの、結局4連続失点。ストレートでゲームをキープされてしまった。
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