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エピローグ 返って来た者達のその後 俯瞰視点
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「……寒い……。暗い……」
「嫌だ……。誰か……。誰か……助けてくれ……」
ラクライス家当主とその娘が追放されてから、1か月後の深夜。元当主ルイとその娘シビーユは、とある橋の下で肩を寄せ合い震えていました。
――一文無しで身分の証明もできない。その上、騒ぎを恐れて素顔は出せない――。
そんな状況で雇ってくれる場所があるはずもなく、あの日捨てられてしまってからずっとこの調子。
飲食店の裏にあるゴミ箱などを漁って残飯を食べ、夜になると新たな『家』に戻って眠る。
といった生活を送っていたのです。
「……寒い……。暗い……」
「……さ、寒い……。寒い……」
上には橋があるものの左右には何もありませんし、外であるため灯りもありません。そのため2人は暗闇の中で夜風を受け続けることになり、毎晩寒さと暗さと戦っていたのです。
「…………あの頃に、戻りたい……」
「…………屋敷に、戻りたい……」
綺麗な服を着て美味しいものを食べていた、あの時に戻りたい。今夜も2人はそう願いますが、時間が巻き戻ってくれるはずがありません。
いつまでも、このまま。
ジャゾンに目をつけ離縁を命じたことにより、そんな娘を後押ししたことにより、シビーユとルイは一生涯――
エクトルと出会わなかったシルヴィの人生を、経験し続けることになるのでした。
○○
「……明日も、見つかりませんように……!!」
同時刻。ジャゾンはとある街の橋の下で、天に祈りを捧げていました。
――相手の油断により逃げ切れたものの、今頃血眼になって探している――。
エクトルの狙い通りジャゾンはそう感じるようになり、エクトルの影に怯えていたのです。隣にいる、父と母と共に。
『『ジャゾン……!?』』
『父さん……!? 母さん……!?』
親子の絆、なのでしょうか。逃走を始めてから1週間後、偶然3人は出会っていたのです。
『『お前のせいで大変なことになったじゃないか……!!』』
『それはこっちの台詞だ!! お前達が助けてくれたら……!!』
お互い罪を擦り付け合い、掴み合いの喧嘩をしました。ですが喧嘩をしてももうどうにもなりませんし、1人よりも3人の方が良い。そんな理由で親子は行動を共にし始める、のですが――。
父と母はジャゾンの自白によって、追放されてしまっています。そのため大したプラスにはならず、状況は殆ど変わっていないのです。
「どうか、お願いします……!」
「どうか、お願いします……!」
「どうか、お願いします……!」
そのため、いつまでもこの調子。
今日も明日もその先も、ずっと。死ぬことは怖く自害をできないため、その寿命が尽きるまでずっと、3人は激しく怯え続けることになったのでした――。
「嫌だ……。誰か……。誰か……助けてくれ……」
ラクライス家当主とその娘が追放されてから、1か月後の深夜。元当主ルイとその娘シビーユは、とある橋の下で肩を寄せ合い震えていました。
――一文無しで身分の証明もできない。その上、騒ぎを恐れて素顔は出せない――。
そんな状況で雇ってくれる場所があるはずもなく、あの日捨てられてしまってからずっとこの調子。
飲食店の裏にあるゴミ箱などを漁って残飯を食べ、夜になると新たな『家』に戻って眠る。
といった生活を送っていたのです。
「……寒い……。暗い……」
「……さ、寒い……。寒い……」
上には橋があるものの左右には何もありませんし、外であるため灯りもありません。そのため2人は暗闇の中で夜風を受け続けることになり、毎晩寒さと暗さと戦っていたのです。
「…………あの頃に、戻りたい……」
「…………屋敷に、戻りたい……」
綺麗な服を着て美味しいものを食べていた、あの時に戻りたい。今夜も2人はそう願いますが、時間が巻き戻ってくれるはずがありません。
いつまでも、このまま。
ジャゾンに目をつけ離縁を命じたことにより、そんな娘を後押ししたことにより、シビーユとルイは一生涯――
エクトルと出会わなかったシルヴィの人生を、経験し続けることになるのでした。
○○
「……明日も、見つかりませんように……!!」
同時刻。ジャゾンはとある街の橋の下で、天に祈りを捧げていました。
――相手の油断により逃げ切れたものの、今頃血眼になって探している――。
エクトルの狙い通りジャゾンはそう感じるようになり、エクトルの影に怯えていたのです。隣にいる、父と母と共に。
『『ジャゾン……!?』』
『父さん……!? 母さん……!?』
親子の絆、なのでしょうか。逃走を始めてから1週間後、偶然3人は出会っていたのです。
『『お前のせいで大変なことになったじゃないか……!!』』
『それはこっちの台詞だ!! お前達が助けてくれたら……!!』
お互い罪を擦り付け合い、掴み合いの喧嘩をしました。ですが喧嘩をしてももうどうにもなりませんし、1人よりも3人の方が良い。そんな理由で親子は行動を共にし始める、のですが――。
父と母はジャゾンの自白によって、追放されてしまっています。そのため大したプラスにはならず、状況は殆ど変わっていないのです。
「どうか、お願いします……!」
「どうか、お願いします……!」
「どうか、お願いします……!」
そのため、いつまでもこの調子。
今日も明日もその先も、ずっと。死ぬことは怖く自害をできないため、その寿命が尽きるまでずっと、3人は激しく怯え続けることになったのでした――。
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