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第10話 今日は返って来る日 ~シビーユ達の場合~ 俯瞰視点(1)

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「まだ見つからないの!? なにをやっているのよこの無能ども!!」

 ラクライス侯爵邸には、シビーユの怒声が響き渡っていました。
 逃走から3日・・も経っているのに、まだジャゾンが見つからない。気が気でない状態が続いているため、シビーユは激しく苛立っていたのです。

「みすみす屋敷から逃がしてしまった上に、これだけ時間を与えても見つけられないだなんてっ! この役立たず!!」
「「「「「申し訳ございません……」」」」」
「これ以上我慢できないわ!! 今日中に見つけられなかったら全員クビよ! いいわねっ!? それが嫌なら血眼になって探しなさい!!」
「「「「「はっ、はい! 承知いたしました!!」」」」」

 一旦集合をかけられていた『駒』達は青ざめながら背筋を伸ばし、すぐさま屋敷を飛び出しました。

「……行ったか」
「ええ、お父様。でもアイツたちだけでは足りない気がします。増員をお願いしますわ」
「すでに手配を行っている。あと1時間もすれば50人の増員が叶う」
「さすがですわ。プラス50で、合計115。こんなに居れば、今度こそ見つかりますわね」

 相手は移動手段が『足』しかなく、おまけに誰も頼れない。ジャゾンの置かれる状況はますます厳しくなり、ようやくシビーユの表情が少し和らぎました。

「足で移動できる範囲はたかが知れている。時間の問題だろうな」
「ですわね。やっと安心して過ごせることになりそうですわ」
「わたしもだよ。……そうそう。茶とお菓子の用意をさせているんだ。共に一息つこうじゃないか」
「はいお父様。そうしましょう」

 シビーユも父ルイも、ジャゾンが逃亡してから1度もティータイムを行っていませんでした。
 まだ捕まっていないものの、捕まえられる確率は100パーセントと言っても過言ではない。そんな理由で2人は3日振りにテーブルにつき、アールグレイとシフォンケーキを楽しみ――久々にリラックスをしてから、およそ5時間後のことでした。

「あら!」

 外で馬車が停まる音が聞こえ、まもなくものすごい勢いで玄関部の扉が開け放たれました。

「この五月蝿さは、大急ぎで知らせないといけないものを持っている証。ジャゾンが見つかったようね」

 シビーユは口角を吊り上げ玄関部を目指し始めますが、それは大ハズレ。確かに『大急ぎで知らせないといけないもの』ではあるのですが、その内容は大きく違っていて――


「……5年前の件と殺害の件が、広まっている……!?」


 ――シビーユを喜ばせることではなく、激しく動揺させることが伝えられたのでした。


 
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