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幕間 真式正義

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「……困りました。予想より数が多いですね」

 西側にある、門。職員用出入口に陣取っていた真式正義は、二十を超える軍勢を前にしていた。

「僕と橋月さんは、肉弾戦になる。そのため『応援』をしてはいますが、この数だとどちらも厳しいですね……」
「そう、お前達は圧倒的に不利だ。無駄な抵抗はやめないか?」

 鍛えられた腹筋を使った、野太くよく通る声。援軍西側のリーダーと思しき大男が、切り傷が目立つ顔の中にある口を動かした。

「我々は全員、暴力を振るいに来たのではないんだ。素直に通してはくれないか?」
「すみませんが、それは出来ない相談です。これ以上、『僕』と『祖父』を増やすわけにはいきませんからね」

 もし彼女が討たれてしまったら、彼は絶対に後悔する。もし彼女が討たれてしまったら、彼女は絶対に悔いを残して逝ってしまう。
 そんな経験は、自分達だけで充分だ。あんな体験はさせたくないし、見たくない。

「……真式、正義だったな。真式、お前はこの人数に勝てると思っているのか?」
「いいえ。どうやっても、勝てはしません」

 相手は自分以上に戦闘技術を学び、実戦で磨いてきた者達だ。援護スキルしか持たない自分が、勝る道理がない。

「? では、どうするつもりだ……?」
「簡単、ですよ。解決するまで、守りきるだけです」

 救えたという連絡が入るまで、後ろの門を通さないようにする。これから実行するのは、防戦だ。

「おいおい、正気か? この数を相手に、守りきれると思っているのか?」
「『思う思わない』『できるできない』ではなく、やるんです。やらなければいけないから、やるんですよ」

 その言の葉を紡ぎ終えると同時、だった。男達は目の前の少年から、決意――否。そのような表現の枠に収まらない程の、凄まじい意志を感じた。

「「「「「こ、こいつは……っ」」」」」
「……正しいことをしていた――。真っ当な生き方をした人が、損をするなんて有り得ない。ここを乗り切って、証明してみせますよ」

 正義は改めて、自身を応援。効果が付与される時間を引き伸ばし、1年間鍛えた二つの拳を構えたのだった――。
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