73 / 94
幕間 真式正義
しおりを挟む
「……困りました。予想より数が多いですね」
西側にある、門。職員用出入口に陣取っていた真式正義は、二十を超える軍勢を前にしていた。
「僕と橋月さんは、肉弾戦になる。そのため『応援』をしてはいますが、この数だとどちらも厳しいですね……」
「そう、お前達は圧倒的に不利だ。無駄な抵抗はやめないか?」
鍛えられた腹筋を使った、野太くよく通る声。援軍西側のリーダーと思しき大男が、切り傷が目立つ顔の中にある口を動かした。
「我々は全員、暴力を振るいに来たのではないんだ。素直に通してはくれないか?」
「すみませんが、それは出来ない相談です。これ以上、『僕』と『祖父』を増やすわけにはいきませんからね」
もし彼女が討たれてしまったら、彼は絶対に後悔する。もし彼女が討たれてしまったら、彼女は絶対に悔いを残して逝ってしまう。
そんな経験は、自分達だけで充分だ。あんな体験はさせたくないし、見たくない。
「……真式、正義だったな。真式、お前はこの人数に勝てると思っているのか?」
「いいえ。どうやっても、勝てはしません」
相手は自分以上に戦闘技術を学び、実戦で磨いてきた者達だ。援護スキルしか持たない自分が、勝る道理がない。
「? では、どうするつもりだ……?」
「簡単、ですよ。解決するまで、守りきるだけです」
救えたという連絡が入るまで、後ろの門を通さないようにする。これから実行するのは、防戦だ。
「おいおい、正気か? この数を相手に、守りきれると思っているのか?」
「『思う思わない』『できるできない』ではなく、やるんです。やらなければいけないから、やるんですよ」
その言の葉を紡ぎ終えると同時、だった。男達は目の前の少年から、決意――否。そのような表現の枠に収まらない程の、凄まじい意志を感じた。
「「「「「こ、こいつは……っ」」」」」
「……正しいことをしていた――。真っ当な生き方をした人が、損をするなんて有り得ない。ここを乗り切って、証明してみせますよ」
正義は改めて、自身を応援。効果が付与される時間を引き伸ばし、1年間鍛えた二つの拳を構えたのだった――。
西側にある、門。職員用出入口に陣取っていた真式正義は、二十を超える軍勢を前にしていた。
「僕と橋月さんは、肉弾戦になる。そのため『応援』をしてはいますが、この数だとどちらも厳しいですね……」
「そう、お前達は圧倒的に不利だ。無駄な抵抗はやめないか?」
鍛えられた腹筋を使った、野太くよく通る声。援軍西側のリーダーと思しき大男が、切り傷が目立つ顔の中にある口を動かした。
「我々は全員、暴力を振るいに来たのではないんだ。素直に通してはくれないか?」
「すみませんが、それは出来ない相談です。これ以上、『僕』と『祖父』を増やすわけにはいきませんからね」
もし彼女が討たれてしまったら、彼は絶対に後悔する。もし彼女が討たれてしまったら、彼女は絶対に悔いを残して逝ってしまう。
そんな経験は、自分達だけで充分だ。あんな体験はさせたくないし、見たくない。
「……真式、正義だったな。真式、お前はこの人数に勝てると思っているのか?」
「いいえ。どうやっても、勝てはしません」
相手は自分以上に戦闘技術を学び、実戦で磨いてきた者達だ。援護スキルしか持たない自分が、勝る道理がない。
「? では、どうするつもりだ……?」
「簡単、ですよ。解決するまで、守りきるだけです」
救えたという連絡が入るまで、後ろの門を通さないようにする。これから実行するのは、防戦だ。
「おいおい、正気か? この数を相手に、守りきれると思っているのか?」
「『思う思わない』『できるできない』ではなく、やるんです。やらなければいけないから、やるんですよ」
その言の葉を紡ぎ終えると同時、だった。男達は目の前の少年から、決意――否。そのような表現の枠に収まらない程の、凄まじい意志を感じた。
「「「「「こ、こいつは……っ」」」」」
「……正しいことをしていた――。真っ当な生き方をした人が、損をするなんて有り得ない。ここを乗り切って、証明してみせますよ」
正義は改めて、自身を応援。効果が付与される時間を引き伸ばし、1年間鍛えた二つの拳を構えたのだった――。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
妹しか守りたくないと言う婚約者ですが…そんなに私が嫌いなら、もう婚約破棄しましょう。
coco
恋愛
妹しか守らないと宣言した婚約者。
理由は、私が妹を虐める悪女だからだそうだ。
そんなに私が嫌いなら…もう、婚約破棄しましょう─。
辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
だから僕は男の娘じゃないっ!
飛永英斗
キャラ文芸
流れ星高校生に通う、葉島カキナ。見た目や行動が女子っぽいから、皆から男の娘扱いされる。
そんなカキナの周りには、少し普通じゃない人達ばかり。女子力を上げる為なら何でもする、土呂辺いちご。常にチェーンソーを持っている名家の娘、法桑びわ。
学校の治安を守る為に活動する、ロリっ子校長も承認しているヤンキー集団、秋葉オデン、青森サバキ、札幌タラバ、その他諸々の「缶詰隊」。
そして、闇の力を駆使する謎の転校生、魚唄メロ。カキナもその闇の力を持っていて……。
頭を空にして読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる