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4話(4)

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「……………………………………………………………」
「「???」」

 傾聴する姿勢を取っていた俺と真式先輩は、横目で視線を交錯させる。
 おかしいな。夢兎先輩は1分近く黙ったままで、一向に怪談? が始まらない。

「……………………………………………………………」
「「???」」
「……………………………………………………………」
「あ、あの橋月さん? お話はどうなったのですか?」

 たまらず、先輩が首を傾ける。
 始めると口にしてから、かれこれ3分は経った。何が起きているんだ?

「は、橋月さん。お話は……?」
「………………終わった。もう、終わったわよ」

 先の幽霊ポーズのまま。おどろおどろしい声で、彼女はそう告げた。

「「はっ? ええっ?」」
「怪談をしている時は……。霊が、寄ってくるものなのです……」
「「は、はあ」」
「貴方達は、まさにそう。話に引き寄せられた彼らに憑りつかれ………………その時の記憶を奪われたんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――ぁっ、このネタを優陽クンにするのは失礼だったわっ。ごめんなさい今のは忘れて頂戴っ」

 中盤で矢庭に大声を出し、終盤では頭上で手を合わせて謝罪をした夢兎先輩。
 その設定は無理があるし、まさかのセレクトミスとの告白。やはり先輩は……いや。橋月家の人達は、怖い話に対して独特のモノをお持ちのようだ。

「ホントのホントに、ごめんなさい。ワザとじゃないの」
「ええ、承知してますよ。お気遣いなく」
「もう一度ごめんなさいで、ありがとう。こんなミスがあった後に、同じ系統を続けるのはよくないから……。ショック療法はこの辺にして、幸福を呼び込めるようにしてみましょうか」

 彼女は頭をコツンと叩き、怪談のようなお話はお仕舞い。こちらに向けていた顔を、陽が差し込む窓へと動かした。

「朝陽を拝めば最高の一日を過ごせる、ってのがグランマの口癖だったの。記憶回復と任務大成功を祈って、朝陽浴をしましょ」
「それはいいですね。僕も、朝の光を浴びるのは好きなんですよ」
「俺も朝、花を眺めつつ浴びるのが好きっス。心身がスゥッとして、気持ちがいいですよね」
「そうそう、そうなのよねっ。じゃあ決まりで、育美クンを起こしましょうか」

 先輩はパチンと左の指を鳴らし、ただ一つ現在進行形で使用されているベッドに歩み寄った。

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