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3話(16)

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「こ、これは……」

 ダメ、だ。あの位置で降下を始めたら、英虎くんには当たらない。
 う、うそだろ……。先輩の、俺達の想いは届かないのか……?
 あの姉弟は、悲劇の別れをしなくてはならないのか――

「えっ!?」

 ――突如、だった。
 下降していたスコップは空中でホップして大きく跳ね上がり、宙でもう一度弧を形成する。そうして二度目の空中移動を始めたソレは、やがて二度目の降下へと入り………………英虎くんの後頭部に当たった。

「ぁ? ひぁ、ぃ…………?」

 硬い物質による、高い位置からの攻撃。そんな強烈な一撃を受けた彼はよろけ、糸が切れた操り人形のように転倒する。
 そうして俺は――その隙に追撃して負を打ち消し、彼はあっさりと意識を失った。

「これであとは、目覚めるのを待てばいいんだが……。今のはなんだ……?」

 突然スコップが跳ね上がり、足らなかった距離を埋めた。あの異様な挙動は一体……。

「いたたたたた。どうやら、成功したみたいですね」

 当惑していたら、先輩が汚れた服の前部を叩きながら近づいてきた。
 さっきの投擲は、全てを乗せたソレだったからな。バランスを崩してしまい、投げてすぐ転んでいたようだ。

「実を言うと、五十メートルオーバーの遠投は初めてだったんですよ。上手くいってよかったです」
「はい、そうっスね。……ところで真式先輩は、奇跡って信じます?」
「奇跡? あったら素敵だとは思いますが、急にどうしたんですか?」
「……いえ、なんでもないっス。ちょっとだけ、有り得ないことを思ったんですよ」

 消滅は文字通り滅して消す行為であり、滅殺された霊は魂すらなくなる。だから力を送るなんて芸当は不可能だし、そもそもあの世からこの世に力を送ること自体不可能だ。
 でもあの変化は、先輩のお爺さんがやってくれたのかもしれない――。そう、考えてしまった。

「…………まあ、何はともあれ鎮静化は完了です。あとは第二段階っスね」
「ええ。ハッピーエンドなれるよう、ここからもうひと頑張りしましょう」

 俺達は完了を祝してハイタッチを交わし、第一段階はお仕舞い。最も大事な第二段階を行うべく、仲間の到着と英虎くんの目覚めを待つことにした。
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