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3話(8)

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「その結果祖父は葛藤を続けて、暴霊寸前まで進行してしまう。迷霊師に頼めば迷霊になった直後の状態には戻せますが、この場合はソレを繰り返すしかなく…………大好きだった人が何度も苦しむのは辛くて嫌で……。僕が滅霊師に依頼をして、滅してもらいました」
「ぁ……。あたしと、同じ……」
「そうですね。ここにいる僕は、未来の貴方です」

 そう発した顔に、先の台詞にも、『これでよかった』という感情は毫末もない。そこにあるのは、後悔だけだ。

「僕は確かに、祖父を苦しみから解放することはできました。でもその時から、思うようになったんですよ」
「な、なにを? アンタは、なにを思うようになったの……?」
「祖父の、心は救えなかったじゃないか。そう、思うようになったんですよ」

 こころ、か。なるほどね……。

「消滅では、心にある怨みは取り除けない。すっきり人生を終われた、と自覚できない。だから――消滅する瞬間は、とても心残りだったのではないか? 理性は殆どなく喋れてもいなかったけど、心の中では助けを求めていたのではないか? そんな疑問が浮かび上がってきて、あの日以来必ず一度は夜中に跳び起きるようになりました」

 先輩は微苦笑を浮かべ、ここで腰を上げて。夢兎さんの前にゆく。

「貴方は、こんなにも弟さんを愛しているんです。僕が言わなくてもこれに気付き、やがて酷く後悔してしまう」
「………………」
「でも貴方は、まだ終わっていない。僕とは違う道を進めるんです。だから橋月さん、想って諦めるのはやめましょう。必ず、僕達が英虎さんと貴方を救いますから」

 両肩を掴んで、優しく熱意を込めて訴える。
 今は言葉と表情でしか、この人の心を動かせないから。その二つで、しっかりと気持ちを伝えた。

「あの、ジブンもそのね、ある迷霊を知っててね、その子は救われてよかったと心から思ってると思うの。それは絶対にいいことだし全力でお手伝いするから、やろ?」
「何があっても俺達は、自分の問題のように打ち込みます。改めて、自分達に依頼してくれませんか?」

 育美と俺も夢兎さんの真ん前に動き、高さを合わせて瞳を直視する。
 この言葉に、偽りはない。もしやれるのなら、全身全霊を賭けて取り組む所存だ。

「そんな別れは、悲しいですよ。僕らにやらせてもらえませんか?」
「夢兎、この方々はとっても良い人達よ。諦めないでお願いしてみたら?」
「……………………………………そう、ね。お願い、します。大事な虎クンを、救ってあげてください……っ」

 夢兎さんはみたび、しかし三度目は性質の違う涙を流す。
 これは再び前を向く、前向きな落涙だ。この感情を裏切るなんて、できるわけがないよね。

「はい、約束します。未来の僕にはさせませんよ」
「ジブンも頑張りますっ。それじゃーそれじゃーっ、すぐに始めないとだね」
「白目がほぼないなら、時間がないな。夢兎さん、喧嘩の経緯を教えてください」

 まずは、相手の心境の把握だ。このケースは不可思議な点があるので、しっかりチェックしておかなければならない。
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