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2話(9)

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「遠田さん、それってなんなのかな、です。ジブンたちに教えて欲しいな」
「あれは………………一ヶ月前、じゃったか。同窓会で三十年ぶりに会った奴が、『趣味でやっていて、こないだコンテストで入選したんだ』と誇らしげに写真を見せてきてな。感想を告げたら、そのまま帰ってしまったんじゃ」

 趣味で写真。それを、評価した。

「その、感想なのですが。貴方は覚えていらっしゃいますか?」
「うろ覚えじゃが……。こんなのが入選? 金でも積んだのか? こんな風なことを言ったような気がするのぉ」

 非難。とどめに賄賂を疑う、か。

「……ねえ、遠田さん。その方は今、どうされてるんスか?」
「羽蔵(はねくら)――あいつは、病気持ちだったそうでな。先週死んだそうじゃ」

 直近に、死亡。これは、そうだな。

「花島くん土水さん、間違いありませんね。迷霊は、その羽蔵さんです」
「ん。そ、だね、です」
「ソレで決まりっスね。今のが原因で、アナタは恨まれてるんスよ」

 俺は、否、俺達は。遠田さんを見据える。

「聞くところによると迷霊は、生前一番怨んだ者のところにくるんじゃろ? その程度で一番になったというのか?」
「その程度。その程度っスか……」
「そうじゃろう。違うのか?」

 そうなのか、そうじゃないのか。それは、体験してみたら瞭然だ。

「…………ところで、遠田さん。そちらの壁にかけている絵って、お孫さんの作品っスか?」
「うむ、儂の似顔絵じゃ。あの子が初めて描いた絵があれで、一番の宝物だ」
「ふーん。あんな下手糞なのが、宝物なのかよ」

 俺は、鼻で笑う。

「肌色のクレヨンでぐしゃぐしゃやって、黒をトンと載せただけじゃないか。ありゃ、似顔絵なんて大層なもんじゃない。ただの落書きだ落書き」
「なっ……。なっっ……っ」
「あんなのを入れられたら、額縁が可哀想だ。全然自分に見合ってないよって、額縁さんは泣いてるぞ――」
「ふざけるな!! もう一遍言ってみろ!!」

 まずはテーブルを跳ね除け、続いて俺の胸倉を掴む。仕上げに血走った眼をギロつかせ、くっきりと青筋を立てた。

「下手糞っっ!? 儂の孫を侮辱する気かっ!! つっ、つつつっ、つ次にほざいたらただじゃおかない――」
「ほら、こういうことだ。ちょっと悪口を並べただけで、呂律がおかしくなるくらい怒ってるじゃないかよ」

 今度は本気で鼻で笑い、ジジイの胸倉を掴み返す。
 この場合、年齢なんて関係ない。思ったままに行動させてもらう。
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