上 下
35 / 37

番外編 父を襲う悲劇 俯瞰視点(4)

しおりを挟む
「…………む? ケーキのような甘い香りと、コーヒー豆のようなビターな香り、だな……。害のあるものには、感じないが――ぁ、え……? 意識が、ぼやけて……。きた……?」

 パスカルは確認するため、『2往復』嗅いでしまいました。そのため意図せずフィリップと同じ状況となってしまい、催眠状態となってしまったのです。

「な、なんだ、これは……? も、もし、や……っ。シンナーのたぐいか……!?」

 気化して有害なものが発生したのか!? 大変だ!! そう感じた彼はふらつきを堪えて部屋を縦断し、窓を開け放ちました。

「すー、はーっ! すー、はーっ! すーっ、はーっ! すー、はーっ!」

 だっ、大丈夫っ! 悪影響はないっ!! 新鮮な空気をたっぷり吸えば問題は一切ない!!
 必死に自分に言い聞かせながら深呼吸を繰り返し、

「すー、はーっ! すー、はーっ! すーっ、はーっ! すー、はーっ! すー――……………………」

 そうしていたパスカルの動きが、不意に止まります。

「………………………………」

 まるで石像の如く固まり、一点を見つめるパスカル。そんな視線の先にいるのは、一羽のカラス。彼は空を飛んでいた鳥を、食い入るように見つめていたのです。


 〇〇


 ~とある書物の1ページ~

《導入編》

 以上の素材を配合して完成した、液体AとB。それらをAからBの順に嗅がせることによって、催眠状態が始まります。

《実行編》

 嗅いだことにより対象は、生まれたばかりの雛のような状態となっています。かの有名な習性、『刷り込み』に近い状態となっています。
 現在対象は『最初に見た生き物を溺愛する』ようになっておりますので、溺愛させたい存在を視界に入れてください。

《使用時の注意点》

 使用の際はくれぐれも、周囲にお気を付けください。万が一虫や鳥を真っ先に見てしまったら、大変なことになってしまいます。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。 結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに 「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

結婚の約束を信じて待っていたのに、帰ってきた幼馴染は私ではなく義妹を選びました。

田太 優
恋愛
将来を約束した幼馴染と離れ離れになったけど、私はずっと信じていた。 やがて幼馴染が帰ってきて、信じられない姿を見た。 幼馴染に抱きつく義妹。 幼馴染は私ではなく義妹と結婚すると告げた。 信じて待っていた私は裏切られた。

お飾りの正妃

hana
恋愛
ウラノス王子の正妃となって一か月。 彼はララという男爵令嬢を側妃に選んだ。 王子の関心は次第にララへと移るようになり、私はお飾りの正妃となっていく。

【完結】私よりも妹が大事なんですか?~捨てる親あれば拾う王子あり~

如月ぐるぐる
恋愛
「お姉ちゃんのお洋服かわいいね、私の方が似合うと思うの」 昔から妹はこうだった。 両親も私より妹の方が可愛いみたいだし、いい加減イジメにも飽き飽きしたわ! 学園を卒業したら婚約者と結婚して、さっさと家を出てやるんだから! 「え? 婚約……破棄ですか?」 「すまない、僕は君の妹と結婚する事にしたんだ」

結婚六年目、愛されていません

杉本凪咲
恋愛
結婚して六年。 夢に見た幸せな暮らしはそこにはなかった。 夫は私を愛さないと宣言して、別の女性に想いがあることを告げた。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来ませんでした。平民女性と駆け落ちしたですって!?

田太 優
恋愛
待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来なかった。 そして知らされた衝撃の事実。 婚約者は駆け落ちしたのだ。 最初から意中の相手がいたから私は大切にされなかったのだろう。 その理由が判明して納得できた。 駆け落ちされたのだから婚約破棄して慰謝料を請求しないと。

処理中です...